頻尿・尿もれの改善に泌尿器科の専門医が教えるセルフケア 「骨盤底筋トレーニング」が続かない2つの理由
頻尿や尿もれの対策としておなじみの「骨盤底筋トレーニング」。しかし、「効果を出すための肝心なことができていないことが多い」と話すのは、『頻尿・尿もれ 自力でできるリセット法』(アスコム)の著者で泌尿器科の専門医・高橋悟さんだ。そこで、セルフトレーニングの重要性と「骨盤底筋トレーニング」をやる際のポイントについて教えてもらった。
教えてくれた人
日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野主任教授・高橋悟さん
たかはし さとる。1985年、 群馬大学医学部卒業。 米国メイヨークリニック・フェロー、 東京大学医学部泌尿器科助教授、 日本大学医学部附属板橋病院病院長などを経て現職。2003年、 天皇陛下(現上皇陛下) が入院された際の担当医師団を務める。 日本排尿機能学会理事長、 日本老年泌尿器科学会理事長などの要職を務める一方、テレビ出演などを通して、 尿トラブルの啓蒙に力を入れている。
「骨盤底筋トレーニング」のやり方と最大のポイント
「骨盤底筋トレーニング」は以下のような、頻尿や尿もれの人に効果的な方法だ。
・我慢できない尿意が急に起こる人
・トイレが近い人
・お腹に力が入るともれる人
・前立腺の手術を受けた後に、もれるようになった男性
・排尿の後で「ジワッ」となる男性
・出産後、尿がもれるようになった女性
尿トラブルの本を読めば必ず載っていて、泌尿器科にかかれば指導されるような定番のトレーニングだが、高橋さんもこのトレーニングをすすめている。一方で、「骨盤底筋トレーニング」における2つのハードルを指摘する。
【1】やり方があっているかわかりにくい
まず「やり方が合っているのかわかりにくく、続ける意欲が低下しがちだから」という理由だ。
「『膣、肛門、尿道を締めて、引き上げます。これをくり返します』と、骨盤底筋トレーニングのやり方は、概ねこのような感じで書かれています。でも、筋トレやストレッチのやり方と違って、お手本となるような動きが目に見えませんよね。だから、自分のやり方が合っているのか、ほかの人と同じようにできているのかわかりません」(高橋さん・以下同)
特に男性は“引き上げる”という感覚がわかりにくいものだと、高橋さんはいいます。
「『ちゃんとできている』感じがしないと、続ける気持ちになりにくいものです。続けなければ当然効果も出ません」
【2】回数が足りていない
「『やり方』に固執するあまり、『回数』に注目する人が少ないのですが、実際には回数をこなすことで、セルフケアの効果が出るということは研究でわかっています」
回数の重要性はあまり知られていないが、1日最低45回、できれば100回を目標にするように、と高橋さんは話す。やり方があっているかにこだわるよりも、まず回数を目標にするほうが近道だからだ。
1日にそんなにできるのか、大変そうだと気が引けた人もいるだろうが、1度に45回やる必要はないという。
・朝起きたら、布団の中で5回
・朝ごはんを食べ終わったら5回
・病院の待合室で10回
・電車の中で10回
・レジに並びながら5回
・夕食の準備をしながら10回
というように、生活パターンの中に組み込むことができると続けやすい。1回10秒で、10回やっても2分かからないため、まず45回ならば、すきま時間の積み重ねで苦労せずにクリアすることができるだろう。
「そして、もう1つ知ってほしいのは、やる『期間』も大切だということです。調査結果によれば、最低でも2か月、平均で3か月必要です」
「骨盤底筋トレーニング」のやり方
「骨盤底筋トレーニング」は、自分の意思で動かすことができる「随意筋」である骨盤底筋を鍛えるもので、立っていても、座っていてもどんな姿勢でも行うことができる。そこで、日常生活に取り入れやすい、座った姿勢で行うやり方を紹介する。
イスに座って行う骨盤底筋トレーニング
《準備》
・太ももと背中が直角になるように、 イスに深く腰かける。 (イスの背にはもたれない)
・ 背すじは伸ばして、 顔は正面に向ける。
・ リラックスする。
【1】おならを我慢するように、お尻に力を入れて肛門を締める。
【2】 そのまま、女性は膣と尿道を、男性は陰茎の付け根をギュッと締める。
【3】そのまま、おへそのほうに引き上げるイメージで、10秒間保ちます。
呼吸を止めると余計な部分に力が入りすぎるため、自然な呼吸を続けるのがポイント。お腹、足、腰に力を入れたり、いきんだりしないように気をつけること。
ほかの姿勢でおこなうときも、【1】〜【3】のやり方は同様。高橋さんによると、あお向けで行うと感覚をつかみやすいという。余計な力が入って、肩や腰が床から浮いたり、お腹をのぞき込むような姿勢になったりしないように注意して実践してみよう。