猫が母になつきません 第447話「かたい」
隣の大家さんちとはヒイラギモクセイという木の生垣で仕切られています。とげのある固い葉っぱで触ると痛い。みっちり繁ってはいるものの、根っこの方はところどころ隙間もあって、大家さんは植木鉢で隙間を塞いでいました。でも正直気休め程度の防止でしかない。私も風で折れた木の枝を横に渡してできるだけ隙間を塞いでいましたが、その気になれば入れるだろうなと思っていました。
侵入してきた大家さんちのわんちゃんは私とさびに見られていることに気がついても平気で、堂々と庭の真ん中でおしっこを…。隣から大家さん(ご主人のほう)が呼んでも無視。私が庭に出ようと裏口を開けるとすぐそこにいました。実家では子供の頃から犬を飼っていたのでこちらが犬慣れしているせいか、向こうも警戒心全くなし。すぐに抱っこして大家さんちに連行しました。渡すときにご主人が「もう、味をしめてしまって…」とおっしゃったので初めてではないらしい。
うちが空き家だったときには生垣のまわりに枯葉がたまっていたので侵入は困難だっただろうし、庭中に背の高い雑草がたくさん生えていて見通しが悪かったので隣に行こうという気にもならなかったと思いますが、今は開けているので「ちょっと行ってみたい」という好奇心を抑えられなかったのでしょう。木が家の境界だなんて知ったこっちゃない。犬「え?ここもうちの庭でしょ?(おしっこ)」私「そうです(汗)」。とはいえこれでは大家さんが大変だと思い、すぐに100円均一ショップで園芸用の小さな柵を買ってきて侵入できそうな隙間に設置しました。
「猫は液体」と言われるくらい体が柔らかい。それに慣れてしまったせいか、ひさびさに抱っこした犬は固かった。みっちりしていて固い。そうかー、犬ってこんな感じだったか。子どものとき初めて飼った犬、父が保健所から引き取ってきた子犬は父の手のひらの上できらきら光っているように見えたものです。高校生になるまで一緒に過ごしました。束の間犬を抱っこしたことで昔の記憶がさまざま蘇りました。すこし心がちくっとしました。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。
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