《米の価格》18週ぶり値下げ「たった19円」高騰続く米問題をFPが考察「放出された備蓄米31万トン、ご飯茶碗何杯分か」
米の価格高騰は、年金暮らしのシニア世帯にとって家計を圧迫する深刻な事態だ。すでに3回目となる備蓄米の入札が行われ、今週は米の販売価格は18週ぶりの値下げに転じるも、依然として5kg4000円台の高値が続く。ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんが、米高騰の背景や備蓄米にまつわる現状を考察。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
米の価格「先週より19円値下がるも昨年比2倍」
米(5kg)のスーパーでの販売価格は17週連続で高値を更新していましたが、農林水産省の5月12日の発表※でようやく値下がり、5kg4214円となりました。
前週より「19円安くなった」とはいえ、前年同期比は2106円。昨年の同時期と比べて米の価格は2倍以上になっているのです。
米高騰が続く中、政府は備蓄米を市場に放出しましたが、いまだにお米の高騰は続いており、沈静化には至っていません。
※農林水産省「スーパーでの販売数量・価格の推移」(5月12日)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/index.html
備蓄米制度の振り返り
備蓄米制度が開始された経緯を振り返ってみましょう。
1993年、大凶作で米不足に陥り、消費者はお米を求めてスーパーに殺到し、社会問題になりました。この経験をふまえ、政府は国民に「いつでも米を供給できるように」と1995年、法律に基づき「米の備蓄」が制度化されました。
10年に1度ともいわれる深刻な米不足に備え、毎年約20万トンずつ、5年間で約100万トンを備蓄しています。令和6年6月末現在では91万トンとなっています。
参考/農林水産省「備蓄米制度について教えてください」
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0012/07.html
農林水産省農林局「米をめぐる状況について 令和6年11月」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-210.pdf
備蓄米の放出は3回目「ご飯茶碗何杯分か?」
農林水産省は、市場に十分な米の量がないことから備蓄米の放出を実施しています。令和7年4月23日~25日の間に実施された3回目の入札(5月中旬以降引渡し予定)で、過去2回と合わせて合計31万トンの備蓄米が放出されたことになります。これはお茶碗に換算するとどのくらいの量になるのでしょうか?
一般的に米(精米)からご飯になるときの量は、「ご飯(重量)=米(重量)×2.2~2.3」で求められます。備蓄米の31万トンが精米と仮定した場合、ご飯の量に換算すると、68.2~71.3万トンになります。これは、お茶碗一杯(150g)にすると、45.5億~47.5億杯分にあたります。
※農林水産省「政府備蓄米の買戻し条件付売渡しの状況」(令和7月4月30日)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/attach/pdf/r6_kome_ryutu-129.pdf
備蓄米はなぜ我々消費者に届かないのか
備蓄米は、まずはJA全農などの集荷業者に入札で売渡され、その後、卸売業者やスーパーなどの小売店を通じて、最終的に消費者に届けられます。
JA全農(全国農業協同組合連合会、以下JA)は、令和7年5月2日に「政府備蓄米の流通円滑化に係る対応」※1を発表しました。現在、備蓄米の流通が一部にとどまっている状況を受け、消費者への早期供給を最優先課題として、取引先との調整を速やかに進め、前倒しでの供給拡大に取り組む方針を示しています。
また、政府としては夏まで毎月、備蓄米の売渡しを行う予定であり、備蓄米を必要とする小売や中食・外食事業者への安定供給に引き続き努めるとしています。
備蓄米は放出されるも「7割が未出荷」
なお、JAが発信した最新情報※2によると、過去1回目、2回目の入札では19万9,270トン落札し、卸売業者と契約は完了しています。しかし、5月8日現在の出荷済み数量は6万3,266トンと全体の32%にとどまっており、残り約7割はまだ未出荷の状況です。
※1 JA全農「政府備蓄米の流通円滑化に係る本会の対応について」2025年5月2日
https://www.zennoh.or.jp/press/release/2025/104628.html
※2 JA全農「全農の政府備蓄米の取扱いに関するお知らせ」2025年5月9日
https://www.zennoh.or.jp/press/release/2025/104711.html
シニア世代の家計を圧迫する米高騰問題【まとめ】
お米の価格高騰は、特に年金収入だけで生活している高齢者にとっては深刻な問題です。主食であるお米の値段が昨年に比べ2倍以上に上昇している現在、家計への負担は一層厳しさを増しているのが実情ではないでしょうか。
備蓄米は放出されても、すぐに市場に出回るわけではく、お米の価格もすぐには下がらないようです。今後の動向に注意が必要です。