《退位の日から6年》美智子さまから雅子さまへ受け継がれた伝統とご公務 被災地ご訪問では被災者と目線を同じに、“最後の日本赤十字大会”ではサプライズも
2019年4月30日に退位した上皇陛下。江戸時代の光格天皇以来、約200年ぶりとなる生前退位に当時、注目が集まった。それから6年──。退位後は上皇后美智子さまとともに、規則正しい生活を送られ、私的旅行として各地へ訪問されている。
「平成」の30年間、上皇さまを支えられた美智子さまから、皇后雅子さまは伝統などさまざまなものを受け継いでいる。
平成から始まった被災地での座るスタイル
国民に寄り添われる上皇ご夫妻。1995年に発生した阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災など、被災地や避難所をご訪問した際にも人々に寄り添われるおふたりの姿が見られた。
阪神・淡路大震災から2週間後、余震が続く中、被災地に向かわれた上皇ご夫妻。美智子さまは、皇居で摘まれた17本のスイセンの花を焼け野原となった被災地に献花された。また、帰りのバスの窓から両手の拳を2回振り下ろすジェスチャーをされ、「頑張ってください」という意味の手話で人々を励まされた。
避難所では被災者と目線の高さを合わせるため、膝を床につけていた。上皇ご夫妻のスタイルを天皇陛下も受け継ぎ、避難所で被災者を励まされる際には座っている。
「全国赤十字大会」で次期皇后の雅子さまをご紹介
雅子さまは公務も受け継がれており、美智子さまが30年間勤められた日本赤十字社名誉総裁を2019年から務められている。毎年開催される「全国赤十字大会」で感動的なシーンが見られた。
2018年5月16日、美智子さまにとって皇后として最後の出席となる「全国赤十字大会」に雅子さまが15年ぶりに出席された。退場される前、客席に向かって頭を下げられた美智子さまは、後ろにいた雅子さまに声を掛けた。そして、次期名誉総裁である雅子さまを紹介されるかのように、雅子さまの右腕に左手を添えられた。頭を下げるおふたりに会場からは大きな拍手が送られた。
美智子さまが守り続けた「小石丸」を育てた雅子さま
明治時代から、ご養蚕は歴代の皇后に引き継がれてきた。毎年、5月ごろに「御養蚕始の儀」、7月に「御養蚕納の儀」が行われ、約2か月間にわたってご養蚕に取り組まれる。美智子さまは、「紅葉山御養蚕所」で、蚕に桑を与える「給桑」や、蚕を繭づくり専用の器具に移す「上蔟」など、養蚕の作業に取り込まれた。
飼育されている蚕の中には、純国産種の「小石丸」も飼育されている。「小石丸」は他の新品種に比べると繭が小さく、生産性が低いことから御養蚕所で飼育中止が検討されていたが「繭の形が愛らしく、糸が繊細でとても美しい。もうしばらく古いものも残しておきたいので、育ててみましょう」と美智子さまの意向で、飼育を継続することが決まった。
美智子さまが長年取り組まれた養蚕を雅子さまが引き継ぎ、2020年5月11日に初めて「御養蚕始の儀」に臨まれ、同月29日には「給桑」の作業をされた。
2021年、雅子さまの58歳の誕生日に公表された感想では、養蚕について触れられている。
「今年2度目となった養蚕も、初めて、給桑、上蔟、繭掻き、繭切り、採種などのすべての作業に5月から6月にかけて携わることができ、御養蚕所の主任や周囲の助けを得ながら、今年も無事に終えることができましたことを嬉しく、また有り難く思いました。来年も蚕を育み、養蚕の作業を行うことを楽しみにしております」
2024年は、「小石丸」を前年より2万頭多く飼育し、およそ30キロの繭を伊勢神宮に納めている。
令和の皇后として活躍されている雅子さま。引き継がれた公務に熱心に取り組まれる姿から美智子さまへの尊敬のお気持ちが伺える。
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