乳製品、体にいいのはどっち?|ヨーグルトは固形orドリンク?牛乳はホットorアイス?など
カルシウムやたんぱく質が豊富で、老若男女の健康をサポートする乳製品。しかし、「安かったから」「栄養価が高そうだったから」と何気なく選んでいると、カロリーや塩分がオーバーしていたり、思いがけない添加物を摂っている可能性大。必要な栄養素をしっかり摂取する食べ方をお教えします!
冷蔵庫の常連で、お菓子作りや子育てにも欠かせない「乳製品」。ヨーグルト、バター、チーズ…毎日、何かしらの形で口にしているだろう。
乳製品の原材料である「牛乳」には、たんぱく質、脂質、炭水化物の3大栄養素をはじめ、カルシウム、ビタミン、ミネラルなど健康な体を作るために欠かせないたくさんの栄養素が含まれている。 一方で、「牛乳は太りやすい」「ヨーグルトの菌に健康効果はない」などの噂も多い。さらに、店頭にはどれを選べばいいのかわからないほどさまざまな商品が並び、価格も大きく変わる。
一体どのように、「本当に体にいい乳製品」を見極めればいいのだろうか。絶対に失敗しない選び方を専門家が伝授する。
まずはヨーグルト編から紹介しよう。「腸にいい」というイメージを誰もが抱くヨーグルトは、昔ながらのプレーンなもの以上に、目新しい「菌」が入った高機能の商品が、年々、存在感を増している。ドリンクタイプの方が手軽でいいと言う人もいるが、栄養面に違いはあるのだろうか?
「飲むヨーグルト」VS「固形ヨーグルト」
摂取しやすいのは圧倒的にドリンクタイプだが、日本臨床栄養協会理事で名古屋経済大学准教授の早川麻理子さんは、その「飲みやすさ」を懸念する。
「ドリンクタイプは、水分の含有率が多いものの、たんぱく質や乳脂肪などの栄養成分は固形のものとほぼ変わりません。しかし、“飲みやすさ”をかなえるために、ドリンクタイプには砂糖や異性化糖(ブドウ糖果糖液糖など)が添加されていることがほとんど。これは血糖値や中性脂肪の上昇につながります」
ドリンクタイプにも無糖の商品はあるが、市販されているほとんどの商品には甘みが足されている。ゴクゴク飲みすぎてカロリーオーバーになりやすい危険からも、固形を選びたい。
「プレーン」VS「果実入り」
果物入りは、果肉のビタミンや食物繊維なども摂れるので、より体によさそうな印象だが、早川さんは「プレーン」をすすめる。
「果肉入りの市販品のヨーグルトは、シロップ煮の果物が使われているため糖分が多く、一方で、生の果物に含まれる酵素や栄養素は減少しています。果物を入れるなら、プレーンヨーグルトにフレッシュな果物を切って入れるといいでしょう」
立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さんも同意見だ。
「ヨーグルトに入っている果物は、栄養素というより糖質を足しているととらえた方がいい。ダイエット中の人で、カロリーを考えずにたんぱく質をしっかり摂るためには絶対にプレーンです」(藤田さん)
「ビフィズス菌」VS「プラズマ乳酸菌」
パッケージに大きく打ち出される菌の名前を見ると、どれも体によさそうだと感じるが、選ぶなら「プラズマ乳酸菌を」と言うのは、健康検定協会の管理栄養士の望月理恵子さんだ。
「免疫機能の根幹の働きを高めて、かぜやインフルエンザなどの感染を防ぐ優れた効果があるとわかっています。大事なのは、毎日、摂り続けることです」
とはいえ、菌の効果は目的や個々の腸内環境によって違ってくる。自分に合った菌を見分けるには、「便チェック」が有効だ。
「腸内に悪玉菌が多い人は黒っぽい便でアルカリ性に傾いていますが、善玉菌が多い人の便は黄色く、酸性に傾きます」(早川さん)
便の色をバロメーターにしながら、自分の腸内環境に合った菌を試し、善玉菌を増やせるヨーグルトを見つけたい。
「冷やして食べる」VS「ホットヨーグルト」
ヨーグルトは冷蔵庫で冷やして食べるものというイメージが根強いが、実はホットにしても栄養素は変わらない。
「ヨーグルトには熱に弱いビタミンCも入っていないので、温めたところで栄養素の変化はほぼありません」(望月さん)
75℃以上で15分間温めると、ほとんどの乳酸菌が死滅するというが、「整腸作用はある」と早川さんが語る。
「生きた菌として善玉菌を増やしてくれる効果はなくなりますが、加熱によって死んでしまっても、その菌体成分が善玉菌の栄養分となって悪玉菌を抑えたり、腸管を刺激して免疫を活性化する働きは残ります。カレーなどの煮込み料理に使っても構いません」
温かい料理にも積極的に使いたい。
続いて牛乳編を紹介しよう。どの家庭の冷蔵庫にも入っている牛乳。グラスに注いでも見た目に違いはないが、選び方にも飲み方にもコツがある。
「成分無調整」VS「低脂肪」VS「無脂肪」
脂肪が少ない方がヘルシーに感じるが、脂肪を減らす過程でほかの栄養素も減ってしまうデメリットがあるため、成分無調整がいい。
「低脂肪や無脂肪は、脂肪が少なく肥満リスクが下がる一方で、ビタミンDやE、葉酸などの栄養価も低くなります」(望月さん)
しかし、成分無調整の牛乳も飲みすぎは禁物だ。
「更年期障害の女性などで、骨粗しょう症を気にして大量に牛乳を飲む人がいますが、無調整の牛乳はカロリーが高い。無調整は1日2杯までにして、それ以上飲む場合は無脂肪にするなどの工夫をしてください」(早川さん)
「賞味期限が短い牛乳」VS「賞味期限が長い牛乳(LL牛乳)」
普通の牛乳の賞味期限は未開封でだいたい2週間程度だが、「LL(ロングライフ)牛乳」は、2か月持つものもある。長持ちさせるために添加物が入っているのではないかと疑ってしまうが、「どちらも変わらない」という。
「ロングライフ牛乳は添加物が入っているわけではなく、普通の牛乳より高い温度で殺菌し、完全な無菌状態にしてパック詰めされているので長持ちします。栄養価は通常の牛乳と差がありません」(望月さん)
たんぱく質は熱によって変質するというが、健康効果が変わることはなさそうだ。
「熱変性を起こした牛乳のたんぱく質が人体に与える影響は、現在の栄養学では言及されていません」(早川さん)
ライフスタイルに合わせて、便利な方を選ぼう。
「朝飲む」VS「寝る前に飲む」
乳製品を摂るなら、だんぜん「朝」だと言うのは望月さんだ。
「カルシウムは空腹時の方が吸収率が高まります。また、たんぱく質を朝摂ることで体内時計がリセットされ、一日を活動的に過ごすことが可能になります」
朝食を抜きがちな人こそ、朝コップ1杯の牛乳を飲んでほしいと藤田さんが続ける。
「たんぱく質は1日3食でしっかり摂取する必要がありますが、現代人は朝食を抜く人が増えています。朝食でたんぱく質が足りない人は、昼夜に摂取しても、筋肉量が少なくなります」
毎朝コップ1杯の牛乳を習慣にしよう。
「アイスミルク」VS「ホットミルク」
気温が上がるこれからの季節はアイスミルクがおいしく感じるが、ヨーグルト同様、「ホット」の方が体にやさしい。
「冷たい牛乳は乳糖が腸を刺激しやすく、お腹がゆるくなりやすい。乳糖不耐性の人でなければ、人肌くらいに温めて飲んだ方が腸への刺激が弱くなり、ゆるくなりにくいでしょう」(望月さん)
ただし、便秘気味の人は冷たい牛乳の方が排便を促す可能性があるので、体の状態と相談しよう。
その他、乳製品にまつわる意外な事実はまだまだある。
赤ちゃん用ミルクの「粉」VS「液体」
最近話題の「乳児用液体ミルク」。
一部では、液体ミルクを批判する声もあるが、その成分は「粉と変わらない」と早川さんは断言する。
「栄養学的な違いは一切ありません。液体ミルクは、お湯で溶かすという工程が不要なため、細菌感染などのリスクが減らせる利点もあります」
忙しいママには安心して液体ミルクを活用してほしい。
動物性脂肪の「生クリーム」VS植物性脂肪の「ホイップクリーム」
生クリームの原材料表示を見ると、「動物性脂肪」と書かれている。一方で、ホイップクリームは、「植物性」だ。「植物性」の方が体によさそうな印象だが、そうではない。
「生クリームは、牛乳を分離させた後の『乳脂肪』を原料としたものですが、ホイップクリームは、乳脂肪に植物油脂や乳化剤、安定剤などの添加物を加え、生クリームに似せて作ったものです。心疾患のリスクを高めるトランス脂肪酸も生クリームより10倍も多く含まれます」(望月さん)
価格は、生クリームの方がホイップクリームより2倍以上高いものもあるが、迷わず生クリームを選びたい。
「アーモンドミルク」VS「ライスミルク」VS「豆乳」VS「ココナッツミルク」
牛乳の代替品として注目を集める“ミルク”は、それぞれ長所がある。
「血行促進にはビタミンEが豊富なアーモンドミルク、糖の代謝を高めるにはビタミンB群が豊富なライスミルク、筋肉をつけるには大豆たんぱく質が豊富な豆乳、ダイエットには“脂肪になりにくい脂質”が多いココナッツミルクがおすすめです」(望月さん)
その日の体調に合わせ、“飲み分け”をするのが、乳製品の正しい摂り方かもしれない。
ここまでの比較を踏まえ、総合優勝の乳製品は、「温かいプレーンヨーグルト」に決定した。
「ホットの方が消化器官にやさしいので、人肌程度に温め、毎日100g程度食べるといいでしょう。さらに高温加熱しても、腸内改善効果があるため料理にも使えるという幅広さも魅力です」(早川さん)
夏こそ、ホットなヨーグルトで健康に過ごしたい。
※女性セブン2019年8月1日号
●賢いおやつ、食べるならどっち?間食は不足しがちな栄養を補う役目も