介護施設訪問レポート|スタッフの誠実な対応が評判の住宅型有料老人ホーム<後編>
高齢者向けの住宅の中から、話題の施設をピックアップ。記者が訪問し、施設で働く人の思い、設備、サービスなどをレポートする。今回は、神奈川県横浜市にある住宅型有料老人ホーム「ナーシングホーム横浜・長者町」だ。前編に引き続き、その特色を紹介する。
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ナーシングホーム横浜・長者町
「介護付」(介護付の中でも、介護サービスが施設のスタッフにより実施される“一般型特定施設入居者生活介護”と、介護サービスが居た委託先の事業者によって提供される“外部サービス利用型特定施設入居者生活介護”がある)「住宅型」「健康型」の3種類ある有料老人ホーム(※)。
※以下、厚生労働省「有料老人ホームの概要」より抜粋
●介護付有料老人ホーム
・介護等のサービスが付いた高齢者向け居住施設。
・介護が必要になっても、ホームが提供する介護サービスである特定入居者生活介護を利用しながら、ホームでの生活を継続することが可能。
●住宅型有料老人ホーム
・生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設。
・介護が必要となった場合、入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながら、ホームでの生活を継続することが可能。
●健康型有料老人ホーム
・食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設。
・介護が必要になった場合には、契約を介助し退去しなければならない。
自立型と介護型の2つのタイプの居室を持つ「ナーシングホーム横浜・長者町」は住宅型有料老人ホームだ。住宅型は2017年に介護付の定員数を越えるなど、社会的なニーズが高まっているという。
まだ住宅型有料老人ホームの数が少なかった8年前から地域の信頼を積み重ねてきた「ナーシングホーム横浜・長者町」。ここでは洗濯や掃除などの家事や日常生活の支援等のサービスを受けながら、介護が必要になった場合には訪問介護等の介護サービスを利用しながら生活することができる。そして、心身の状態に合わせて自立の人向けの一般居室から介護居室に移り住める。
医療体制も充実!1階にクリニックと薬局が併設
こちらの特徴の1つが医療体制の充実ぶり。日常の健康管理のため、開設時に同じ建物の1階に誘致したクリニックと薬局が入居者のために機能している。また複数の協力医療機関によって、医療行為のサポート体制が整えられているので、インスリン投与、胃ろう、在宅酸素、尿バルーン、ペースメーカー、褥瘡(じょくそう)などにも対応可能だという。介護度が重くなっても、認知症が進んでも終の棲家として済み続けられる環境が整えられているのだ。
「医療機関とのつながりを評価してくださる入居者様も多いです。高齢になると色々な病院から薬をもらってくることが増えますが、痛み止めや胃薬、湿布など、どこで何をもらったのかよく分からなくなってしまうこともあります。そういった薬の管理を1階に入っている薬局が一括でしてくれます」(運営会社YSナーシング取締役の菅野智さん)
「1階の薬局の管理薬剤師さんが長く担当してくださっています。入居者様のこともよく分かってくれているので、安心して頼っています」(ナーシングホーム横浜・長者町施設長の笠間恵さん)
運動療法・リハビリにも注力!自宅でもできるトレーニングを紹介
介護居室を用意して心身の変化に備えつつ、介護予防にも積極的に取り組んでいる。理学療法士や柔道整復師、介護スタッフが連携して、筋力の維持などのために運動療法や生活リハビリを提供している。自主的に運動に取り組むための機器も充実しており、入居者は専用のジムのように自由に使うことができるそうだ。
この日に行われていたのは、伸び縮みするゴムを使ったセラバンド体操。筋力の維持に効果があるそうだ。入居者の前で見本を示しているのは、介護スタッフの山口岳大さん。23歳と若いが、学生時代から「ナーシングホーム横浜・長者町」で介護現場の経験を積み、介護予防運動指導員の資格も取った努力家だ。今は週に1回、体操の講師を務めている。
山口さんに自宅でも簡単にできるセラバンドを使った肩のストレッチを教えてもらった。肩こり防止に効果があり、ハンドタオルでも代用できるので試してみてはいかがだろうか。
(1)リラックスした状態でセラバンドを背中に回す。
(2)背筋を伸ばして、腕をゆっくり伸ばせるところまでまっすぐ前に出す。ゆっくり息を吐きながら4秒かけて伸ばすと効果的。ゆっくり息を吐きながら元の状態に戻す。
山口さんにもう一つ、気軽にできる運動を教えてもらった。脳トレーニングと関節の可動域が狭くなってしまう拘縮の防止に効果が期待できる一石二鳥のグー・パー運動だ。
「グー・パー運動は拘縮を防ぐために効果的です。知らず知らずのうちに指や手首、肘や肩の関節まで動かせるような運動になっています。脳トレーニングも兼ねていますし、負荷も少ないのでオススメです。肩が痛い方は腕を下げてやってくださってOKです。毎日やって頂くと効果的です」(山口さん)
入居者の生活の質を高めるスタッフ力
多くの高齢者向けの施設が介護人材不足に悩んでいるが、評判の施設の多くが共通して取り組んでいるのがスタッフ満足度を高める施策だ。こちらでは優秀でやる気のある人材が、仕事に取り組む姿勢や考え方を共有し、協力しあっているという。それが結果的に質の高いサービスを入居者に提供することにつながっていくという。
「よいサービスをお届けするにはスタッフに余裕がないとできません。スタッフ満足度が地域1番になるように、スタッフの声を丁寧に聞き、反映させるように努力しています。具体的には、評価基準の透明性やリフレッシュ休暇の導入を進めています。頑張った人がきちんと評価される仕組みを作っています」(運営会社YSナーシング常務取締役の一柳昌太郎さん)
「介護の原点に戻るということを意識しています。専門職である介護という職業を見つめ直しながら、みんなで力を合わせています」(笠間さん)
亡くなった奥さんの杖を握って最期を迎えたいという希望を叶えた異業種から転職したスタッフや現場リーダーとして活躍する中国出身のスタッフ、そして設立準備・開業時から中核を担っているスタッフ。彼らから具体的なエピソードを聞き、実際に入居者の様子を見て、印象に残ったのはスタッフたちの誠実な仕事ぶりだ。日々の仕事に流れないように介護の原点を大切にしている姿勢を感じた。
撮影/津野貴生
【データ】
施設名:ナーシングホーム横浜・長者町
公式WEBサイト:https://www.yuyuassist.co.jp/choujamachi/
所在地:神奈川県横浜市中区長者町3-7 YS長者町ビル
最寄駅:横浜市営地下鉄ブルーライン「伊勢佐木長者町」駅より徒歩2分
JR「関内」駅から徒歩7分
類型:住宅型有料老人ホーム
事業主体:株式会社YSGホールディングス
敷地面積:1124.37平方メートル
延床面積:6917.22平方メートル
室数:109室
入居要件:自立、要支援
構造:鉄骨コンクリート造、地上9階地下1階
開設年月日:2011年7月1日
料金:前払金+月額利用料
(1)一般居室(75~85歳に入居した場合の具体例。原則、年齢制限はないが前払金総額、償却期間が異なる)
入居前払金:2200万円~4588万5000円
月額利用料:
1人で入居の場合15万336円(内訳:家賃0円+食費7万4736円+管理費7万5600円)+実費(電気、水道、電話料金等)
2人で入居の場合26万8272円(内訳:家賃0円+食費7万4736円+管理費11万8800円)+実費(電気、水道、電話料金等)
(2)介護居室
前払金:90万円~1750万円
月額利用料:24万7016円~37万7016円(内訳:家賃2~15万円+食費7万4736円+管理費10万8000円+生活支援費4万4280円)
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
●スタッフが「できることは見守る」グループホーム(認知症対応型共同生活介護)<前編>