中高年がやってはいけない目の治療やトレーニングを眼科医が解説「アイフレイルチェック」で目の状態を知ることが大切
病気や認知症を予防し、足腰を鍛えて歩ける体でいることなど、いつまでも健康で長生きしたいと誰しも願うもの。実はそのすべては「目」につながっている。「目の寿命」を延ばすことが、すなわち健康寿命を延ばすことになるのだ。ただし、目の“健康長寿”のためにと取り入れたトレーニングや検査、治療が必ずしも良い方法とは限らない。専門医に詳しく伺った。
教えてくれた人
■深作秀春さん/深作眼科院長
■平松類さん/二本松眼科病院副院長
目の病気は自覚症状がないことも!今すぐ「アイフレイル」チェックを
目の老化や病気を防ぐためには、何よりも「いまの目の状態」を知っておくことが大切になる。老眼かと放っておいたら思わぬ病気が隠れている場合や、緑内障など自覚症状のないケースもあるからだ。深作眼科院長の深作秀春さんが言う。
「片方の目に異常があっても、両目で見ていると気がつかないことが多い。毎朝、片目ずつで見て、見え方に違いがないかチェックしましょう。片目ずつ見て、視界に黒い虫やゴミが見える飛蚊症や、見える範囲が狭くなる視野欠損などの症状があればすぐ信頼できる眼科に行ってください」(深作さん)
二本松眼科病院副院長の平松類さんが推奨するのは、「アイフレイル」のセルフチェックだ。
フレイルとは、病気ではないが加齢に伴う筋力の衰えなどで心身の機能が低下している状態で、“健康と要介護の間”を指す。同様の症状は目にもあり、自分の目がどれだけ衰えているか、チェックリストで確認してほしい。
目の状態を知る「アイフレイル」チェックリスト
□ 目が疲れやすくなった
□ 夕方になると見えにくくなることが増えた
□ 新聞や本を長時間見ることが少なくなった
□ 食事のときにテーブルを汚すことがたまにある
□ 眼鏡をかけてもよく見えないと感じることが多くなった
□ まぶしく感じやすくなった
□ はっきり見えないときにまばたきをすることが増えた
□ まっすぐの線が波打って見えることがある
□ 段差や階段が危ないと感じることがある
□ 信号や道路標識を見落としそうになったことがある
2つ以上当てはまる人はアイフレイルかも?
出典/アイフレイル啓発公式サイト
目の検査は漫然と受けるのでは意味がない
定期的な視力検査、眼圧検査、眼底検査を欠かさないことで重篤な症状の予防が可能になるが、ただ検査を受ければいいというわけではない。
「通常、眼科を受診したときには視力検査と眼圧検査を受けます。
しかし、眼圧の高さが主な原因とされる緑内障も眼圧検査で見過ごされてしまうケースは少なくない。角膜の厚みは人によってまったく異なり、日本人は正常眼圧の概念をつくったドイツ人よりかなり角膜圧が薄いので、見かけ上は眼圧が低く測定される。そのうえ、緑内障患者を追跡した調査では7割が正常眼圧だったことからも、眼圧以外の原因が7割を占める。
眼圧検査で異常がない=緑内障の心配はない、とは言えません。視力検査、眼圧検査、眼底検査、OCT検査、直接の視神経障害観察による検査などの複合的検査により総合判断することが必要です」(深作さん)
白内障手術は早めに受けるのも選択肢だが医師選びが重要
早めに手術を受けるのも選択肢のひとつだ。これまでに25万件もの目の手術を手がけてきた深作さんは、こうアドバイスする。
「多くの人は見えにくくなっているのに気づかないまま年齢を重ねています。
昨日、白内障手術を受けたかたがたも今日の検査で“こんなにもよく見えるものだったのか!”と大喜びしている。“もっと早く手術すればよかった”というかたがたがほとんどで、最新の白内障手術を喜んでいます。
また、白内障を放置すると緑内障を併発することが多いことも知られるべきです。ただし、手術を受ける際の眼科選びはとても重要。眼科専門医であることはもちろん、手術経験が少ない術者だと合併症を起こして失明してしまう危険性さえもあります。
白内障治療は基本的に手術ですが、腕の差が極端に結果に表れる手術なのです」