激痛が起こる片頭痛・群発頭痛など一次性頭痛の特徴 鎮痛剤の乱用で慢性化も
脳出血など脳の病気がなくても起こる頭痛は一次性頭痛と呼ばれる。緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛などで患者は約3000万人と推計されている。
ほとんどは首や肩のコリや痛みによる緊張型頭痛だが、脳内の血管の拡張などにより、激しい痛みが起こるのが、片頭痛や群発頭痛だ。近年、鎮痛剤の乱用による慢性頭痛患者が増加。薬が効かない症例もあり、安易な服薬には注意が必要となる。
* * *
脳の病気を伴わない一次性頭痛の種類
脳の血管や硬膜など痛みを感じる部位に炎症や圧迫が起こると、その刺激が三叉(さんさ)神経などに伝わり、大脳が「痛い」と判断すると頭痛が起こる。また、首や肩など頭周辺の筋肉の緊張も頭痛の原因となる。これら脳の病気を伴わない頭痛を一次性頭痛という。一次性頭痛の約80%は緊張型頭痛だが、激しい痛みに襲われる片頭痛や群発頭痛もある。
埼玉精神神経センター内埼玉国際頭痛センターの坂井文彦センター長に話を聞いた。
「緊張型頭痛はストレスや過労などで脳に近い筋肉が緊張し、こめかみ周辺が締め付けられるような痛みを感じます。これは年齢や男女問わずに起こります。片頭痛は20〜40歳代の女性に多く、心臓の鼓動に合わせてズキンズキンと激しい痛みがあり、動けなくなることもあります。群発頭痛の患者の多くは働き盛りで、やや男性が多く、涙や鼻水を伴い片方の目の奥がえぐられたような、じっとしていられないほどの痛みを感じます」
片頭痛は脳内の血管が拡張することで周囲の神経が刺激されて起こる。頻度は月平均1〜2回程度で、1週間に2回ほど頭痛が起こる。女性ホルモンであるエストロゲン量の変化の関与が指摘され、気圧や気温の変化、睡眠不足なども発作の誘因とされている。
群発頭痛は脳内に入る太い血管が拡張することで三叉神経を刺激し、目の奥に激しい痛みを生じる。1年に1〜2か月間、頭痛が群発的に発生することで、この名がついた。特に明け方、レム睡眠時に痛み発作が起こることが多い。レム睡眠では脳の代謝が上がり、血液が大量に供給されるために血管が拡張し、痛みが起こると考えられている。群発頭痛の患者の多くは喫煙者で、他に群発期に飲酒すると痛み発作が誘発される。狭心症治療薬のニトログリセリンを舌下服用しても血管が拡張し、必ず痛み発作が起こる。
一次性頭痛の特徴
●緊張型頭痛
・こめかみ辺りが締め付けられるように痛む。毎日起こるわけではない。
・過労やストレスにより、頭の近くの筋肉が緊張することで起こる。
●片頭痛
・頭の片側か両側にズキンズキンと吐き気を伴う痛みが一定の期間繰り返す。20〜40歳代女性に多く発症する。
・エストロゲンの量の変化により、痛みの発作が起こる。気圧や気温の変化でも起こる場合がある。発作中は音や光に敏感になる。
●群発頭痛
・片側の目の奥に激しい痛みが起こる。痛み発作のときはじっとしていられない。涙や鼻水を伴う。やや男性が多い。
・脳内に入ってきた太い血管が拡張し、三叉神経などを刺激して痛みが起こる。1年に1〜2回、一定期間頭痛が群発的に起こる。
鎮痛剤の乱用で頭痛が慢性することも
片頭痛と群発頭痛の治療には近年、血管の拡張を抑えるトリプタン系薬が保険承認され、効果を上げている。
「頭痛患者の中には、いつ痛み発作が起こるか不安で、痛みがないときでも予防として鎮痛剤を服用する方がいます。これを繰り返すうちに鎮痛剤が効かなくなり、さらに過剰服用や別の鎮痛剤を次々に服用することで頭痛が慢性化します。これが薬物乱用頭痛で、患者は増加傾向にあります」(坂井センター長)
脳は痛みを感じるとセロトニンやエンケファリンという痛みを抑制する物質を出す。鎮痛剤を飲むと体内の痛みの抑制物質が相乗効果となり治まる。ところが、常に鎮痛剤が体内に入っていると生体が本来持っている鎮痛機能が働かなくなって頭痛の慢性化を引き起こす。
治療は別の鎮痛剤に変え、外来で徐々に減薬していく。しかし、入院による断薬が必要な場合もある。
※週刊ポスト2019年4月5日号
●体調不良は「ストレス脳」が原因だった!ストレス軽減&撃退法