睡眠に寄り添うロボット「ネモフ」がヒット!開発のきっかけは高齢者の一言
自由気ままだが、時に寂しいひとり暮らし。そんな人の睡眠時間に寄り添い、寂しさをちょっと癒してくれるロボットが『ネモフ』だ。
ふわふわした手触りと寝ぼけたような話し方がかわいいネモフは、どのようにして誕生したのか? 癒しの裏にあったバタバタの開発秘話とは!?
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高齢女性の一言が開発のきっかけに
パルスボッツは、東京・駒場にある一軒家風のオフィスでロボット向けのアプリケーション開発を行っている会社だ。
普段はソフトウエアの開発を行っている同社が『ネモフ』というロボットを開発するきっかけになったのは、オフィスの掃除を担当する高齢の女性が漏らした一言だった。
「ひとり暮らしの話し相手としてスマートスピーカーがほしいけど、かわいくないのよね」。
この言葉にピンときた代表の美馬直輝さんは、1年という期限を設けてロボット作りをしようと決めた。
最初は、生活のさまざまなタイミングでおしゃべりできるロボットを目指していたが、「コミュニケーションができる」だけだと、時が経つにつれて、ただ置いてある人形のような扱いになってしまい、実際の生活に浸透しないという短所がある。そこで、“眠りのおとも”という役割を与え、使用シーンがしっかりイメージできるようなコンセプトにすることにした。
眠りを誘う声、なんと社員が担当
睡眠に誘うために、物語を話す「おはなし」機能と、癒しの音楽が流れる「オルゴール」機能を搭載。「おはなし」機能は寝ぼけたような声でゆっくり話す姿がかわいく、聞いていると眠くなってくる声なのだが、なんとこの声は同社の社員が担当しているという。
「最初は合成音声やプロのかたにお願いすることも考えていたのですが、話し方がうますぎると、寝ぼけた声に調整するのが難しかった。試しにある社員の声を使ってみたところ、抑揚のあまりない話し方が睡眠というコンセプトにぴったりはまったんです」(美馬さん)。
また、会話をすることもでき、アラーム設定も行える。
初回予約分100体は14時間で完売
’18年10月、クラウドファンディングを利用した受注会では、100体の予約分が14時間で完売するという好調な売れ行きだった。しかし実は、受注会の時点では、ぬいぐるみ部分を製作する工場は決まっていなかったという。
「工場が決まらなかったら、社員の家族が手縫いするという方法も考えていて、実際に試作もしていました」と美馬さん。当初、ぬいぐるみ部分は加工賃が安価な海外の工場に製作を依頼する予定でいたが、シンプルで安っぽくならない素材をわかってもらうのが難しかったり、渡していた型紙を無視してぬいぐるみを作ってしまったりとトラブルが続出していたのだった。素材は美馬さん自身が手芸店を駆け回り、探したものを支給。また、生産数を当初の10分の1にして国内で製作することで、なんとか工場を決めることができた。
初回は100体と少なめの生産数だったが、20~30代のひとり暮らしの女性の人気をおおいに集めた。現在は追加生産も計画中だという。続報を待とう。
【データ】
『nemoph(ネモフ)』(パルポッツ)
目覚まし、時報、オルゴール、おはなしの機能を搭載したロボット『ネモフ』。操作は「触る」「話しかける」の二通りの方法で行う。
約幅17×奥行17×高さ17㎝。 カラーはブラック、ホワイトの2色。
2万9700円
※女性セブン2019年3月7日号