美味しい料理には方程式があった!誰でもうまく料理が作れる裏ワザ
「なぜその料理はおいしいのか」について考えたことがありますか? 実は、人がおいしいと感じる根拠の多くは科学的に解明されています。つまり、センスや愛情がなくても(!?)、“ルール”さえ知っていれば、どんな人でもおいしい料理は作れるのです。そんな“料理の方程式”あなたも知りたくありませんか?
「管理栄養士など、調理のプロはみな、調理科学を学んでいます」とは、管理栄養士の浜本千恵さん(以下同)。
「例えば肉じゃが。肉をただ煮るより、炒めてから煮た方が、うまみが閉じ込められます。こういうルールを知れば、プロの味に近づけます」
さらに調理科学では、栄養を効率的に摂る方法もわかる。
「じゃがいもは、熱を加えると糖が増えて甘くなります。しかし、皮をむいてからゆでると糖が流出するので、皮つきのままゆでます」
何気なくやっていた調理の手順には理由があるのだ。早速応用して作ってみて。
下味のつけかた
●肉
調味料に長く漬けると浸透圧で水分が抜ける。
干し肉が硬いことからもわかるように、肉は水分が抜けるとパサついて硬くなる。塩や調味液に長時間漬けると、浸透圧により、肉から水分が抜けてしまう。そのため、塩こしょうをしたり、調味液に漬けてもみ込むのは、調理をする直前がベスト。長く漬け込むのは基本NGだ。
「ただし、脂身の多い肉や厚みのある肉は例外。直前に下味をつけても中まで味がしみ込まないので、しっかり味をなじませるには、30分程度漬け込みましょう」
<該当する代表料理>
ステーキ
<その他の該当料理>
豚肉のしょうが焼き、スペアリブ、唐揚げなど
●魚
調理前に塩を振ると生臭さや身崩れを防げる
調理前の生魚には、必ず塩を振ること。これには、下味をつけるだけではなく、生臭さを取り除き、身を引き締める役割がある。 「臭み成分は水溶性なので、塩を振ると、水気と一緒に臭み成分も溶け出します。つまり、出てきた水分には臭み成分が含まれているので、余分な塩とともにしっかりふき取って」
白身魚は約5分、青魚は約30分おくこと。
<該当する代表料理>
あじの塩焼き
<その他の該当料理>
さけの塩焼き、鯛のカルパッチョなど
●野菜
野菜に下味はNG。水分が抜けて食感が悪くなる
野菜に塩分を加えて下味をつけると、水分が抜けてパリッとした食感が失われる。 「ただし、緑黄色野菜をゆでる場合は、ゆでる水の量に対して0.5%程度の塩を入れること。なぜなら塩には、緑色を変色させる酵素・オキシターゼの働きを抑える性質があるから。そして、ゆであがったら冷水にとる。これにより、野菜の緑の色素・クロロフィルが定着し、鮮やかな緑色を保てます」
<該当する代表料理>
小松菜のおひたし、春菊の和えもの、白菜の酢漬けなど
焼き方
●肉
肉は短時間で勝負。表面を強火で焼きうまみを閉じ込める
肉は、強火で表面に焼き目をつけたら、身の色が変わる程度に、さっと焼くのがよい。たんぱく質を焼き固め、肉汁を閉じ込めるのがポイントだ。弱火で時間をかけて焼くと、たんぱく質が凝固せず、うまみが肉汁と共に流れ出てしまう上、水分も抜けて硬くなる。 「ハンバーグなら、真ん中を押して出た肉汁が透明なら、火が通った証拠。加熱時間は5~6分が目安」
<該当する代表料理>
ハンバーグ
<その他の該当料理>
ステーキ、豚肉のしょうが焼き、チキンソテーなど
●魚
塩を振ってすぐ焼くと中まで火が通らず焼きムラの原因に
魚は、塩を振って30分程たった頃に焼くのがおすすめ。なぜなら、塩分が身に浸透すると水分が出て、表面に近い部分が脱水状態になり、火が通りやすくなるから。中はふっくら、外はパリッと香ばしく焼き上がる。また、脱水して締まった身は、裏返す時に崩れにくい。逆に、塩を振ってすぐ焼くと水分が抜けていないため火が通りにくく、焼きムラの原因に。 「塩焼きだけでなく、照り焼きも、塩を振ってから焼いた方が、ふっくら仕上がります」
<該当する代表料理> ぶりの照り焼き
<その他の該当料理> あじの塩焼き、さばの塩焼き、鮭のソテーなど
炒め方
●野菜
“野菜炒めは強火”は間違い!強火で焼くと中は生、表面は焦げてしまう
野菜炒めは、“中火”が基本。というのも、キャベツ、玉ねぎ、もやし、葉物野菜などはいずれも水分が多いので、強火で炒めると、表面だけ焦げ、中まで火が通りにくいからだ。 「始終かき混ぜていると、温度が下がり、焼きムラの原因になるので、数回混ぜる程度でOK。最後だけ強火にして炒めると、余分な水気が飛んでカラッとした仕上がりになります」
<該当する代表料理>
野菜炒め
<その他の該当料理>
きんぴらごぼう、ゴーヤーチャンプル、青菜炒めなど
●ご飯
ご飯を塊のまま炒めると水分が飛ばずベタッとした食感に
ご飯は、加熱すると米の糖分に粘りが出てのり状になり、ベタッとした食感に。
「炒飯の場合、先に溶き卵を炒めると、卵の水分が飛び、その代わりに卵内部に油が入ります。そこに、ほぐした温かいご飯を入れて炒めると、米の表面が、油をまとった卵でコーティングされるので、米粒同士がくっつかず、パラパラの食感に。卵ご飯のように、先に卵とご飯を混ぜてから炒めてもOK」
<該当する代表料理>
炒飯
<その他の該当料理>
ピラフ、ドライカレー、オムライスなど
ゆで方
●野菜
淡色野菜はゆでてから冷水にとると水っぽくなる
「下味」で、緑黄色野菜のゆで方を紹介したが、淡色野菜はこの方法とは逆なので要注意。
「白菜やキャベツなどの淡色野菜をゆでる場合、水の量を少なめにし、ふたをして温度を下げないようにしましょう。また、冷水にとると水っぽくなるので、ゆでたらそのままザルにあげて冷ますこと」
緑黄色野菜の中でもブロッコリーに限っては、冷水にとると水っぽくなるので、淡色野菜同様、冷水にとらず、うちわなどであおいで冷ますこと。
<該当する代表料理>
ブロッコリーのサラダ、ほうれん草のおひたし、いんげんのごま和えなど
●麺
ゆでる際の塩は不要。塩辛くなるだけでコシは生まれない
パスタをゆでる時、水に塩を入れてゆでると、小麦粉のグルテン同士が結合し、パスタにコシが生まれる。しかし、コシを出すためには、水1Lに対して塩大さじ1程度が必要だ。
「これでは、パスタ自体が塩辛くなります。麺と合わせるソースの味で調整できればよいですが、市販のソースを使う場合、かなり塩辛い仕上がりに。少量の塩(小さじ1)では、コシは強くなりません。むしろ、塩は入れずにゆでて」
<該当する代表料理>
ナポリタン
<その他の該当料理>
各種パスタ、マカロニサラダ、ラザニア、グラタンなど
揚げ方
衣と食材に水分が残っているとベチャッとした油っぽい仕上がりに
揚げ物は、衣や食材の水分が抜けた隙間に、油が入り込むことで、カラッと仕上がる。べチャッとした仕上がりになるのは、食材と衣に水分が残っているから。水分を奪ってから油を効率よく入れるには、揚げ油の温度がポイントに。食材によって火の通りやすさが違うため、下記を参考にすること。
低温150~160℃
厚みがあり、火の通りにくい野菜や肉は低温でじっくり揚げる。特に肉は、低温の方が、水分が適度に残り、やわらかくジューシーな仕上がりに。ポテトフライや唐揚げなど、表面だけカリッとさせたい場合は、高温で2度揚げを。
<該当する代表料理>
ポテトフライ
<その他の該当料理>
唐揚げ、さつまいもの天ぷらなど
中温170℃前後
魚のフライ、とんカツ用の肉など、2cm前後の厚みがある魚や肉を、衣を焦がさず中まで火を通すのに適した温度。中心部が半生でも、余熱で火が通る。数種類の食材を使うために厚みが出てしまうかき揚げも同様。
<該当する代表料理>
とんカツ
<その他の該当料理>
魚のフライ、かき揚げ、メンチカツ、ビーフカツなど
高温180~200℃
火が通りやすい食材や、あらかじめ加熱されていて表面だけ揚げればいい食材は高温で。唐揚げなど、厚みのある肉は表面だけ焦げ、中まで火が通りにくいので、低温で揚げ、表面をカリッとさせる2度揚げの時だけ温度を上げよう。
<該当する代表料理>
コロッケ
<その他の該当料理>
えびやいかの天ぷら、唐揚げの2度揚げ用など
●火が通ったかわかる目安は?
火が通ったかどうかは、泡の大きさで判断しよう。食材の中まで火が通っていない時は、大きな泡が激しく出ているが、火が通ると徐々に細かく均一になる。
「泡が小さくなるのは、衣と食材に含まれた水分が抜け、そこに油が浸透したから。泡もほとんど出なくなり、さらに音も小さくなれば、しっかり火が通っている証拠です」
煮方
●魚
煮立った煮汁で煮ると中まで味がしみ込まず淡白な味に
煮立った煮汁に魚を入れて煮ると、すぐに中まで火が通るが、味がしみ込まない。
「その理由は、表面のたんぱく質が加熱によって固まってしまうため。魚のうまみは閉じ込められるが、煮汁が中まで入りません。一方、冷たい煮汁から煮れば、たんぱく質が固まる前に、煮汁が中までしみ込み、身も縮みません」
<該当する代表料理>
さばのみそ煮
<その他の該当料理>
いわしの梅干し煮、かれいの煮つけ、ぶり大根など
●いか
長時間ゆでたいかは水分が抜け硬くなる。少量の煮汁で煮て、予熱で火を通すのが◎
いかは加熱するほど、水分が出て硬くなる。そのため、長時間煮るとゴムの様な食感に。
「いかの煮物をやわらかく仕上げるには、少量の濃い煮汁で煮て、表面の色が変わったら火を止め、余熱で中まで火を通します。加熱時間の目安は1~2分」
<該当する代表料理> いかの煮物、いかと里いもの煮物など
●肉
・硬い塊肉は水で煮てから調味料を加える
硬い塊肉は、塩分を含まない水やだしと弱火で煮れば、浸透圧による水分の流出を防げ、しっとりした肉質に仕上がる。調味料は、肉を煮てやわらかくしてから加えると味が入りやすい。
<該当する代表料理> 豚の角煮
<その他の該当料理> 煮豚、ビーフシチュー、ポトフなど
・薄い肉は長時間加熱はNG。煮立った後に投入
肉は加熱しすぎると硬くなる。特にコラーゲンの少ないロースや肩などの薄切り肉は、身の色が変わる程度の加熱で充分。長く火を入れる料理は、煮汁が煮立った後に入れるか、炒めてから煮ること。
<該当する代表料理>
すき焼き
<その他の該当料理>
肉じゃが、豚汁など
●野菜
強火で煮ると野菜は煮崩れする。落しぶたをして弱火でじっくりが◎
早く火を通そうと強火で煮ると、具材が鍋の中でコトコト動いて煮崩れしてしまう。落しぶたをして弱火でじっくり煮よう。特にかぼちゃは煮崩れしやすい。皮を下にして煮ると、動きにくく煮崩れ防止になる。
<該当する代表料理>
かぼちゃの煮物
<その他の該当料理>
筑前煮、ふろふき大根、おでんなど
生もの調理法
●魚
刺し身は時間がたつと脂が酸化して生臭くなる
スーパーなどで購入した刺し身は、切ってから時間がたっているため、表面の脂が酸化して臭くなり、味が落ちている。
「魚の脂は酸化しやすく、生臭い成分のもとになるので、食べる前に流水で表面の脂や汚れをさっと洗い流し、ペーパータオルでしっかり水気をふき取りましょう。これだけで、味がかなり変わります」
ただし、水分が多く脂の少ない、いかやたこは、水で洗い流す必要はない。
<該当する代表料理>
刺し身の盛り合わせ
<その他の該当料理>
カルパッチョなど
●野菜
野菜を洗って切っただけではハリのない食感に
野菜の細胞膜には、食物繊維のペクチンが多く含まれている。ペクチンは、低温で硬くなり、高温でやわらかくなる性質を持つため、食べる直前に5分程度冷水にひたすと、シャキッとした食感になる。水気をしっかり切れば、水の重さでしならずに立体的に盛りつけられる。
「冷水につけると、冷たさで硬くなるだけでなく、野菜が水分を吸ってみずみずしくなります」
<該当する代表料理>
野菜サラダ
<その他の該当料理>
オニオンスライス、せん切りキャベツなど
●すでにしおれた野菜は50℃のぬるま湯でシャキッと復活!
野菜の葉には、気孔という水蒸気が通る穴があるが、収穫されると気孔は水分を維持するために閉じてしまう。野菜がしおれてしまったら、50℃程度の湯に入れよう。すると、熱のショックで気孔が開き、水分を吸収するため、みずみずしさが戻る。
具体的な方法としては、大きめのボウルに沸騰した湯と冷水を入れて50℃程度にする。そこに野菜を丸ごと入れて約2分ひたし、しっかり水気を切る。
覚えておきたい! おいしい味付けの方程式はコレ!
●煮物
8:1:1(だし:しょうゆ:みりん)
<該当する代表料理>
筑前煮
厚揚げ煮
肉じゃが
●煮びたし
15:1:1(だし:しょうゆ:みりん)
<該当する代表料理>
青菜の煮びたし
かぶの煮物
わかめ煮
●うどんつゆ
12:1:1(だし:みりん:薄口しょうゆ)
<該当する代表料理>
煮込みうどん
茶碗蒸し
だし巻き卵
●すき焼き
4:3:2:2(しょうゆ:みりん:砂糖:酒)
<該当する代表料理>
すき焼き
きんぴらごぼう
肉豆腐
●甘辛煮物
6~8:2:1:1(だし:しょうゆ:みりん:砂糖)
<該当する代表料理>
甘めの肉じゃが
ひじきの煮物
五目豆煮
●照り焼きだれ
1:1:1:0.5(しょうゆ:みりん:酒:砂糖)
該当する代表料理>
鶏の照り焼き
きんぴらごぼう
照り焼きハンバーグ
●丼つゆ
4:1:1(だし:しょうゆ:みりん)
<該当する代表料理>
親子丼
カツ丼
牛丼
●すし酢
5:3:1(酢:砂糖:塩)
<該当する代表料理>
手巻きずし
ちらしずし
いなりずし
教えてくれた人
浜本千恵さん/管理栄養士。女子栄養大学卒業後、食品会社で商品開発に携わった後、独立。メディアへのアドバイスのほか、健康講座、料理教室の講師を務める。
※女性セブン2018年12月13日号
●口の中でとろける!なめらか!魔法みたいなスイーツレシピ動画5選