福祉用具専門家が選ぶ介護に役立つダイソーの100円グッズ「食事&調理をラクに!」
物価高で生活用品も高騰するなか、介護にかかる費用もなるべく抑えたいもの。そこで福祉用具のプロによる100円ショップで見つかる「介護シーンで使える食事&調理グッズ」をご紹介。使い方のアドバイスもあわせて伺った。
100円ショップは介護に役立つグッズの宝庫
「100円ショップのアイテムには、在宅介護生活や高齢者の方の暮らしに役立つものがたくさんあるんですよ」
こう話すのは、福祉用具専門相談員の山上智史さんだ。介護現場でさまざまな福祉用具を扱ってきた経験をふまえ、100円グッズの使い方を研究してきた。
「多くの要介護の方の生活に接する中で、なるべくリーズナブルで便利に使える商品はないかと日々リサーチしています。
もちろん介護用品のカタログや介護用品売り場で販売されている商品はクオリティが高いのですが、価格が高いものも。100円ショップの商品で代用できるものもたくさんあります」(山上さん、以下同)
山上さんが長年研究を重ねた知見を、介護・福祉の専門家向けの研究大会で『100均グッズ✕介護 プチプラ介適環境づくり』として発表。便利な100円グッズを使って介護に適した環境を提案したプレゼン内容は、介護に関わるプロたちからも反響が大きかったという。
食事&調理で役立つ100円グッズ
山上さんが発信した“介適環境”づくりに役立つ100円グッズの中から、食事・調理に役立つものをピックアップしてご紹介する。
※価格表記がない商品はすべて110円。
左右に曲がるスプーン
100円ショップのベビー用品売り場には、高齢者の食事介助に使えるものが多いという。まず、注目したのが利き手に合わせて曲げられるスプーン。
「柔らかい素材で左右どちらにも曲げられるベビー用のスプーンは、片手が麻痺などで動きにくい方に便利です。使えるほうの手に合わせて曲げて使えるので、食事が少しでもラクにできるのではないかと思います。
また、シリコーン素材なら口当たりがやさしいので安心ですね」
このほか、ベビーグッズの売り場には、トレーニング箸やトレーニングコップなど、食べる・飲むことをしやすくするアイテムが豊富に揃っている。
手首を返さずに使えるスプーン
右手で使いやすいように設計されたスプーンがこちら。
「真っ直ぐではなく少し曲がっているので、手首を返さず食べることができて便利です」
おかゆカップ
炊飯器でごはんと一緒におかゆが作れるカップ。家族は常食、1人分だけおかゆということが同時にできる。温野菜を同時に作ることもでき、同梱のスプーンでつぶすと食べやすくなる。
「実はおかゆカップは、福祉用具としても同じような商品を扱っています。カップには耐熱性ガラスが使われていて、100円ショップのものとは素材が違います。福祉用具のカタログに載っている商品は、確かに品質はいいのですが、100円ショップの商品でも試してみて代用できると感じたものは、うまく取り入れるといいですね」
しょうゆスプレー
高血圧が気になる高齢者は塩分の摂り過ぎに気をつけたいもの。そこで便利なのが、スプレータイプのボトル。市販の醤油をこれに詰め替えて使えば、醤油のつけ過ぎを抑えられる。
「スプレータイプはまんべんなくかかるので、少量でも味を感じやすいですよ。塩分制限のある方におすすめです」
ノンスリップトレー 220円
コップやお皿が滑りにくいように加工されたトレー。和テイストの物や細かいラバーの突起が付いた洋風なトレーなどがある。
「ノンスリップトレーは、普通のトレーとは違い、シリコーンでコーティングされているので滑りにくい仕様になっています。
100均のトレーはたくさんありますが、滑りやすい材質など高齢者には向かない物もあります。購入する前に商品を触って確かめてみてください」
ピーラーグローブ(皮むき手袋)
手指が衰えるなどして包丁が危ないと感じる人向けなのが、皮むき手袋。右手用、左手用がある。ビニール手袋がザラザラしていて、しごくだけで野菜の皮むきなどができる。あきらめていた調理の「できない」を「できる!」に変えられるかも。
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「要介護の方の中には、手の震えや握力の低下、手指の変形などで食事を食べにくくなっている方も。100円ショップには食に関する商品がたくさんありますので、合うものが見つかるかもしれません。ぜひチェックしてみてください。
高齢者の方にとって、食べることは大切な楽しみのひとつです。100円グッズを活用して『できない』ことを『できる!』に変えて調理や食事を楽しんでいただきたいです」
教えてくれた人
福祉用具専門相談員・山上智史さん
福祉用具貸与事業所にて介護福祉士として介護現場を経験。現在は福祉用具貸与事業所「K-WORKER」と便利屋事業(住まいるサポート)の管理者を務める。福祉用具専門相談員としての現場経験をいかした「高齢者在宅の自立支援・介助者負担の軽減を目的とした介適環境づくり」を実践している。https://k-worker.co.jp/
取材・文/本上夕貴
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