認知症の母が尿で濡れた下着を布団の下に隠してしまう!困った息子が実践する消臭対策
岩手・盛岡で暮らす認知症の母を東京から通いで遠距離介護している作家でブロガーのくどひろさんこと工藤広伸さん。認知症の症状がじわじわと進行し、尿や便を失敗してしまうことも増えてきた。尿で濡れてしまった下着を布団の下に隠す母の行動に、息子がとった行動とは。梅雨時のニオイ対策と合わせて教えてもらった。
梅雨時に困るニオイ問題
梅雨シーズン到来で、洗濯物をなかなか外に干せない時期になりました。介護中のわが家では、母の尿便の失禁で下着やシーツなどを洗濯する回数が多いので、梅雨は本当に困ります。また雨が入らないよう窓を閉め切っていると、部屋にニオイがこもります。
そこで、わが家で行っている、梅雨シーズンのニオイ対策をご紹介します。
寝室の芳香剤は「無香」タイプ
まず部屋のニオイ対策ですが、ポータブルトイレを設置している母の寝室に香りが一切しない無香タイプの消臭剤を置いています。
「香害」という言葉を、聞いたことはありますか? 香りが強い洗濯洗剤や柔軟剤などの化学物質が原因で体調不良になる化学物質過敏症を「香害」と表現しますが、母がそうならないよう配慮するためです。
わたしが子どものころ、週末になると父の車で外出する機会が多くありました。どこへ行って何をしたのかは思い出せないのですが、父の車の芳香剤の強烈なニオイだけは今でも覚えています。
父はタバコを吸う人で、車内のニオイを消すためだったのでしょうか? 40年近く前の芳香剤には微香という発想がなかったのかもしれませんが、とにかく強烈なニオイで車に酔っていたのか、ニオイで酔っていたのか分からないほどでした。
母もわたしも化学物質過敏症ではないと思われますが、当時のトラウマがあるので、芳香剤のニオイで尿便のニオイをごまかすのではなく、余計な香りのしない寝室を目指しています。梅雨であまり窓を開けられなくても、寝室のニオイはそれほどありません。
洗濯物のニオイや汚れはつけ置き
次に洗濯物ですが、尿や便で汚れた母の下着のニオイは鼻にツンと来ます。
わが家では、洗濯機で洗えるものは、2018年ごろから使い続けている花王の『消臭ストロング』シリーズの液体洗剤を使って洗濯をしています。
特に汚れが激しいときは洗面器に洗剤を入れて、下着をつけ置き洗いしたあとで洗濯すれば、かなり手ごわい汚れであっても問題なく汚れもニオイも落ちてくれます。
梅雨の時期はなかなか洗濯物が乾かないので、部屋を閉め切ってエアコンの暖房で乾かすか、間に合わないときは近所のコインランドリーまで行って、乾燥機で一気に乾かすこともあります。
布団の下に濡れたパンツを隠す母
洗濯機で洗えるものは大丈夫ですが、問題は洗濯機で洗えないものが尿や便で汚れてしまったときです。
先日、朝にわたしが布団を上げたときに、マットレスの下から尿で濡れた母のパンツが出てきたことがありました。おそらく夜中に失禁した母が、恥ずかしいと思ってパンツをマットレスの下に隠し、そのまま忘れてしまったのだと思います。
母の体重や布団の重みでパンツの尿がマットレスと畳に染みていて、畳には10センチほどの丸いシミができていて、マットレスは見た目には変化はありませんでした。しかしマットレスのニオイを嗅いでみると、しっかりと尿のニオイがしました。
マットレスには布団用の香りつきを
畳のシミはクエン酸スプレーをかけて、尿のアンモニアを酸で中和してニオイを消しました。マットレスのほうは『消臭力 介護用ふとん用消臭スプレー』(エールズ)がたまたま家にあったので、使ってみたところニオイがなくなりました。
おそらく岩手に居る妹も、わたしと同じニオイの悩みにぶつかってスプレーを購入したのだと思います。ほのかにホワイトソープのニオイがするのですが、洗濯できないマットレスのニオイを消してくれるので大変助かっています。
天気が良ければ、布団と同じようにマットレスも天日干ししますが、どうしても外に干せない梅雨や真冬の時期はこのスプレーを利用しています。
失禁の記憶がどこかにある母の行動
こうしたニオイ対策のおかげで、寝室も洗濯物もそれほど不快な状態にはなっていないと思います。ただ、わたしが念入りに母の下着を洗ったり、マットレスにスプレーをしたりする姿を見て、母は自分の失禁を少しだけ思い出すようです。
母:「わたしが洗濯するから、やらなくていいわよ」
自分で失禁の処理をしたい気持ちは分かるのですが、母に任せてしまうと下洗いをしないまま洗濯機に入れて洗濯してしまうので、今度は洗濯槽の掃除までやらないといけなくなります。そのため失禁で汚れた下着の洗濯は、わたしが担当しています。
母は息子に申し訳ないと思う気持ちがあるからかもしれませんが、家中の窓を開けて部屋のニオイを逃がそうとします。しかし、梅雨に窓を開けると雨が部屋に入ってきてしまうので、わたしがこっそり窓を閉めて回っています。
介護のニオイで困っている皆さんは、ご紹介したアイテムを使ってみると悩みから解放されるかもしれません。しかし、認知症による母の行動は予測がつかないので、ニオイのようには解決しそうにありません。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(78歳・要介護3)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442。