『高嶺の花』ではありませぬ!【華道】誰でもできる「いけ方」基本のルール
現在、放送中のドラマ『高嶺の花』(日本テレビ系)で、石原さとみ(31才)が演じるのは天才華道家。ドラマを見て、“私もやってみたい”と思っても、何やら敷居が高そう。
でも、実際は基本のルールさえ押さえれば、誰でもきれいにいけられるよう、計算されているのです。
華道にセンスは必要ない。そう話すのは未生流笹岡・家元の笹岡隆甫さん。
「ルールにのっとれば、誰でも美しくいけることができます。華道で最初に学ぶのは“型”。先人が考案した設計図通りに花を組み立てれば形になります。いわば、プラモデルと同じです」(笹岡さん・以下同)
いけ方の基本は、直角二等辺三角形(以下、三角形)を作ること。その比率も決まっている。
「よく使う比率は1:√2。これは三角形の底辺と斜辺の比率ですが、ざっくり言うと7:10。上の写真のように、1本目の花を10㎝に切ったら、2本目は7㎝に切って、三角形になるように挿す。これだけでバランスが整います」
もう1つ、重要な華道の基本は“引き算”だと笹岡さんは言う。
「華道では、花をつけない樹木も“花”と呼びますが、何よりも素材が命。花の個性を引き出すため、余計な枝葉をそぎ落として花の輪郭を際立たせます。
花の命のうつろいを見届けるのが本質なので、使う花は2~3種類で充分。枝が曲がっていても、形が少々いびつでも、それが自然の姿なので、そのままを“美”ととらえるのです」
用意するのは花はさみとメジャー、剣山、そして、家にある水が入る深さの器だけ。難しく考えず、まずは始めてみませんか?
早速、身近にある器を使ったいけ花の楽しみ方をご紹介。
ワイングラスを使って
上で紹介したようにいけ花は、計算通りに切っていければ、器は自由。ワインやシャンパングラスなどを花器にすれば、一気に華やかな雰囲気に。
華道の世界ではアシンメトリー(左右非対称)も美学の1つ。「自然界に存在するものは幾何学的に整ったものばかりではありません。主役となる枝をまっすぐではなく、あえて右側に傾けることで、味わいが出ます」(笹岡さん・以下同)。
【1】ワイングラスタイプの好きなグラスを用意
水を入れたグラスの内側に、直径の長さに合わせて切った木の枝を渡す。
【2】【1】に枝を引っかける
枝先を引っかけても【1】の枝がはずれないようにしっかり固定。写真はカエデの枝。
【3】いらない葉を切り落とす
枝は4~5か所残して、しながれていたり、不要な位置にある枝をカットしていく。
【4】花でグラス内の枝を隠す
カエデの枝との違いを見せるために、花の長さは短めに。水につかる部分の葉は、あらかじめ取り除いておく。【2】の枝が見えないようにグラスの口元に花を挿す。写真の花はニチニチソウだが、小ぶりの季節の花がおすすめ。
コーヒーカップとソーサーを使って
使っていない来客用のコーヒーカップとソーサーなども立派な花器に。シンプルなデザインのものを選べば、主役である花が引き立つ。
コーヒーカップにビー玉を入れる
洋風の器には、ブルーレースフラワーやリューココリーネ、カスミソウなどの洋花を。剣山のかわりにビー玉を隙間なく敷き詰めると見た目も涼やかに。いちばん長い枝を大きく外に出すようにいけるとバランスもよくなる。
おしゃれな瓶を使って
花を1本、まっすぐにただ入れただけでは単調に見える。“いけ花は崩しの美”ともいわれるが、30~60度ほど傾斜をつけることで動きが出る。
傾ける方向は、左右どちらでもお好みで。真横ではなく、見る側から花の顔が見えるようにやや手前に傾けると奥行きが出る。ワインボトルや牛乳の空き瓶を使ってもおしゃれに仕上がる。
一輪挿しの場合、花の茎の部分を短くする時は、洗い桶などに張った水の中で斜めに切る。これで空気の侵入を防ぎ、水の吸い込みがよくなる。 傾ける方向は、左右どちらでもお好みで。真横ではなく、見る側から花の顔が見えるようにやや手前に傾けると奥行きが出る。ワインボトルや牛乳の空き瓶を使ってもおしゃれに仕上がる。
扇子を使って
小さな一輪挿しに花を飾る場合、目隠しも兼ねて扇子をその前に置けば風流に。
裏側はこんな感じに
ヒオウギの花を2本用意し、その2本を10:7になるように切り、三角形を作る。たとえば、上の花が20cmであれば、下は14cmくらいにすると見栄えがよくなる。小さな一輪挿し用花瓶がない場合は、ペットボトルでも可。
四角い箱でも花器に変身!
一般的に花器は丸いものが多いが、四角い箱でも工夫次第で、一輪挿しになる。
浅めの箱にピンポン球程度の大きさの綿を水に浸してから敷き詰め、菊の花を一輪挿す。綿で隠れる部分の葉は取り除いておく。
華道の家元制度の歴史は意外と新しい!?
現在、日本いけばな芸術協会に加盟している流派は約340。東部と西部に分かれている。
「主要流派は池坊、草月流、小原流の三大流派。時代の要請に応えてさまざまな流派が誕生し、さらに枝分かれしています。昭和に入ってからできた流派もかなりあるので、100年続けば古い方ですね。そもそも家元制度が確立されたのは江戸時代中期以降。古くは弟子のトップ、高弟が継ぐことが多かったのですが、明治以降に世襲が一般的となったようです」
西洋のフラワーアレンジメントの場合は?
日本の華道が“引き算”なのに対し、西洋のフラワーアレンジメントは“足し算”の美学。「生活に取り入れるので、多くの種類の花で空間を彩ります。自宅にある器を利用し、リボンなどで装飾すれば、華やかになります」(華造師・石井あみさん)。
●バラなどメインの花は他の花より長めにカット
メインの花を目立たせるため、カスミソウや葉などベースになる花は1〜2㎝ほど短めに切る。
●花瓶は細長いものを
口が広いタイプのグラスは、花が多くないと安定せずにスカスカな印象に。口が2~3cmの狭いものなら2~3本でも様になる。
●花が花瓶の高さの1.5倍以内になるようにいける
カスミソウやローズマリーなどベースになる花を中心に向かって斜めに挿し、次にバラなどのメインになる花をバランスよく斜めに挿す。最後にアクセントになる小さい花も斜めに挿していく。
●リボンやマスキングテープで目隠しを
透明の花瓶の中の茎がごちゃついて気になる場合は、リボンやマスキングテープを巻いて目隠しを。長めの葉をリボンのように結んで巻きつけてもいい。
●水につかる茎にある葉は切っておく
葉が水につかっていると、そこから腐敗し、水が汚れる原因に。必ずはさみで切り取っておこう。
●暑い日は氷を入れると長持ちする
気温が高いと水温も上がり、花の茎も腐りやすくなる。暑い日には、花瓶の中に氷を入れて水温を下げると長持ちする。水は1日1回、必ず替えて。
●茎の短くなった花はデザート皿などに浮かべる
水切りを繰り返し、茎が短くなった花は1cmほどの長さに切り、デザート皿などの平たい皿に水を張って浮かべると無駄にならない。
●紙袋に入れるとギフトにも◎
花瓶に挿した花はそのまま厚みのある紙袋に入れてタグをつければプレゼントに。紙袋はベージュ系など、シンプルなタイプが花を引き立てるのに適している。
撮影/菅井淳子、岡本隆史(笹岡さん分)
イラスト/尾代ゆうこ
写真提供/スパイラル・ワコールアートセンター
※女性セブン2018年9月6日号
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