台風やゲリラ豪雨―大雨から家と命を守る!緊急対策【パート1:対処法編】
今年7月に西日本を襲った豪雨は“平成最悪の水害”となった。死者は13府県で200人を超え、7000人以上の人々が避難所での生活を強いられている。埼玉県熊谷市では、7月23日に観測史上最高の41.1℃を更新し、気象庁は連日の猛暑を「一つの災害と認識している」と統括した。
私たちはこうした事態をもはや“異常”だと思ってはいけない。これからも“最悪”“最高”が更新される可能性が高い、地球の“気候変動”の中に生きていると考えておくべきだ。再び豪雨が私たちを襲う“その時”の備えについて専門家と考えた。
豪雨が続くとどんな被害が起こるのか?
まずは、大雨が降るとどのような被害が起こるかについて、知っておく必要がある。実は、山間部、河川部、都市部によって、それぞれ被害のケースは違うのだ!
場所ごとの具体的な対処法を紹介する。ぜひ家族や大切な人と情報を共有してほしい。
●水害の被害は山間部ほど要注意
水害のリスクは、住んでいる場所によって異なると、災害リスク評価研究所の松島康生さんは話す。
「大雨が降ると、山間部では土砂災害、河川部では外水氾濫、都市部では内水氾濫が起こります。なかでも命を落とす危険性が高いのは、土石流による土砂災害です」(松島さん)
土石流とは、水を含んで地盤が緩くなった土が、岩や石、木々を巻き込み、雪崩のように流れてくる現象。今回の西日本豪雨で広島市を襲った被害は、まさにこの土石流によるものだった。
「今回被害の大きかった広島県広島市安芸区付近の地盤は、花崗岩が風化した“真砂土”が主体で、これは、水を含むと軟らかくなって崩れやすいんです。1999年の集中豪雨でもこの近くで土砂崩れが、さらに2014年にも同じ場所で土石流が起き、多数の犠牲者を出していた場所なんです」(松島さん)
山の付近に住む人は、普段から、山から音がする、山肌から水が流れているなどの前兆を感じ取る訓練をしておく必要がある。そして、早めに情報を得て、大雨になる前や夜になる前に避難をすることが大切なのだ。まだ避難しなくても大丈夫という過信は絶対に捨てるべきだ。
●異常が日常に!気象変動に備える
西日本豪雨のような“異常気象”は、今後も起こる可能性が高いと災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんは分析する。
「ここ数年、時間降水量は右肩上がりで、短時間で大量の雨が降る豪雨が多発しています。これは温暖化により、海水の温度が上昇して水蒸気が大気中に増え、台風や前線が活発化するようになったのが原因といわれています」
以前は温暖化により気温が40℃を超えるのは、今よりももう少し先ともいわれていたが、そのスピードが急激に早くなった。30年ほど前は東京でも冬は池などに氷が張るのが当たり前だったが、今は逆にそれが珍しい現象に。
「気候の変動によって、今“異常”とされている豪雨や殺人的な猛暑は、今後日常的になるかもしれません」(和田さん)
そういった環境の中でも生きる術、対応する知恵を私たちは身につけていかなければならないのだ。
危険レベル4
●住宅地などの都市部:低い土地は浸水に注意
【内水氾濫(ないすいはんらん)】
通常、雨水は下水道の1つである雨水管に排水されるが、雨量がその処理能力を上回ると、川に雨水を排出できず、市街地に水が溢れてしまう。都市部は地面がコンクリートで覆われており、水が地面にしみ込まないため、短時間で大量の雨が降ると起こりやすい。
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●地下室は危険!地上へ逃げること
山間部や河川部に比べて危険は少ないが、地下に閉じ込められて出られなくなったケースもあるので要注意。地下にいる場合はすぐに地上へ。浸水想定が50cm未満であれば、建物の上層階への避難で問題ないとされている。
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危険レベル8
●川が近くにある場合:堤防の決壊、洪水が起こる!
【外水氾濫(がいすいはんらん)】
雨で河川の上流域が急に増水すると、水位が上昇する。その結果、堤防が決壊し、大量の水が市街地へと流れ込み、住宅地で浸水が起こる。家の中にも土砂や汚泥が堆積するため復旧に時間がかかる。西日本豪雨の場合、岡山県倉敷市真備町の被害がこのケースにあたる。
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●遠くの避難所より近くの建物へ避難
とにかく川から離れること。もし指定された避難所に行くために川を渡らないといけなかったり、遠い場合は、今いる場所の近くにある頑丈な建物の2階以上に避難した方が安全な可能性も。自分が今どこにいるかで避難方法を考えよう。
危険レベル10
●山が近くにある場合/土砂災害が一度起きると、命を落とす危険が高い
大量に降った雨水は地面の土へと吸収される。つまり降った雨水はそのまま、土の中に入っているとイメージするとよい。そうやって大量の雨水を含み、地盤が緩くなった場所で土砂災害は起こりやすい。土砂災害は大きく分けて、【1】がけ崩れ、【2】土石流、【3】地滑りの3つあり、今回の西日本豪雨では、広島で土石流が発生した。急傾斜にある宅地、地盤が弱い地域で被害が発生しやすい。
【がけ崩れ】
30度以上の傾斜地で起こりやすい。縦に地盤がずれて、がけが崩れ落ちるのが特徴。降雨以外にも地震などによる衝撃で崩れ落ちることもある。
【土石流】
降雨により水を大量に含んだ山腹の土石が、雪崩のように滑り落ちてくる現象。土だけでなく岩や石、木々なども巻き込まれて流れてくるため、土砂災害の中ではもっとも危険。死傷者が出る確率も高い。
【地滑り】
雨が地層内部にしみ込んで、表層の地盤面が滑り落ちる現象。丘陵地を削ったり埋めたりして、なだらかな斜面に宅地開発したような、地盤の弱い場所で起こりやすい
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●避難方法1:山の斜面から離れた部屋へ
自宅の裏が傾斜地の場合、傾斜からできるだけ遠い部屋を寝室にするなどの工夫を。土砂が崩れてきたら埋まりやすい1階よりも、2階に避難するとよい。
●避難方法2:山を下らず左右に避難を
逃げる時、山を下るのはNG。土石流が上から流れてくるので、すぐに追いつかれてしまう。それよりも、山の斜面に対して、左右に逃げた方が助かる可能性は高い。
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※対策編は、8月30日(木)に公開予定です。
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