認知症の祖母、大阪北部地震発生で判明した気になる症状とは
介護中、災害などが起きたときの不安はより大きいものだ。
要介護4の祖母を在宅で介護しているライター・奥村シンゴ氏は、先日、大阪北部で発生した大きな地震を体験した。地震発生当時、ショートステイ中だった祖母も奥田氏も、幸いケガなどはなかったとのことだが、この地震では、認知症の祖母に予想外の反応があったという。
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6月に、大阪北部を中心とした最大震度6弱の地震が発生しました。
私が住む地域は震度5弱で、自宅ではあらゆる物が落ちて散乱したり、ガスが2日間利用できなかったりと被害を受けました。
私は要介護4の認知症祖母を在宅で介護して6年目になりますが、このたびの地震では、祖母の認知症の進行具合をはっきり確認できる出来事があったのです。
地震発生時はショートステイ先にいた祖母
祖母は地震発生時には、ショートステイ先にいました。
地震は、月曜日の朝に起きたのですが、その前の土曜・日曜から2泊し、月曜日の夕方頃に帰宅予定でした。
祖母の安否が心配になり、地震直後に、ショートステイ先に連絡したものの、全然つながりません。
携帯の回線が混雑しているのだろうと思い、少し時間をおきながら、かけ続けると地震発生から1時間後位経ったときにようやく連絡がつきました。
「祖母は不安定になって、泣いたり暴れたりしていませんか?施設の様子はいかがでしたか?」と聞くと、ステイ先の職員は「おばあさま少し不安がっておられましたが、大丈夫ですよ。落ち着いておられます」との答え。
落ち着いているというのは、正直、意外な感じでした。
ショートステイの施設はボイラーが止まり、水道が出なくなって、お風呂が使用できなくなったそうです。利用者の中には、混乱して外に出たり、泣き出す人が若干名いたようでしたが、それほど大きな混乱はなかったといいます。
地震が起きたことを忘れていた
祖母が帰宅してきたときに地震のことを聞いてみたところ、「あらっ?地震なんてあったの?私、会社(ショートステイのこと)にいたからわからなかったわ」と答えるのです。
施設の人の電話での地震直後しばらくは多少不安がっていた様子だったという話を考えると、地震発生時は、地震が起きたことを理解していたものの、数時間で、地震があったことを忘れてしまったようです。
そして、祖母は「あらっ、この部屋お金いっぱい落ちてるよどうしたの?」と貯金箱が落ち、1円玉や5円玉が散乱している部屋を見て、昔からきれい好きなので、それらをひたすら拾い片づけようとしました。
今日の地震は忘れ、50年以上前の地震を思い出す
さらに祖母は「昔、富山で地震があってね、みんなで手をつないで逃げたのよ」と疎開先の富山での地震で被災した頃を思い出し、話し始めたのです。
祖母は現在86才です。富山にいたのは第2次世界大戦直後の数年間なので、おそらく昭和20年代の記憶だと思われます。
部屋に散乱したお金を拾った後、座り、お茶を飲みながら急に疎開先の富山での昔話を急に思い出したようです。
いわゆる認知症の「短期記憶は忘れて長期記憶は覚えている」という典型的な症状が出ました。
一般的に、加齢による物忘れの場合、自覚があったり、ヒントがあれば思い出したり、時間や場所を間違えたりするのに対し、認知症による物忘れは、新しい記憶を作る機能が低下するためと言われていて、物忘れの自覚自体がなかったり、ヒントがあっても思い出せないという違いがあります。
4年前に地震が起きたときの祖母は…
今から4年程前の2013年4月13日に淡路島を中心に最大震度6弱の大きな地震が起きた際、私と祖母が住んでいる地域でも震度5弱の揺れが発生しました。
その時の祖母はまだ要介護2で、現在より記憶力は鮮明、一人で遠方に出かけるぐらいの状態でした。地震発生直後1週間弱は「怖かったね。あんな地震は二度と起きてほしくないよね」と祖母は、私やデイサービスの職員に話していたのを覚えています。
つまり、「地震」という体験で比べてみると、2013年の時は、短期記憶が鮮明だったのに、今回は地震があったことをすぐに忘れてしまったということ。
ここ半年程、徘徊症状が現れたり、トイレで便器とは反対方向に用を足したり、夜間に体が硬直して、動きにくく、オムツを替える際に一苦労したりなどの頻度が増えてきていると感じていたのですが、この度の地震で、皮肉にもはっきりと認知症の進行具合を実感してしまう結果となったのです。
文/奥村シンゴ
プロフィール:大学卒業後、東証一部放送・通信業界で営業や顧客対応などの業務を経験し、6年前から祖母の認知症在宅介護を経験中。在宅介護と並行してフリーライターとして活動し、テレビ、介護、メディア、阪神地区のテーマを中心に各種ネットメディアに寄稿。他時折テレビ・ネット番組や企業のリサーチ、マーケティングなども担当している。
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