ブームの「ヨガ」は健康寿命を支える 医学的効果にも期待
やせる、若返る、体の不調が改善する…。長年ヨガを続けている人は、さまざまな恩恵を受けていた。
ただ、体にイイとわかっていても、続けられない…。そんなあなたのため、ヨガの達人に、続けられる理由や体の変化についてトコトン聞きました。
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ヨガは勝ち負けがない
学生時代のソフトボールに始まり、運動が大好きでずっと続けてきたと言うのは、イーク表参道副院長で産婦人科医を務める高尾美穂さんだ。
高尾さんがヨガと出合ったのは17年前、サイクリング中に転倒し、足首を痛めたことがきっかけだった。
「早く治すために中国鍼や酸素カプセルなど、いろいろな治療を試しました。その中の1つがヨガでした。運動神経には自信があったのに、初心者クラスでも思っていたよりできない…。ショックでした」(高尾さん、以下「」は同)
しかし、高尾さんが入ったクラスは、たまたま「アシュタンガヨガ」という、ヨガの中でも最もハードでポーズの難易度の高いものだった。“できないからこそ、できるようになりたい”。それが、高尾さんにとって、ヨガを続ける原動力になったという。
ヨガにはいろいろな種類があるが、スポーツが得意な人なら、アシュタンガヨガはおすすめといえる。
「ヨガは勝ち負けがないかわりに、ゴールもない。だから、いつまでも練習生でいられるんです。それに、毎日の体の変化も敏感に感じ取れるようになります。たとえば、前屈1つとってみても、日によって感じ方がまったく違う。ヨガを行う時間が、自分の体と向き合う時間になっています」
NK細胞を増やす、免疫を上げる…医学的にも認められつつある
ヨガを始めたおかげで、医師としての考え方も自然と変わっていった。
「手術や投薬だけでなく、患者さんがよりよい一日を過ごすための手立てはほかにもある、と思うようになりました。
たとえば、末期の卵巣がんの患者さんで、下肢にむくみの出るリンパ浮腫の状態がひどい時、血流を促すような指導をしてみると、むくみが楽になったとおっしゃるんです」
これで寿命が延びるわけではないが、患者が少しでも幸せに過ごしてくれたら、患者を支える家族にとっても豊かな時間が増えるという。
しかもヨガは、“やれば楽になる気がする”だけではなく、医学的にもその効果が認められつつあるのだ。
「アメリカでは、2000年頃から、ヨガが体に与えるさまざまな効果が医学的に解明されています。たとえば、がん細胞を抑制するナチュラルキラー細胞が増える、免疫機能が改善するなどです」
さらに、幸福感にも影響を与えるといった論文も発表され、今後もヨガに関する研究は増えるとされている。
運動神経の良さは関係なし。何才からでも始められるヨガ
日本人女性の平均寿命は今後90代になるといわれている。今の40代はあと50年生きないといけなくなるのだ。残りの人生をただ生きるのではなく、自分の足で歩き、自分の歯で食事がとれるなど、健康で長生きするためには運動が不可欠だ。
しかし、20代以降で運動習慣のある女性は1割程度。そんな運動習慣のない人にほど、ヨガは向いていると高尾さんは言う。
「ヨガに運動神経の良さは必要なく、誰でも何才からでも始められます。しかも続ければ、体が柔らかくなって可動域が広がり、けがをすることなく筋肉が維持できますし、骨も強く保てます。
また、息をしっかり吐くことで、副交感神経が優位になり、リラックスしやすい体質になる。長生きしないといけない現代人に必要な要素が詰まった運動なんです」
体を内側からも外側からもサポートしてくれるヨガを続ければ、元気に長生きでき、健康寿命を支えてくれる。一石二鳥の運動といえる。
高尾美穂
女性のための総合ヘルスクリニック イーク表参道副院長。産婦人科専門医、婦人科スポーツドクター、文科省・国立スポーツ科学センター女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバー
※初出:女性セブン
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