うっかりが増えたと気になる人に“アミノ酸”がいい理由 最新研究でわかったボケない食生活
65才以上の高齢者の7人に1人は認知症という時代※1。高齢化が進みもはや国民病ともいえる認知症だが、特定のアミノ酸を摂ることで認知機能の改善効果が期待できるという最新の研究結果が発表された。そもそもアミノ酸とはどんなものなのか、認知機能とどう関係しているのか、専門家の意見をまとめた。
認知機能の低下は早い段階から予防が重要
「若い頃ならすぐ覚えられたことがなかなか覚えられない」「昨日何を食べたかすぐに思い出せない」。もしかして認知症ではないか…。年齢を重ねるにつれそんな不安を感じることはないだろうか?
※1平成29年版高齢社会白書(概要版)https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html
「将来不安に思う症状」についての調査※に2よると、「認知・記憶力の低下(物忘れ・うっかりミス)」が1位となっており、認知症への不安を抱える人は多い。
■将来不安に思う症状
1位…認知・記憶力の低下(物忘れ・うっかりミス) 50.9%
1位…足腰の衰え 50.9%
3位…体力の低下 49.1%
4位…視力の低下 38.4%
※2「認知症予防の実態と商品ニーズ 2020」(n=50~70代男女1万人、TPCマーケティングリサーチ調べ)https://www.dreamnews.jp/press/0000226560/
20、30年かけてじわじわと進行
アミノ酸の認知機能にまつわる最新の研究について発表会で解説した国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター理事長の荒井秀典さんによると、
「認知機能は年を取ってから急に低下するものではなく、20~30年かけて脳内に変化が起きています。
認知機能の低下には、遺伝や日常生活、食事や運動、睡眠などさまざまな要因がある中で、約40%は食事で改善できるという調査報告もあるんです。私たちの研究では、食事の多様性があるほどリスクが低減することがわかっています」
アミノ酸と食事の重要性
「たんぱく質の摂取量が多いと認知機能低下のリスクが低くなるという調査結果は世界中で報告されていますが、たんぱく質を構成する要素であるアミノ酸についてはまだほとんど明らかになっていませんでした」
そこで認知機能とアミノ酸に関しての大規模な調査を実施。認知機能が正常な60才以上の427名について、食事内容を元に、たんぱく質を構成するアミノ酸のうち、19種の1日の平均摂取量を算出。追跡調査により8年後の認知機能低下リスクについて評価した。
「認知機能の維持には、たんぱく質の摂取量だけではなく、特定のアミノ酸の摂取が重要だという結果が得られました」
アミノ酸には、体内で自らつくり出せる“非必須アミノ酸”、つくれない“必須アミノ酸”がある。つくれないものは、食べ物やサプリメントなどから摂取する必要がある。
肉や魚などを食べると、体内でそれらのたんぱく質が分解され、アミノ酸となって吸収される。それが血液によって全身に運ばれ、アミノ酸が再びつながってたんぱく質となり、脳や筋肉など人の体がつくられる。
認知機能維持に重要な7つの必須アミノ酸とは
このように人体に欠かすことができないアミノ酸だが、脳の機能にどのような影響をもたらすのか? 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構・樋口真人さんによると、
「アミノ酸は脳自体を構成する成分でもあり、神経細胞の働きを支えています。また、神経伝達物質にもアミノ酸が含まれていて、脳の機能を正常に保つ働きもあります。
アミノ酸が不足することで、脳が正常に機能しにくくなり、認知機能が低下するリスクが高まるというわけです。
また、加齢によって脳にゴミとして蓄積されるたんぱく質が炎症を起こし、認知機能低下などの要因となることもわかっています。
これらの脳の働きにかかわっているのが7種の必須アミノ酸なんです。
脳の神経伝達にかかわる7種※3の必須アミノ酸を配合した『Amino LP7』をマウスに投与したところ、学習・記憶力の低下、脳の萎縮、脳に炎症を起こす物質を抑制する効果が認められました。
また、人への臨床試験を実施したところ、7種必須アミノ酸『Amino LP7』を1日6g摂取した人は、摂取していないプラセボ群と比べ、注意機能や認知的柔軟性、精神的健康状態において改善が見られました」
※3ロイシン、ヒスチジン(塩酸塩として)、フェニルアラニン、バリン、リジン(塩酸塩として)、トリプトファン、イソロイシン
こういった最新の研究結果から、認知機能維持にアミノ酸の摂取が重要だということがわかった。早いうちからアミノ酸が含まれる食材を意識して摂ったり、サプリメントなどを利用したりして対策に取り組みたい。
最新研究でも明らかになった脳の認知機能の一部の維持をサポートする7種の必須アミノ酸を配合した機能性表示食品『脳活セブンアミノ』も登場した。
また、普段の食事で心がけるといいのは、アミノ酸の多い食材を摂ること。なかでも体に大切なアミノ酸を多く含む食品は、「アミノ酸スコア」が参考になる。
管理栄養士の清水加奈子さんによると、
「体の中でたんぱく質を作るのに不可欠な必須アミノ酸のバランスを示す指標がアミノ酸スコアです。このスコアが高い食品を意識して摂るといいでしょう。
アミノ酸スコアが100(満点)の食品は、動物性には、鶏卵、豚肉や鮭、牛乳など。
植物性だと玄米があります。
この指標を参考にしてアミノ酸スコアの高い食品をバランスよく食べることで、多くの栄養を摂取でき、健康維持に役立ちます」
■アミノ酸スコア100の食品例
牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、いわし、さけ、まぐろ、あじ、牛乳、玄米など。
※参考/日本食品標準成分表2020年版(八訂)アミノ酸成分表編:文部科学省
教えてくれた人
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター理事長・荒井秀典さん、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構・樋口真人さん、管理栄養士・清水加奈子さん
取材・文/西谷友里加
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