暮らし

犬の認知症を見分ける15の症状|夜鳴き、徘徊、トイレの失敗…

 犬が同じ場所をウロウロする、壁に向かって吠える、食事を食べたのに何度も要求する…もしかすると、認知症のサインかも。人間と同様、犬も高齢化が進み、認知症を発症するケースが増えている。認知症が疑われる犬の行動とは? ペットの老いとの向き合い方について、獣医師に話を聞いた。

犬の寿命が延びて認知症が増えている

 世界最大規模のペット統計データ集『アニコム 家庭どうぶつ白書』※によると、犬の平均寿命は10年前より+0.7歳高くなっており、この10年でペットの寿命は飛躍的に延びているのだ。
 これは人間の年齢に換算すると、約4~5歳分延びたということになる。

※参考:『アニコム 家庭どうぶつ白書2019』(アニコム ホールディングス調べ)
https://www.anicom-page.com/hakusho/

「昔は、病気や感染症などにより、寿命を全うする前に亡くなってしまうケースが多かったのですが、今は獣医療技術の進歩やペットフードの改良などにより、ペットも長生きになっています」

 こう話すのは、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC顧問の獣医師・佐藤貴紀さんだ。

 犬の平均寿命が延び、長生きになったのは喜ばしいことだが、新たな問題も起きている。高齢化が進んだことで、認知症を発症する犬が増えているのだ。

 佐藤さんによると、犬が認知症を発症する年齢は、犬種差や個体差はあるが、8歳ごろ(人間の年齢で48歳ぐらい)から現れるケースが多いとの研究報告があるという。

犬の認知症が疑われる主な症状は?

 犬の認知症の原因は、まだはっきりとはわかっていないが、加齢により脳の働きが低下することや、神経伝達物質の減少などが関係しているのではといわれている。

 認知症が疑われる犬に見られる行動は以下の通り。

●犬の認知症が疑われる行動

1.隙間に挟まる
2.物にぶつかる
3.飼い主の呼びかけに反応しない
4.反応が鈍い
5.ぼんやりすることが多い
6.依然と性格が変わった
7.色んなことに興味がなくなった
8.昼夜が逆転し夜中に鳴く
9.落ち着きがない
10.トイレの場所を間違える
11.集中力が減った
12.意味なくウロウロ徘徊する
13.円を描くように歩く
14.後ろに下がれず隅から出られない
15.不安そうにしている

 他にも、攻撃行動が抑制できなくなり、急に飼い主に噛みつくなどの変化が見られることもある。

 ただし、これらの行動をしたらからといって、必ずしも認知症というわけではない。

「加齢による身体的な衰えや、他の病気が原因のこともあります。なので、今までにない行動が目につくようになったら、まずはかかりつけ医に相談や検査をすることをおすすめします」(佐藤さん、以下同)

 最近は、認知症外来を行っている動物病院もある。

犬の認知症の治療法は?

 認知症は徐々に進行していく病気だが、治療により進行を抑えられると佐藤先生は話す。

「認知症は手術で治るような病気ではありません。大切なのは、脳細胞や血管の酸化を防ぐ抗酸化作用の高い成分や、脳の血流を改善する成分などを摂ること。症状の程度によりますが、治療では、それらの成分を含んだフードやサプリメント、医薬品などを取り入れることが多いです」

 ただし、これらはあくまで進行を抑えるのが目的であり、低下してしまった脳の修復には限界があり、発症前の状態に戻るのは難しいという。

認知症になった犬との接し方

 もし愛犬が認知症と診断された場合、日常生活で気を付けた方がいいことは?

「認知症になると、今まで出来ていたことが出来なくなることが多くなります。犬自身も、自分の変化に戸惑い、不安を感じています。ストレスが増すと、免疫力が低下し病気しやすくなってしまうので、粗相しても強く怒らないであげてください」

 最近は犬用のおむつや、ぶつかっても痛くない柔らかい素材のサークルなど老犬用の介護用品も増えているので、それらを活用するのも手だ。

「また、生活の中で適度に刺激を与えることも大事です。散歩や一緒に遊ぶことで、脳が刺激されるので、積極的にコミュニケーションをとるよう心がけてください」

 犬の認知症については、まだまだ不明な点が多いが、少しずつ原因や治療法が分かってきた。老いは自然現象であり、必ずやってくる。最後まで愛情と責任をもって接しよう。

犬の認知症の対策【まとめ】

●認知症の症状が疑わしいときは受診を
●散歩に行ったり遊んだりなるべく刺激を与える
●専用のフードやサプリ、薬で進行を抑えることも
●粗相をしても強く怒らない
●ぶつかっても安全なサークルなど老犬用のグッズを使う

教えてくれた人/獣医師・佐藤貴紀さん

獣医師の佐藤貴紀さん

麻布大学獣医学部卒業後、勤務医を経て独立し白金高輪動物病院を設立。院長として勤務後、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長を務める。現在、目黒アニマルメディカルセンター顧問https://mamec.wolves-tokyo.com/。専門は「循環器」。全国に100人しかいない「獣医循環器学会認定医」。「SuperDoctors 〜名医のいる相談室〜」(https://www.youtube.com/channel/UCUxW…にて配信中。

取材・文/鳥居優美

●ペットと暮らせるなど“自分らしく生きる”ための高齢者ホーム最新事情|専門家が太鼓判

●猫の熱中症の予防と対策|猫が肉球に汗をかいていたら危険!?

●紫外線による犬の病気|愛犬の白内障で治療費150万!?【実体験】

ニックネーム可
入力されたメールアドレスは公開されません
編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。

最近のコメント

シリーズ

介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
神田神保町に誕生した話題の介護付有料老人ホームをレポート!24時間看護、安心の防災設備、熟練の料理長による絶品料理ほか満載の魅力をお伝えします。
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
老人ホーム(高齢者施設)の種類や特徴、それぞれの施設の違いや選び方を解説。親や家族、自分にぴったりな施設探しをするヒント集。
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
話題の高齢者施設や評判の高い老人ホームなど、高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップ。実際に訪問して詳細にレポートします。
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
介護食の基本や見た目も味もおいしいレシピ、市販の介護食を食べ比べ、味や見た目を紹介。新商品や便利グッズ情報、介護食の作り方を解説する動画も。
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の困りごとの一つに“ニオイ”があります。デリケートなことだからこそ、ちゃんと向き合い、軽減したいものです。ニオイに関するアンケート調査や、専門家による解決法、対処法をご紹介します。
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
話題のタレントなどの芸能人や著名人にまつわる介護や親の看取りなどの話題。介護の仕事をするタレントインタビューなど、旬の話題をピックアップ。
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護保険制度の基本からサービスの利用方法を詳細解説。介護が始まったとき、知っておきたい基本的な情報をお届けします。
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
数々ある介護のお悩み。中でも「排泄」にまつわることは、デリケートなことなだけに、ケアする人も、ケアを受ける人も、その悩みが深いでしょう。 ケアのヒントを専門家に取材しました。また、排泄ケアに役立つ最新グッズをご紹介します!