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【小田急線】注目のサービス付き高齢者向け住宅と住宅型有料老人ホーム【まとめ】

 評判の高い高齢者施設や老人ホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。

 新宿から小田原までを結ぶ小田急小田原線。全部で47駅あり、通勤や通学、レジャーの足として多くの人に利用されている。箱根などに行くロマンスカーが走っているのもこちらの路線。沿線には経堂駅や成城学園前駅、町田駅など成熟した住宅地があり、年々高齢化が進んでいるところも多い。そこで今回は、小田急小田原線のサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)と住宅型有料老人ホームを紹介する。

小田急沿線で「住まい」にこだわるサービス付き高齢者向け住宅「レオーダ経堂」

 小田急グループは「レオーダ」という名前で小田急線沿線にサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を運営している。神奈川県内では藤沢と新百合ヶ丘、東京都内は成城、そして今回訪れた経堂だ。経堂駅周辺にはショッピングモール「経堂コルティ」やスーパーマーケットの「Odakyu OX」、ドラッグストアなど生活に役立つ店が多くあり、住みやすさは申し分ない。

 レオーダは「relationship=人と人との結びつき」「realize=実現する」「residence=住まい」を意味する3つの「re」に「odakyu=小田急」と「order made=オーダーメード」をかけ合わせて作った言葉。大切な家族、友人といつまでもつながっていることができる場所を小田急沿線に住んでいる人々に提供したいという想いが込められているという。

 レオーダシリーズはいずれも駅から徒歩圏内で利便性は高い。そして何よりも地域の状況をよく知る小田急が手がけているため、沿線住民の期待も高いようだ。レオーダが掲げるコンセプトは5つ。「施設ではなく『住まい』の提供」「小田急グループの総合力を活用したサービスメニューの提案」「魅力あるイベント」「手作り料理へのこだわり」、そして「要介護状態になっても生活を継続できる住宅」だ。

 設備や運営方針にも反映されている「住まい」というコンセプト。全室25平方メートル以上で、各部屋にトイレ、洗面、キッチン、お風呂、洗濯機置き場が完備。運営面では、門限や外出、外泊に制限はなく、もちろん家族の来訪や宿泊も自由。自宅で過ごしていた時と同じように、プライバシーの確保された生活をおくることができるという。

 「要介護状態になっても生活を継続できる住宅」というコンセプトにも注目したい。レオーダ経堂は介護が必要になっても住み続けることができるという。共用フロア、各居室は段差のないバリアフリー構造になっているほか、ストレッチャーが入る13人乗りの大型エレベーターを採用し、万が一の際にも迅速な対応ができるようにしているそうだ。さらに、スプリンクラーやAED(自動体外除細動器)、災害時の備蓄など、小田急電鉄の看板にふさわしい堅実な備えがされている。

 実際に介護が必要になれば、連携している介護事業者から必要なサービスを選択して受けられるそうだ。また、医療についても地域の在宅医療診療所や医療機関と連携。コンシェルジュがつなぎ役になってくれるので、土地勘のない入居者が心身の状況に適した医療機関を探す際もスムーズに必要な医療を受けることができる。介護に初めて直面する場合でも、親身に相談にのってくれるのは心強い。

 小田急沿線に長年住み、日常的に電車を利用している住民たちの小田急への信頼度は高い。そうした沿線住民の信頼や期待に応えようという姿勢を強く感じた。

→小田急沿線で「住まい」にこだわるサービス付き高齢者向け住宅<前編>
→小田急沿線で「住まい」にこだわるサービス付き高齢者向け住宅<後編>

終末期の高齢者が快適な最期を過ごせる住宅型有料老人ホーム「成城ガーデン」

 小田急小田原線「成城学園前」駅と「祖師ヶ谷大蔵」駅から徒歩圏内にある「成城ガーデン」。株式会社ケアギバー・ジャパンが運営する成城ガーデンが目指しているのは、“医療連携型”有料老人ホームだという。ここには看護師が24時間常駐し、一人ひとりの心身の状況に合わせた医療処置が行われている。自宅や一般的な介護施設では対応が難しい、医療依存度が高い高齢者のみを受け入れ、専門的な研修を経た看護師、介護士がその対応にあたっているそうだ。

 成城ガーデンが受け入れているのは、医療依存度の高い終末期の高齢者。ホスピスのような役割を目指しているという。看護処置が24時間可能なので、様々な状況の人を受け入れ可能だそうだ。少し長くなるが、あえて列挙してみたい。胃ろう、鼻腔・経管栄養、人工肛門・ストーマ、在宅酸素療法、人工呼吸器、褥瘡・床ずれ、たん吸引、脳卒中・脳梗塞・クモ膜下出血、心臓病・心筋梗塞・狭心症、がん・末期がん、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症・ピック病。この他にも対応可能な疾病や医療処置が多くあるそうなので、受け入れ先を探している人は相談してみるのも良さそうだ。

 こちらは最期の時を過ごすための場所なので、病院のように積極的な治療やリハビリをして回復を目指すわけではないという。しかし、結果的に病院にいた時よりも元気になることがあり、家族がビックリすることもあるそうだ。

 成城ガーデンでは、入居者に終末期だからこそ自分らしい暮らしをしてもらいたいと願い、食事と住環境にこだわっているという。管理栄養士による献立をベースに、選べるリクエストメニューを提供。嚥下機能に応じて、刻み食やミキサー食、とろみ調整などの特別介護食も選べるそうだ。さらに、予約制で家族や友人との会食コースまで用意。心に残る料理を作るのは、ホテルニューオータニや東京ドームホテルで腕を磨き、医療系給食施設の料理長や創作イタリアンレストランを立ち上げた経験を持つシェフだ。

 もう一つのこだわりである住環境にも注目したい。まるでホテルのような内装になっていて、終末期を過ごすための場所だということを思わず忘れてしまう。ガーデンラウンジには印象的なシャンデリアがかかり、中庭を眺めながらゆったりと過ごすことのできる。

 共用部分のこだわりは他にもある。吹き抜けになっている階段にはデザインを重視した照明を配置。元々あった建物をこだわりに合わせて全面改装しているので、入居者は快適に過ごせ、しかも費用を押さえることにも成功しているそうだ。

 居室は全室南向きの3タイプ。家具家電つきなので、身の回りのものを用意するだけですぐに入居が可能だという。3タイプとも部屋の広さは同じ。デスクやテーブル、チェアの有無が違うので、希望に合わせて選びたい。

 家族が泊まるためのゲストルームも用意されているので、気軽に訪問して一緒の時間を過ごすことができる。食事をゆっくりと楽しみ、そのまま泊まる家族も多いそうだ。

 いかがだっただろうか。医療依存度が高い高齢者を専門的に受け入れている成城ガーデン。最期の時を本人、そして家族が納得して過ごすための“医”・食・住がここには揃っている。自分や家族がそのような状態になったときのために、このような頼りになる場所が小田急小田原線沿線にはある。

→医療依存度の高い高齢者が最期まで過ごす医療連携型の有料老人ホーム<前編>
→終末期の高齢者が快適な最期を過ごせる住宅型有料老人ホーム<後編>

多様なニーズに対応したサービス付き高齢者向け住宅「ココファン柿生」

 小田急小田原線「柿生」駅から徒歩11分のところにあるサ高住「ココファン柿生」。こちらを運営しているのは株式会社「学研ココファン」だ。ココファン柿生は生活スタイルや身体の状態に合わせて選べる4タイプの部屋を用意。1人暮らしはもちろん、夫婦で入居したい高齢者のニーズにも応えているという。

 高齢者向けの介護施設・住居を探し始め、費用を見てため息をついた人も多いのではないだろうか。高齢者住宅市場に不足している、中間所得層に向けた「年金の範囲内で入居費用を払うことができる」住宅として誕生したココファンシリーズ。入居一時金はなく、家賃2ヶ月分の敷金と月々の支払いで住むことができる設定にしているという。

 安かろう悪かろうではなく、ケアスタッフが24時間・365日常駐していて、夜中に具合が悪くなったり、転倒してしまった場合の緊急時対応、1日数回の定期的な安否・状況確認をしてくれるという。安心感のある体制は、入居している本人はもちろん、離れて暮らす家族にとっても好評のようだ。

 ココファン柿生には、訪問介護の「学研ココファン柿生ヘルパーセンター」とデイサービスの「デイサービス ココファン柿生」が併設されている。デイサービスでは、東北大学の川島隆太教授との共同研究に基づき、学研が開発したオリジナルの脳活性プログラム「脳元気タイム」を提供しているという。100種類ほどある「脳活性度」を高くするアクティビティの中から、デイサービスに適したものを選んで実践しているそうだ。もちろん、サ高住の入居者も利用可能だ。

 団塊の世代が75歳以上となる2025年を目処に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を国は実現しようとしている。地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に合わせて作っていくことが求められている。

 学研は今後、「学研版地域包括ケアシステム」を推進していこうとしているそうだ。サ高住を拠点として、高齢者だけではなく、地域の子育て世代など多世代が安心して暮らせる街づくりを目指しているという。

 サ高住は自由な生活と安心感がセットになっており、入居一時金がないので比較的気軽に移り住めるという利点もある。ココファン柿生のように、サ高住は今後、高齢者だけではなく、誰もが安心して住める街づくりの拠点になっていく可能性もありそうだ。

→多様なニーズに対応したサービス付き高齢者向け住宅<前編>
→親子で満足度が高いサービス付き高齢者向け住宅<後編>

 小田急グループは最初に紹介したレオーダ経堂以外に3つのサ高住を運営するなど、高齢化を見据えた経営を行っている。都心へのアクセスもよく、観光地にも足を伸ばしやすい小田急小田原線沿線で終の住処を探してみるのも良さそうだ。

撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ

※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。

→このシリーズのバックナンバーを見る

●特養に早く入所する裏ワザ|判定会議で優先順位を上げる方法や狙い目

●施設内「感染リスク」の高い危ない老人ホームの見分け方

●新型コロナで要介護認定はどうなる? 要介護申請の流れをおさらい

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