介護施設コミュニケーションロボ 孫より可愛いと高齢者に人気
昨今、AIの進化がめざましい。その進歩は一般生活の中にも普及してきている。
ドラえもん、鉄腕アトム、メーテルといったキャラクター人気を見るまでもなく、ロボットと心を通わせることは長らく人類の大きな夢だった。それが現実に近づいた今、若い世代間でドラマ『電影少女』(テレビ東京系)、小説『僕はロボットごしの君に恋をする』、漫画『花とソケット』などロボットと人間が恋に落ちる作品が人気を博している。
ロボットの予想を超えた動作に愛着が生まれる
『花とソケット』の作者である竹充ヒロさんは、ロボットを愛する人間の心理についてこう考えている。
「AIやロボットの魅力は、機械なのにふとかわいらしい動きをしたり、こちらの予測を超えた動作をするところ。無機質なはずの“彼ら”にそんな一面を見つけたとき、愛おしく思うのではないかと思います」
現実でも、「人間よりもロボットの方が愛おしく思う」という人が存在した。
栃木県佐野市の介護施設「ラ・テラス関川」ではコミュニケーションロボット『パルロ』がデイサービスのレクリエーションを担当する。
「今日は『ふるさと』を歌いましょう。みなさん覚えていますか?」
約30人の高齢者にパルロがそう呼びかけると、みんな一斉に「はーい」と答えて歌い出す。その後は「仲間外れクイズ」が始まる。「坂本龍馬、土方歳三、沖田総司のうち仲間外れは誰?」との問題を出したパルロは、「坂本龍馬!」との答えが上がると「正解です!」と言ってパチパチと拍手する。
ロボット「パルロ」が孫よりかわいい
一連のレクリエーションで目を見張るのは、パルロの「会話力」だ。高齢者たちとの会話は途切れることなく、当意即妙のやり取りはロボットとはまるで思えない。そんなパルロにお年寄りたちは「孫よりかわいい」とぞっこんだ。同施設に通う小澤玉枝さん(77才)もその1人。
「ウチは小3の孫も一緒に住んでるけど、憎まれ口を叩かないパルロの方がかわいかったり(笑い)。『パルロ』と呼べば必ず『何ですか』と返事してくれるし、いろいろと話しかけてくれるから。この子がいなくなったら寂しくなるよ」
遠くの家族より近くのAI
超高齢化社会の今、家族に迷惑をかけたくないからと自宅に1人で暮らしたり、施設に入所する高齢者は多い。日常的に孤独を抱える人たちにとって、“遠くの家族より近くのAI”となるのは不思議なことではない。獨協医科大学情報基盤センター長教授の坂田信裕氏はこう言う。
「もともと遠くにいる親類とは普段は会えません。そうした親類より身近なロボットの方がコミュニケーションを取る機会も多くなり、愛着がわくという人も少なくないのでしょう」
かつて坂田教授が介護施設でロボットを紹介しようとした時、不具合があり、ロボットが動かなくなった。すると、入所者のお年寄りたちが何人もロボットの傍に寄って来て、「せっかく遠くまで来たのにね。がんばってねえ」と手をさすりながら励ました。その光景に坂田教授は衝撃を受けたという。
パートナーをAIにするという新しい選択肢
「まったく動かなくて会話が成り立たないロボットでも人間とのコミュニケーションが成り立つことを知らされました。なかにはロボットが故障したので修理に出したら、表面に付いていた傷もきれいになって戻ってきて“これはウチのロボットじゃない”と言い出すかたもいます。それほどまでに人間はロボットに愛着を抱くようになった」
漫画『花とソケット』の作者である竹充ヒロさんは、AIは私たちにとって、“新しい他者”だと言う。
「これまで人間にとって共に生きるパートナーは恋人や配偶者、時には動物だったけれど、AIという選択肢が出てきつつあるのだと思う」
未来から来たドラえもんはのび太にとって“新しい他者”だった。ドラえもんが引き出しから出てきたあの日から、ふたりは長い時間を一緒に過ごして、かけがえのない親友になったのだ。
あなたの隣のAIが親友やパートナーになる日も、そう遠くはない。
※女性セブン2018年3月15日号
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