【千葉県流山市・柏市・浦安市】注目の住宅型有料老人ホームとサ高住【まとめ】
評判の高い高齢者施設や老人ホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
東京のベッドタウンとして発展してきた千葉県の東葛地域と湾岸地域。いずれも交通の便がよく、子育て世代にも人気の地域となっているが、地域全体では高齢者人口の増加が予想されている。そこで今回は、流山市の住宅型有料老人ホーム、浦安市と柏市のサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)を紹介する。
介護付きとサ高住のいいとこどり!住宅型有料老人ホーム「グッドタイム リビング流山 弐番舘-おおたかの森-」
つくばエクスプレス、東武野田線(東武アーバンパークライン)流山おおたかの森駅の周辺は近年、住環境が整備され、移り住む人が増えている。駅直結のショッピングセンター「流山おおたかの森S・C」は、百貨店の髙島屋系列の企業が運営。近隣には緑あふれる広い公園もあり、駅周辺は家族連れや近所の人で賑わっている。この地に2016年にできたのが「グッドタイム リビング 流山 弐番舘」だ。
ここでは入居者をゲスト、入居者の住まいのことをゲストハウスと呼んでいる。そして、ゲストが“よろこびのある暮らし”を送れるように“最良のケア” “賑わいのある毎日”“温めてきた想いや夢を実現すること”が使命だと謳っている。
「グッドタイム リビング 流山 弐番舘」は、“住宅型”有料老人ホーム。有料老人ホームには他に、介護付、健康型がある。住宅型は自立の人も入居できる。そして、介護が必要な状態になれば、入居者本人が訪問介護などの介護サービスを選択して、そのまま住み続けることができる。住宅型は、介護付の手厚さとサ高住の気軽さの、いいとこ取りの存在といえるのかもしれない。
ゲストハウスというコンセプトに欠かせない要素である食事。ここでは、刺身や天婦羅、鰻、とんかつなどが出る月に3回の特別料理の日がある。入居者の声から生まれたこの企画は、毎回約半数の人が注文する人気を集めているという。毎食2種類用意され、自由に選ぶことができる。さらに、“嗜好調査隊”や入居者との“お食事懇談会”など、お食事の質向上に積極的に取り組んでいる。スタッフと管理栄養士からなる“嗜好調査隊”は、食事中の入居者から意見を聞き、次回の献立づくりに役立てる取り組みのこと。また、“お食事懇親会”には入居者も加わり、そこでの意見交換の中から生まれたメニューもあるそうだ。
アクティビティ専用の部屋や担当スタッフを配置するなど、アクティビティにも力を入れている。朝から夕方まで、健康や文化、教養に趣味、遊びや鑑賞と様々な分野のプログラムが用意されており、入居者からのリクエストで始まったプログラムやスタッフ自身の趣味からプログラムに発展したものもあるという。入居者は毎朝掲示板を見て、何に参加をするかメモをしながら楽しみにしているそうだ。
居室には転倒防止・早期発見のために、室内センサーが導入されている。本人や家族に同意を得た上で使用している見守りのためのセンサーを使うと、居室にいる入居者の様子をプライバシーに配慮されたシルエット映像で確認できる。
映像は録画してためていくことができる。入居者のプライバシーを守りながら動きを”見える化”することで、本当に必要な支援が見えてくるそうだ。画像を分析し、家具の配置や介助の方法を検討する取り組みも行っているそうだ。家具の配置を変えた結果、転倒事故が少なくなった入居者もいるという。
→介護付きとサ高住のいいとこどり!住宅型有料老人ホーム<前編>
→室内センサーや壁収納型リフトを導入!”よくする介護”を受けられる住宅型有料老人ホーム<後編>
入居後は元気になる「高齢者向けのシェアハウス」的サ高住「銀木犀・浦安」
千葉県浦安市にあるサ高住「銀木犀・浦安」。こちらの入り口を開けると、すぐ眼の前に駄菓子屋コーナーがあり、近所の子供たちが買ったものを食堂に座って食べながら笑っている。その奥には入居している高齢者たちが談笑している姿。子供たちは入居者の孫ではなくご近所さんだという。一般的なサ高住ではもちろん、他の高齢者向けの施設でもめったにない光景がそこに広がっていた。
駄菓子屋の店番をしているのはなんと入居者。子供たちとの触れ合いを日常的に楽しんでいるそうだ。銀木犀・浦安は駄菓子屋の他にも、近所の人も利用できる「銀木犀食堂」を運営し、地域との交流を活発に行っている。銀木犀食堂は土日も含めて毎日ランチの時間帯に営業しており、平日は幼い子供を連れたお母さんたち、土日は家族連れで賑わっているそうだ。毎日違うメニューを楽しみに通う人も多いという。
「銀木犀は、入居者の方が食堂で食事をしているのが外からよく見えます。ここをレストランだと思って、『ご飯食べられますか?』と言って入って来る方が何人もいらっしゃったのです。『だったら食堂をやってみたい』と思って代表に相談して実現しました」(銀木犀・浦安所長の麓慎一郎さん。以下「」は同)
建物の中で近所の人がランチをしていたり、子供たちが駄菓子を買って遊んでいるなど、一般的なイメージのサ高住とは毛色が全く異なる銀木犀・浦安。しかし、訪れてみると、明るい雰囲気にあふれていて、むしろこちらが生活の場として自然なのではないかと感じる。このような運営方針が、入居者の心身にプラスの効果をもたらしていそうだ。
「ストレスのかからない生活が、健康に一番いいということではないでしょうか。メンタルの安定に勝るリハビリはないと思っています。普段の生活動作も重要なリハビリです。環境に慣れてメンタルを安定させることが大事。自分でやりたいと思う気持ちがあって、はじめて効果が出てきます。そのために重要なのがコミュニケーションですね」
高齢者向けの施設では、入居者に危険が及ばないように、職員が先回りをしてそのリスクをできるだけ排除していることが多い。例えば、椅子から立ち上がる際に転倒しないように身体を支える、熱い飲み物をこぼしてヤケドをしないように配膳・下膳をする。これは決して悪いことではない。しかし、あまりにも手助けをしすぎてしまうとデメリットも出てきてしまうという。
「自由とリスクは反比例します。ケガをなくそうとすれば、自由もなくなります。ご家族に『親を絶対に転倒させてもらっては困ります』ともし言われたら、うちでは無理ですとお答えしますよ」
銀木犀の最大の特徴は、入居者の7割以上が入居後に身体面または精神面での改善が見られることだ。90歳代で食事の量が増えた人もいれば、中には元気になりすぎて自宅に帰ってしまった入居者も。入居した際にはしかめっ面をして化粧っ気もなかった女性が、他の入居者と買い物に行くようになり、自然とメイクもするようになったこともあるそうだ。外見や雰囲気的な変化だけではなく、要介護5から要介護3になるなど数字で表すことのできる改善事例も数多くあるという。
こちらでは認知症で食事の時間が分からなくなってしまった入居者を職員ではなく他の入居者が食堂に連れてくる。一緒に暮らす友達として『一緒に食べにいきましょう』と声をかけるのだという。椅子から立ち上がるのが苦手な人にも、入居者が手を貸す。これは麓さんたち職員がお願いしたことではなく、自然とそういう雰囲気が生まれたのだそう。
「銀木犀を表す一番分かりやすい表現が、『高齢者のシェアハウス』です。入居者の方同士で助け合って、それでもダメな時にはじめて我々職員が手を出します」
銀木犀が実践していることを危ないと思わず、周囲の人と共に生き生きと暮らせる環境だと感じた方は、ぜひ自分の目で一度確かめてみてほしい。「高齢者向けのシェアハウス」と呼ぶにふさわしい雰囲気を感じられるはずだ。
→入居後は元気になる「高齢者向けのシェアハウス」的サ高住<前編>
→入居後は元気になる「高齢者向けのシェアハウス」的サ高住<後編>
21世紀の親孝行を追求するサービス付き高齢者向け住宅「麗しの杜 光ヶ丘」
JR常磐線南柏駅からバスで約7分。バスから降りると、目の前に東京ドーム約10個分の広大な敷地を有する麗澤大学のキャンパスが見えてくる。ここには桜やヒトツバタゴ、楷の木、まんりょうなど、四季を感じさせてくれる樹木が約300種類、1万5000本もあり、「麗澤の森」と呼ばれているという。同じ敷地には幼稚園や中学校、高校などがあり、多くの学生・生徒たちが落ち着いた環境で学んでいる。そして、このキャンパス内に2015年に作られたものは、なんとサ高住だった。
麗澤大学のキャンパスと同じ敷地に建てられたサ高住「麗しの杜 光ヶ丘」を運営するのは公益財団法人「モラロジー研究所」。この団体は、1926年に創立された教育団体で、倫理道徳の研究や道徳に基づく社会教育や学校教育、生涯教育を推進している。麗澤大学などを運営する学校法人「廣池学園」とは姉妹関係の団体にあたるそうだ。
モラロジー研究所は元々、道徳教育を行う団体。なぜ介護事業を行うことになったのだろうか。館長の中地孝博さんに聞いた。
「親孝行に対する価値観が、時代の変化と共に大きく変わってきていると感じていました。2000年に介護保険制度ができて、様々な法整備がなされて、介護人材の育成機関ができ、施設も増えました。しかし、私たち国民の意識は大きくは変わってきてはいません。親の介護が必要になったら、子供が面倒をみるのが当たり前だという考え方が根強くあります。親孝行な方であればあるほど、親の介護が必要になったら、仕事を辞めて親の面倒をみないといけないという思いを強く持っています。そういう方の負担を軽減したいと考えています」(館長の中地孝博さん。以下「」は同)
麗しの杜には2015年にオープンした1号館と2019年2月に完成した2号館があり、一体的な運営がなされている。緑に包まれながら快適に暮らせるように、建物設計にも工夫を凝らしたという。1号館の1階には食堂や100名が利用できる交流ホール、子供向けの絵本コーナーなどの共用スペースがあり、催しや交流に活用されているという。また、エントランスにあるフロントでは、生活面の不安などの相談や郵便物等の受け取りのサービスを提供している。
「交流スペースは社会福祉協議会にも場所をお貸しして、地域の方の健康作りの講座を行うなど活用していただいています。もちろん、ご入居者様の集まりにも利用していて、ラジオ体操や餅つきなど季節の行事などをしています。ピアノの練習をしている方もいらっしゃいますね」
食事はキャンパスの中にあるレストラン「まんりょう」で調理し、麗しの杜の厨房で食事の前に最終仕上げをしているという。まんりょうはフレンチや日本料理のコースも出しており、キャンパスに用事がなくとも、その味を求めて足を運ぶ人がいるそうだ。麗しの杜では、飽きが来ないように、家庭的な料理を出しているという。
2階、3階には居室があり、4階には夫婦で入居できる2人部屋もある。檜風呂やリビングのように使えるスペースもあり、快適な生活を送れる。
大学のキャンパス内で暮らせるサ高住は全国的にも珍しい。入居者の中にはキャンパス内で提供されている生涯学習の講座に通っている人や大学の図書館を利用している人もいるそうだ。このような環境は、元気なうちに移り住めるサ高住にはピッタリなのかもしれない。
→21世紀の親孝行を追求するサービス付き高齢者向け住宅<前編>
→21世紀の親孝行を追求するサービス付き高齢者向け住宅<後編>
東京への通勤・通学圏として栄えてきた千葉県東葛地域と湾岸地域。自身の老後や親のことが気になる方は、緊急事態宣言が解除された今、以前のように気兼ねなく見学に行ける状態になることに備え、気になる施設をピックアップし始めてみてはいかがだろうか。
撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。