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【東京都杉並区】注目の特別養護老人ホームと介護付有料老人ホーム【まとめ】

 オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。

 東京23区の最西部に位置し、住宅地として発展してきた東京都杉並区。都心へのアクセスもよく、高円寺や荻窪、阿佐ヶ谷など知名度の高い地域も多い。65歳以上の人口比率を示す高齢化率は、2000年の16.8%から2020年には23.6%と右肩上がり。介護認定された人数は2万5393人で、介護を必要とする人は今後も増えていくと予想されている。そこで今回は、杉並区にある特別養護老人ホームと介護付有料老人ホームを紹介する。

地域の福祉拠点として子供から高齢者まで集う総合福祉施設「リバービレッジ杉並」

 2019年3月に東京都杉並区にオープンした「リバービレッジ杉並」。総合福祉施設と謳っている通り、こちらの施設では特別養護老人ホーム、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、訪問看護の4つの事業が展開され、さらに同じ施設内でカフェと貸し出しスペースを運営している。

 杉並区の土地を真光会が借りるかたちで、設立・運営しているリバービレッジ杉並。杉並区の公募で選ばれた提案には、様々なこだわりがあるという。例えば、こちらの施設の中心部分である特養。10名前後の人数で1つのユニットを形成するユニット方式の場合、見守りのしやすさなどの理由からリビングを取り囲むように居室を配置するのが一般的だが、ここは全く違ったコンセプトの住空間となっている。

「私たちはご入居者が静かな環境で過ごせるように、リビングから居室を離して作りました。見守りのしやすさという職員目線ではなく、ご入居者の生活の質を優先させました。死角がある分は、眠りスキャンを入れるなどICTを活用してカバーしています。照明にもこだわりました。直接あたる照明はダウンライト以外はなく、ほとんどを間接照明にして、落ち着いた雰囲気で過ごせるようにしました」(リバービレッジ杉並統括施設長の野崎康弘さん)

 社会福祉法人として、地域への貢献を大きな柱としているという。その一つが、スポーツ教室や様々な学びの場を通じて、子供たちの力を育てる「キッズ元気プロジェクト」。本部のある青梅市で6年ほど前から無料の学習塾やスポーツ教室を運営し、地域の子供たちを明るく元気に育てる活動に取り組んできたそうだ。その蓄積を活かして、杉並区でも地域の子供たちを支援している。

「社会福祉法人として地域の福祉拠点になることを大きなミッションだと考えていますので、名前にも“総合”とあえてつけています。地域の高齢者はもちろん、子供たちや親御さん、地域の方々にも利用してもらえるような拠点にするために、スポーツ教室を行ったり、カフェの運営をしています」(野崎さん)

 カフェと貸し出しスペースは、道路を挟んだ向かいにある緑豊かな妙正寺公園とまるでひと続きになっているかのように建てられている。カフェではコーヒーや紅茶、食事、スイーツが楽しめ、近所の住民の憩いの場になっている。貸し出しスペースは1時間1000円で借りることができ、地域の人や団体がスポーツやサークル活動、催し物、パーソナルトレーニングなどに利用しているそうだ。

 昭和54年の設立以来、こつこつと積み重ねてきた実績を活かし、地域との交流を建物の設計と運営に組み込んでいるリバービレッジ杉並。杉並発の新しい福祉の拠点に地域が寄せる期待は大きい。

→地域の福祉拠点として子供から高齢者まで集う総合福祉施設<前編>
→離職率9%!人材育成に力を入れている総合福祉施設<後編>

看取り率6割、看護師の施設長が運営する介護付有料老人ホーム「ライフステージ阿佐ヶ谷」

 阿佐ヶ谷駅から徒歩約4分と利便性の高い場所にある「ライフステージ阿佐ヶ谷」。運営を行っている株式会社星医療酸器は、1974年の創業以来、医療ガスを提供する事業を行い、在宅医療にも貢献してきた。

 看護師が24時間常駐しているため、緊急時や医療依存度の高い入居者にも適切な対応が可能だという。例えば、経管栄養やたんの吸引などが必要な人も入居できるそうだ。看護師がいるために麻薬の使用も可能で、看取りのケアにも力を入れている。24時間途切れないケアと在宅医療の医師との連携によって、病院での最期を希望する入居者を除き、6割近くの入居者の看取りをしているという。

 新しい試みも積極的に取り入れているライフステージ阿佐ヶ谷。その一つが「ドールセラピー」を導入。使っているのはそのドールセラピーが広く普及しているというスウェーデンのルーベンズバーンズ社の人形だ。元々は教育的配慮を必要とする児童を対象として開発され、その後、認知症ケアへの効果が認められ、多くの高齢者施設で利用されるようになったという。自分の好みに応じた形や大きさ、色の人形を選ぶことができる。大好きな人形を抱きしめることで、不安を感じている高齢者が落ち着きを取り戻す効果があるそうだ。

 介護スタッフの6割以上を介護福祉士で揃えているのは、手厚いケアを実現するため。専従の理学療法士による生活リハビリの提供、認知症専任スタッフの配置など介護サービスの充実にも力を入れている。さらに、徒歩3分の距離にある救急機能がある総合病院への受診の付き添い、入退院の支援を無料で行っているそうだ。協力医療機関とは月2回以上の訪問診療を含め、24時間の医療連携体制を確保しているため、安心感がある。

→看取り率6割、看護師の施設長が運営する介護付有料老人ホーム<前編>
→看取り率6割、看護師の施設長が運営する介護付有料老人ホーム<後編>

入居者第一のハードとソフトを備えた小規模介護付有料老人ホーム「ブランニュー杉並高井戸」

「ブランニュー杉並高井戸」を運営する「トリニティ・ケア株式会社」はミサワホーム株式会社のグループ会社だ。ミサワホームは介護事業を始めて20年以上経ち、着実に実績を積んできている。ブランニュー杉並高井戸の設計・建設もミサワホームが担当しており、総合住宅メーカーならではの、入居者本位で細かいところへのこだわりも見られる。

 転倒事故によって、その後の生活が不自由になってしまう高齢者は多いそうだ。厚生労働省の調査によると、年間約47万人が骨折・転倒で要介護になっている。また、骨粗鬆症学会の調査によると、要介護となる原因全体の10.2%を占めている。ブランニュー杉並高井戸の床には、衝撃吸収床材が使われている。この床材は日本転倒予防学会の推奨品にもなっており、すべりにくく、衝撃を吸収するそうだ。すべりにくいのは独自の塗装がしてあるからで、衝撃を吸収するのは違う種類のクッション層が使われているから。当然、通常の床材よりも費用はかかるが、居室だけではなく廊下にも使われているので、居住者は安心して生活ができるという。

 ここでは、車椅子での出入りや介助をしやすい構造にしてあるので、日々の苦労が軽減されるそうだ。一人ひとりの身体の状態は違うので、介助が前からも後ろからもできるのは入居者にとっても介助者にとってもメリットがある。

 居室には慣れ親しんだ家具を持ち込んで使うことができる。体の不調など、緊急事態時にスタッフに伝えるコール装置をトイレとベッド脇の2か所に設置してあるので安心だ。衣類や小物などをゆったりしまえる収納も完備している。日当たりもよく、周囲は静かな環境なので、十分落ち着いた生活が送れそうだ。

 こちらには「あなた専用の日」が用意されていて、スタッフがつきっきりで入居者の願いを叶えてくれるという。「夫婦の記念日に出かけていたお寿司屋さんに行きたい」「家族と日帰り旅行をしたい」といった個々の希望のために手伝いをしてくれるのだという。実際に多いのが、墓参りに行きたいという希望だそうだ。

「あなた専用の日」を良い状態で迎えるために普段のリハビリへの意欲が高まるなど、副次的な効果もみられるという。外出を目標にし、それに向けたリハビリメニューを作り、スタッフと一緒になって取り組むことで効果が高まるそうだ。

→入居者本位のハードとソフトを備えた小規模介護付有料老人ホーム<前編>
→入居者第一のハードとソフトを備えた小規模介護付有料老人ホーム<後編>

 いかがだっただろうか。地域の介護ニーズに応えるために日々奮闘している各施設。杉並区に住み続けたい高齢者や離れて住む親を近くに呼び寄せたい子供は、どこの施設が自分たちのニーズを満たしてくれるのかをチェックしておきたい。

撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ

※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。

→このシリーズのバックナンバーを見る

●「家庭内でも高齢の親には近づかない」命を守るため、いますべきこと

●新型コロナで要介護認定はどうなる? 要介護申請の流れをおさらい

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