健康

コロナ自粛中の健康対策|船乗りが明かす引きこもり生活のリスクとは

 コロナウイルスによる外出自粛が長引くことで、重大な健康リスクが増えると専門医は警鐘を鳴らす。年間のほとんどを海の上で過ごす大型船の乗組員の声から、家ごもり生活における不調とその対処法を探った。

船上のこもり生活のリスクとは

 私たちは、新型コロナウイルス感染症という疫病の蔓延によって家ごもりを強いられているわけだが、閉鎖環境での生活を業務として日常的に行う人たちもいる。たとえば、南極基地などの極地観測業務や宇宙飛行士などがそれだが、「引きこもりの先達」は、私たちが置かれている現状をどう見ているのだろう。

 大型貨物船の乗組員として年間のほとんどの時間を洋上で過ごす一等機関士の長尾健太郎さん(53才・仮名)はこんな話をする。

「私は、年間の半分を船の上で過ごすのですが、ひとりきりになれるのは風呂もない狭い自室の中だけ。家にこもっている皆さんと一緒で、バスや電車にも乗れず、友達にも会えない。外に出て交通機関を使うだけのことでも、ずいぶんストレス緩和になっていたんだと実感しました。

 テレビのコメンテーターや政治家が『いまはがまんして家にいて』と口をそろえますが、彼らはテレビ局や国会などに出かけられているわけで、ずっと家にいる人の気持ちはわからないだろうなと思ってしまう」

●睡眠障害で血圧上昇

 長尾さんのような“閉鎖環境の達人”でもストレスを感じるというから、私たちが慣れずに不調やストレスを感じるのは当然のことだ。ストレスが招くのは心の不調だけではない。

「強いストレスがかかると睡眠障害を起こしやすくなり、疲労が蓄積し、高血圧など、さまざまな体の不調に直結していくことが考えられます」(佐々木さん)

 “閉鎖環境の達人”もストレスが体の不調に発展した経験を持つ。

●筋肉が減り体が重くだるい

「私はストレスがたまると、どうしても甘いものが食べたくなってしまって、つい持ち込んだ私物のお菓子に手が伸びてしまいます。限られた空間しかない船内では運動も充分にはできないため、一度の航海で4~5kg太ったこともあります。筋肉は減るのに、ぜい肉は増えてしまい、体が重く、だるかったことを覚えています」(長尾さん)

 重ねて言うが、これは閉じこもることに“慣れた”人の話だ。私たち“初心者”は、相当に気をつけなければ健康を損なってしまう。

コロナごもり生活の注意点

●昼寝のしすぎが死を招く

 では、どんなところに気をつけて“家ごもりライフ”を過ごすのが正解なのだろう。秋葉原駅前クリニックの医師、佐々木欧さんに聞いた。

「体内時計を狂わせないことが大切です。自粛ムードで家にこもると、テレビをだらだら見たりゲームで夜更かししてしまったりと生活が夜型になりやすく、体内時計が狂いやすい。たとえ用がなくても、きちんと朝に起きて日光を浴び、夜はしっかり7時間眠りましょう」(佐々木さん)

●日光不足で骨密度低下も

 米ノースウェスタン大学の研究によれば、夜型の生活をしている人の死亡リスクは10%高くなるという。加えて夜型で日光を浴びない生活は、女性特有の病気のリスクも上昇させる。

「閉経を迎えた女性は骨密度が急激に低下しますが、ビタミンDの不足でさらに悪化します。体内時計が乱れると更年期障害も悪化しやすい。

 家ごもりは家族の在宅時間が増え、家事の量が増えることもあるでしょうから、家族にも手伝ってもらったり、時には簡単に済ませて、日光の下で運動する時間をつくるなど、自分のこともいたわってください」(佐々木さん)

コロナごもり食生活のルール

●魚やきのこでビタミンDの摂取を

 管理栄養士の麻生れいみさんは、「食事からビタミンDを積極的に摂って」と話す。

「ビタミンDは魚のさけやめかじきに多く、さんま、さばなどにも含まれています。しかも熱に強く、煮たり焼いたりしてもほとんど分解されません。缶詰や加工食品でも栄養価が変わりません。積極的に取り入れてほしい」

 魚が苦手な人は別の食材から摂取しよう。麻生さんが続ける。

「きのこ類もビタミンDが豊富。干ししいたけの場合、機械乾燥と天日干しの2種類がありますが、天日干しのものを選ぶようにしてください。旨み成分が多く、ビタミンDもより多く含まれるからです。もし機械干しのものしか入手できない場合は、しいたけのかさの裏側を3時間程度、太陽光にさらしてください。ビタミンDの摂取量を増やすことができます」

 後から栄養素を増やすこともできるとは驚きだ。ぜひ試してほしい。

●加工食品過多はがんリスク上昇

 人々が買いだめをするためスーパーに走った日、棚から姿を消したのはお米のほか、カップラーメンやお菓子類が多かった。

 外出自粛のストレスからつい面倒になって買い置きのカップ麺や菓子パン、レトルト食品などで食事を済ませてしまいがち。

 だが、これらの“超加工食品”には合成保存料などの食品添加物をはじめ、大量に摂ると健康を害する恐れのある物質が含まれている。

 特にがんのリスクは大幅に上がるとされ、フランスのパリ第13大学が約10万人を対象に行った大規模調査によればこれらの「超加工食品」を摂取することですべてのがんの罹患リスクが12%高まるという。

「できるだけ野菜を中心とした生鮮食品を食べるように心がけてください。スーパーに買い物に行くなら、人混みの少ない時間帯に行くなど対策しつつ、なるべく普段どおりの食事を作ることを心がけるといいでしょう」(中原さん)

●カップ麺でも+わかめで免疫UP

 とはいえ、外食が頻繁にできず、家ごもりで気が滅入る中、毎回しっかりと食事を作るのも大変だ。

「カップ麺で済ませる場合でも、桜えびやわかめ、ごまやかつおぶしなどを常備しておき、ちょっと加えるだけで現代人が不足しがちな鉄分や亜鉛、マグネシウムなどの栄養素を補えます。これらは日持ちするうえ、免疫力も上げてくれます」(麻生さん)

→コロナ予防に大事な「免疫力」とは?

●冷凍野菜でビタミンCを

 加えて麻生さんは、冷凍野菜を常備することをすすめる。

「特にブロッコリーはビタミンCが豊富で、病原体を排除する白血球の働きを助けるほか抗炎症作用もあり、抵抗力を高めてくれます。調理の際はゆでずに電子レンジで加熱すればビタミンCが溶け出すのを防ぐことができます」

教えてくれた人

長尾健太郎(仮名)さん/大型貨物船の乗組員として年間のほとんどの時間を洋上で過ごす一等機関士

佐々木欧さん/秋葉原駅前クリニックの医師

麻生れいみさん/管理栄養士

※女性セブン2020年4月23日号
https://josei7.com/

●新型コロナ感染予防をおさらい 正しい手洗い、咳エチケット、3つの密

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