野村克也さんも…お風呂が命取りになった著名人
介護ジャーナリストの末並俊司さんが指摘する。
「介護サービスでプロの入浴介助を受けていたり、家族の見守りがある場合は風呂場で亡くなることはほとんどない。しかし“まだ自分は大丈夫”と思っている人、足腰は不自由だけど頭がしっかりしている人などは、“裸を見られるのは恥ずかしい”と補助を拒み、入浴中に事故死するケースが増えています」
厚生労働省が2015年に発表した推計によれば、入浴中の死者は年間1万9000人。2019年に交通事故で死亡した人の数は3200人なので約6倍にあたる。「お風呂」はこれほどまでに危険な場所なのだ。
野村さんの死因は、2017年12月に亡くなった妻の野村沙知代さん(享年85)と同じ虚血性心不全だった。
狭心症や心筋梗塞を起こすと、心臓に血液が行き届かなくなり心臓の一部が壊死してしまう。この状態を「虚血」といい、その後、心臓の働きが弱まることで心不全が起きる。この虚血性心不全は突然死の代表ともいえる病気だ。野村さんの虚血性心不全を引き起こした原因は、冬場の入浴時に起こる「ヒートショック」だと考えられるという。
入浴と健康の関係を研究している医師で、東京都市大学人間科学部教授の早坂信哉さんが解説する。
「ヒートショックは急激な温度変化による、血圧の上昇によって起こります。冬場の寒い脱衣所で服を脱ぐと交感神経が刺激され、血圧が30~40ほど上がり、続けて熱い湯船にドボンとつかることで、さらに10~20ほど上昇する。合わせて50くらい一気に上がることで心臓に負荷がかかり、心筋梗塞や心不全といった病気を引き起こすのです。若い人は血管が丈夫なのでさほど危険はないのですが、中高年の人は動脈硬化が進行しているのでリスクが高い」
本来リラックスできる空間を“最期の場所”としないために、寒暖差には要注意だ。
→冬に多発する高齢者の入浴中事故原因ヒートショック|予防策・便利グッズ
教えてくれた人
早坂信哉さん/医師。東京都市大学人間科学部教授。入浴と健康の関係を研究している。
※女性セブン2020年3月5日号
https://josei7.com/