西城秀樹さん闘病中もあきらめなかった家族旅行の思い出【第5回】
「脳梗塞で倒れてからは、旅先で不安だったのが大浴場でした。男湯に私は入れないし、長男も次男もまだ小さかったころは、大きなパパの体を支えるのはちょっと無理…。秀樹さんは大浴場をあきらめたことが何度かありました」
秀樹さんとの旅で美紀さんを悩ませたのが、温泉旅での“入浴”だ。国土交通省の調査によると、介護が必要な人が選ぶ旅で最も多いのが、「車で行く温泉」となっている。しかしその一方で、旅行での不安で一番多いのが「要介護者が宿泊先で入浴することが難しい」となっている(国土交通省「車椅子、足腰が不安なシニア層の国内宿泊旅行拡大に関する調査研究」より)。
「介護や介助が必要な人にとって、露天風呂や大浴場はひとつのハードルかもしれませんね。2017年の春、温泉旅行へは秀樹さんのお友達の家族と一緒に行きました。大浴場や露天風呂に行くとき秀樹さんはお友達に付き添ってもらいました。状況を理解してくれている友人家族の存在は、介護中の大きな支えになりました」
最近では、介護や介助を必要とする人のための旅行プランも増え、旅の手助けや介助を行う“トラベルヘルパー”という専門職も登場しているので、不安なことは旅行会社に相談してみるのもひとつの手だ。
「家族旅行は秀樹さんにとってパワーの源だったように思います。パパと行く旅は子供たちの成長の場でもありましたし、旅を通じて家族の絆も強まっていったと思うんです。闘病中だからといって臆さずに、事前の準備をしておくことで旅を楽しむことができると思います」
美紀さんはそう言って優しく笑った。
【木本美紀さんの寄り添い方に学ぶ】
・闘病中だからと臆さず、旅に出ることも大切。家族みんなが笑顔になれる。
・車椅子以外にも電動カートなどの選択肢がある場合も。
・空港、ホテルなどの施設では車椅子のレンタルが可能。事前に予約しておくことで、いざというときに安心。
・家族だけで乗り切れないときに、友人の存在は大きな支え。
次回は、美紀さんが秀樹さんのために工夫していた食生活について聞いた。
つづく…(次回は、3月11日公開)
木本美紀
1972年大阪生まれ。近畿大学理工学部土木工学科卒業後、建設コンサルタント会社に就職し、結婚を機に退職。2001年に西城秀樹と入籍し、1女2男と3人の母に。夫秀樹さんとの出会いから闘病生活、看取るまでを克明に綴った著書『蒼い空へ 夫・西城秀樹との18年』(小学館)は10万部を超えるベストセラーに。
撮影/浅野剛 取材・文/介護ポストセブン
●西城秀樹さんの闘病・介護…共に歩んだ妻・美紀さんが明かす家族のこと<第1回>
●妻が明かす西城秀樹さんが遺した宝物、子供たちの想い<第2回>