難治性の慢性蕁麻疹に新薬登場 4週間ごとの注射で85%に効果
4〜5人に1人が一生のうちに1回は経験するといわれる蕁麻疹(じんましん)。急性は発症から1週間程度で回復する。食物や薬物、寒冷など原因が特定される蕁麻疹もあるが、8割が特発性(原因不明)だ。中には1か月以上、ときには数年にわたり症状が続く慢性蕁麻疹もある。
その難治性の慢性蕁麻疹に対し、抗IgE抗体の新薬が承認。4週間に1回の注射により85%に効果が確認されている。
ヒスタミンなどの化学伝達物質が毛細血管を刺激して発疹やかゆみが出る
皮膚や粘膜に存在する、肥満細胞(マスト細胞)が刺激されるとヒスタミンなどの化学伝達物質が放出される。それらが毛細血管を刺激することで血管拡張や浮腫が起こり、赤く盛り上がる発疹が出る。
これが蕁麻疹で、神経などにも作用し、かゆみも起こる。蕁麻疹は1週間程度で治る急性蕁麻疹と症状が1か月以上、ときには数年にわたり持続する慢性蕁麻疹がある。蕁麻疹の原因は、ほとんどが不明だが、食物やアスピリンなど薬物の摂取、圧迫、寒冷、日光などが原因で発症することもわかっている。
東京女子医科大学病院皮膚科の石黒直子教授に聞いた。
「蕁麻疹で皮膚科を受診される患者さんの中には1週間程度で治る方(急性蕁麻疹)と、つらい症状が長期間続く方(慢性蕁麻疹)がいます。慢性蕁麻疹の方には、いつどんな時に症状が出やすいか、診察で何回も聞き出すように心掛けています。患者さんの中には、例えば大豆が原因と思い込んでいても、実際に検査すると、それが原因ではないこともあります。そのため週1回の蕁麻疹外来や場合によっては入院していただき、様々な検査を行なっています」
原因特定のための検査は血液検査の他にプリックテストやスクラッチテスト、皮内テストを行なう。これは抗原エキスを皮膚にのせ、その部位を軽く刺したり、ひっかく、あるいは抗原エキスを皮内注射して反応が出るかどうかをみるものだ。また寒冷や紫外線刺激を与えて反応をみる誘発テストや食物を食べて症状が出るかを調べることもある。
さらに風邪や過労、睡眠不足、強いストレスが長期間続くと症状を悪化させる誘因となる。他にも慢性蕁麻疹の意外な原因として、ひどい虫歯や歯根病変もある。病巣に膿がたまり、それが原因となって蕁麻疹を引き起こしていることがあり、その場合は歯の治療をしないと治らない。
難治性蕁麻疹ステップ4の治療にに新たな薬が承認
慢性蕁麻疹の原因や誘因が特定された場合は、もちろんそれらを避け、治療は4段階にわかれる。
ステップ1は抗ヒスタミン薬の内服だ。通常量で効かない場合は2倍増量し、他剤と併用する。それでも効果が得られない場合、ステップ2として抗ロイコトリエン薬(*)やH2拮抗薬(*)を追加する。その投薬を行なっても効果がない場合にはグリチルリチン製剤の注射などを加えて治療することもある。
「難治性の慢性蕁麻疹に対するステップ4の治療としてオマリズマブ<ゾレア(R)>が承認されました。これはアレルギー反応に関与しているIgEに直接結合し、効果を発揮します。4週間に1回の注射で、患者さんの85%に効果が得られています」(石黒教授)
このように難治性の蕁麻疹に対しては新しい治療が登場しており、あきらめずに治療することが重要だ。
*保険適用外
※週刊ポスト2019年11月8・15日号
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