介護ロボットで賞金1億円! 日本初の生活支援ロボットコンテスト
高齢化が進む一方、人材不足で介護者の負担は増加。そんな社会的背景から、介護ロボットが脚光を浴びている。そこで賞金総額1億円の生活支援ロボットコンテスト『グローバル イノベーション チャレンジ 2020』に注目! コンテスト記者発表会の模様をレポートする。
介護ロボットを日本発の新たな産業に
介護ロボットのおかげで、車いす生活の私でも、夜中のトイレもお風呂もひとりでOK、朝の身支度、バスの乗車も、食事の準備だってできる。
介護が必要な人も自立した日常生活を送ることが可能に――そんな夢のような介護ロボットを開発できたら、総額賞金1億円をゲットできるらしい。
生活支援ロボットコンテスト『グローバル イノベーション チャレンジ 2020』の記者発表会が、10月21日に東京・六本木アカデミーヒルズで開催された。
日常生活空間をテーマにした生活支援用の介護ロボットのコンテストは、日本初。賞金総額はなんと1億円(1万ドル!)という大型企画とあって、話題を呼んでいる。
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――介護ロボットこそ、日本から発信する新たな産業に!
壇上で熱弁を振るうのは、『グローバル イノベーション チャレンジ 2020』を企画運営する実行委員会の上村龍文さんだ。
「高齢化が進み、介護者への負担もどんどん増えていく中、人ができることには限界があります。ロボットの力を借りて、介護者の支援がなくても生活できるようになり、介護者の負担も減らせたらいいですよね。しかし、介護福祉分野のロボット開発には、まだまだ投資が集まりにくい分野。だからこそ、こういったコンテストを開催することで、市場を盛り上げて介護ロボットを新たな産業として日本から発信していくべきだと考えます」(上村さん)
介護ロボット市場は年々拡大中
記者発表会にはコンテストに全面協力している、つくば市・市長の五十嵐立青さんもかけつけた。
「つくば市は、多くの研究者や企業を迎え、国家プロジェクトである研究都市として発展してきました。今回このロボットコンテストのお話を聞いて、まさにつくば市で実施すべきだと確信しました。介護ロボットによって、誰もが障害を意識しなくてよい社会が実現することを願っています」と、五十嵐市長は熱い期待を寄せた。
介護ロボット市場は、2017年には約14億円で右肩上がり、2021年には37億6500万円と予測されている(矢野経済研究所調べ)。また、厚労省が介護ロボット開発の普及・促進の支援を積極的に行うなど、全体の市場規模は拡大中だ。
医療・介護施設では、入浴ロボットなど大型機器は導入されて始めているが、まだまだ一般に流通する製品やビジネスモデルは発展途上だと、上村さんは話す。
このコンテストをきかっけに、介護が必要な単身者が自立して生活できるロボットを広く募集し、生活支援ロボットの技術開発と製品化の加速を目指すという。
介護ロボットコンテストの実施概要は?
『グローバル イノベーション チャレンジ 2020』では、車いす生活の人が、介護者のサポートがなくても行動できる“生活支援ロボット”を募集する。
日本だけでなく、海外からも参加チームを募る世界規模の大型コンテストとなっている。
日常生活をテーマとした介護ロボットのコンテストは日本初開催となり、第1回は2020年9月12日~14日にかけて実施。年2回開催し、10年間に渡り続けていく予定だ。住宅メーカーや家電メーカー、建設業といったスポンサーを募る予定。
第1回目は、茨木県つくば市にある小学校の廃校(旧つくば市立菅間小学校)が舞台。
校舎の中に、ひとり暮らしの家を想定した会場を用意し、夜のトイレ、歯磨きなどの身支度、食事の用意、バスに乗って外出するなど、日常生活における10項目の課題を設定。課題をクリアするごとに賞金が増え、すべて達成すれば総額は1億円に。なお、複数のチームが同じ課題をクリアした場合は、賞金は分配される予定だ。
参加費は無料。参加チームには、代表者と安全管理者(兼務も可)、介護ロボットを操作するパイロットが必要となる。パイロットは脊髄損傷による下肢麻痺者など、いくつかの条件がある。
介護ロボットコンテストの課題と賞金
課題1 夜中のトイレ…賞金10万ドル
課題2 ベッドから洗面所に移動し身支度(洗顔、歯磨きなど)…賞金5万ドル
課題3 食事の用意、後片付けなど…賞金5万ドル
課題4 洗濯して干す、たたんでしまう…賞金5万ドル
課題5 宅配便の荷物の受け取り…賞金5万ドル
課題6 掃除で掃除、ゴミを出す…賞金10万ドル
課題7 買い物にでかける…賞金10万ドル
課題8 バスに乗る…賞金15万ドル
課題9 入浴準備(風呂を洗い湯をためる)…賞金10万ドル
課題10 入浴(脱衣、入浴・洗髪、着衣、髪を乾かす)…賞金20万ドル
■介護ロボットコンテストの実施場所・概要
実施会場:茨木県つくば市 旧つくば市立菅間小学校
実施日:2020年9月12~14日
※2019年12月参加募集開始予定、2019年4月現地練習開始予定
協力:つくば市
賞金総額:約1億円(1万ドル)
https://www.innovation-challenge.jp/
介護ロボットで日本発のイノベーション
同実行委員会では、2016年から3年にわたり、ドローンなどを使った山の遭難救助ロボットのコンテストを開催してきた実績がある。
「北海道の上士幌町で、遭難救助ロボットを駆使し、遭難した人(マネキン)を見つけるまでの時間を競うコンテスト『ジャパン イノベーション チャレンジ 山の遭難救助』を2016年から毎年実施してきました。
日本全国から企業や大学の研究機関が毎年10チーム以上参加して、救難までの技術や時間を競っています。コンテストも回を重ねるごとに、参加チームの技術も上がり、スキー場などの施設や自治体からの引き合いもきています。
数年前までは、ドローンがビジネスになるとはまだ考えられていませんでした。過去にグーグルが月面探索レースに20億円の賞金をかけましたが、とても夢がありますよね。
コンテストを通じて介護ロボットというジャンルで日本からイノベーションが起きるかもしれません。将来的には企業と協力し、自治体と組んで製品を一般に普及させたいですね」(上村さん)
生活支援ロボットが身近にあって、介護が必要な人も、障害がある人も、どんな人でも暮らしやすい社会の実現は、そう遠い未来の話ではないのかもしれない。
取材・文/介護ポストセブン編集部