離れて暮らす親の介護に盲点!?「家電製品トラブル」にご用心!
盛岡在住の認知症の母を、東京から遠距離で介護している工藤広伸さん。”祖母と母”のダブル介護や、長い間離れて暮らしていた父親の在宅医療のサポートの経験も。
その時々に”学んだ””気づいた”介護心得をブログで公開し、話題を呼んでいる。
当サイトでも、家族ならではの視点でのアドバイスを執筆中。
今回のテーマは、「家電のトラブル」。製品の不具合や故障は、生活の支障につながり、体調にも影響を及ぼす恐れもある!?
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老いた両親、祖父母と離れて暮らしている方は、風邪やケガなど健康面についての心配することが多いと思います。
わたしも認知症の母の健康をいつも心配しているのですが、もうひとつ注意しておかなければならない大切なことがありました。
生活に支障をきたす「家電製品の故障」
帰省した際、母の携帯電話の液晶画面が不規則に点滅していたことがありました。携帯電話ショップに持ち込んで見てもらったところ、基盤が故障していて、通話ができない状態になっていたことが分かりました。
もし、わたしが携帯電話の異常に気づかなければ、故障を見逃してしまい、母との連絡手段を失うことになります。
携帯電話の重要性に改めて気づかされましたし、電話が使えない間、母が病気やケガをしなくてよかったとホッとしましたという経験があります。
母の家の居間にある照明器具のスイッチは、ひもを引っ張るタイプですが、母が力を入れて引っ張ってしまったため、そのひもが抜けてしまいました。
母は「ひもが抜けちゃって、電気が消えないのよ」と、東京に居るわたしに電話してきたました。すぐに対応ができませんでしたので、
「真っ暗で生活できないよりはいいから、しばらくそのままにしておいて」
と母には伝え、母と同じ岩手県内に住む妹に、母のところに行ってほしいと電話をしました。
翌日、そのひもを簡易補修してもらい、後日わたしが帰省した時にきちんと修理をしましたが、ちょっとした照明器具の故障でも、母の生活に大きく支障をきたすことに気づかされました。
家電製品の「設定変更」には要注意
ある日、母からこんな電話もありました。
「ねぇ、ひろ。なんかテレビがザーザーいって、映らなくなった」
この時も妹にテレビの修理をお願いしたのですが、実際は故障ではなく、地デジなのに「アナログ」ボタンを押してしまい、画面が”砂嵐”になってしまっていたようです。
母は1日中、居間でテレビを見る人です。そのテレビが映らなくなると、母はすることがなくなってしまいます。
わたしは、この時の母の様子を東京で見守りカメラを通して見ていたのですが、昼寝の時間が増えてしまって、完全に生活のリズムを崩していました。
過去にも、テレビのリモコンボタンの押し間違いが何度かありました。
そこで、高齢者でも扱いやすい、ボタンのサイズが大きく、ボタンの数が少ない簡易的なリモコンを購入しました。その結果、こういったトラブルの回数が激減しました。
テレビのリモコンボタンの押し間違いひとつで、母の生活リズムが大きく変わってしまうことは驚きでした。
いまの家電製品はボタン1つで便利に設定変更ができますが、高齢者の場合、簡単に誤って変えてしまうというリスクがあることに気づきました。
医療・介護職の方も、家電製品の異常までは気づかない
うちの家にはほぼ毎日、医療・介護職の方が出入りします。血圧や体温などをチェックしてもらっているため、体調面は割と心配ありません。
しかし、家電製品の故障に気づく医療・介護職の方は、家に居る時間が短いこともあって、ほとんどいません。
母が、医療・介護職の方が家に来ているときに、家電製品の異常を訴えることができれば迅速に対応できるのですが、認知症ということもあって、そのことを伝え忘れてしまうのです。
そうすると、数日ガマンしながら生活をすることになり、気づくと母の生活のリズムが崩れていることもあります。
家電の故障がADL(日常生活動作)の支障になる
この状態が続くと、認知症が進行してしまうかもしれませんし、やる気がなくなって1日中ゴロゴロする毎日になっていたかもしれません。
母はこのゴロゴロが原因で、立ち上がることが難しくなった時期があります。その結果、デイサービスに1か月行かなくなったり、洗い物をやらなくなったりしたこともあって、活動量を落とさないようにする工夫が大切だということを学びました。
わたしは帰省する回数が多いので、こういった家電製品の異常に気づくことができるのですが、お盆やお正月しか帰省できない方は、こういった状態を長期間放置している可能性もあると思います。
こういった場合、どう対処したらいいのでしょうか?
「まちの電気屋さん」の存在に注目!
毎日使う家電製品の修理ができない高齢者は多いと思います。ボタンの押し間違えによって、家電製品が正常に動かなくなるということもあります。
こんな時に助けになるのは、個人で経営している「まちの電気屋さん」ではないでしょうか?
うちもお抱えの個人の電気屋さんがいて、テレビや冷蔵庫の修理をお願いしていた時期もありました。
日頃から、「まちの電気屋さん」で家電製品の購入をするようにしたら、こういったトラブルにも対応してくれるかもしれませんし、ちょっとした見守りの役割を、果たしてくれるかもしれません。
老いた家族と離れて生活をする場合、健康面だけでなく、こういった家電製品など生活面にまで目を向ける必要があるように思います。
生活面での支障が、体調の変化につながることもあるので、家電製品のトラブル時の対応方法について、一度考えてみてはいかがでしょうか?
今日もしれっと、しれっと。
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工藤広伸(くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/)