中年になって目指す人も多い、話題の臨床心理士とは?
中年になって臨床心理士を目指す人も多い
――お話をお聞きしていると、とても興味がわいてきます。でも、40歳、50歳になっても学べるのでしょうか。
はい、今までの大学院入学者の最高齢は70才を過ぎた方でしたよ。その方はもうすでに心理カウンセラーとして勤務しておられましたが、「大学院でもう一度きちんと学び直したい」と十数倍の難関入試を突破して入学されました。
これは極端な例ですが、年齢制限はないですから、教員よりも年上の院生がいることもあるのです。
――年齢が “学び” のハンディになることはないと?
臨床心理士資格には、記憶力も必要ですが、ある程度の人格の成熟が必要とされています。それまでなさってきたお仕事をより充実させることもできると思います。年齢を重ねた人でも学んで実りがある分野だからこそ、人気があるのかもしれません。非常勤のカウンセラーであれば、仕事と家庭の両立もしやすいですし。
――臨床心理学を学ぶ魅力は何でしょうか。
放送大学の大学院臨床心理学プログラムは、対人援助の専門家である臨床心理士養成のための大学院ですが、こうした専門家を目指す方でなくても、臨床心理学に興味を持ってくださる方はたくさんおられて、学部の臨床心理学の講義もとても人気があります。
臨床心理学を学ぶ魅力の一つに、自分と他者理解のための座標軸を得ることがあると思います。世の中にはいろんなタイプの人がいますが、自分とよく似たタイプの人は分かりやすく、自分と違うタイプの人は分かりにくいのです。でも、臨床心理学を学ぶことで、さまざまなタイプの人への理解が深まり、ふだんの暮らしが生きやすくなったり、対人関係がうまくいったりして、より豊かな人生を生きることにつながると思います。臨床心理学で得られる新しい気づきや視点は、これからの人生にきっと役立つと思います。
――来月、先生の講演会が開かれるそうですね。
東京・渋谷のシネタワーで、『性格の話~自分と他者理解のための座標軸~』として、自分と似た人、あるいは自分と全く違う人とどう付き合うのか、というお話をする予定です。当日は臨床心理学プログラムの修了生にも出ていただいて、具体的な学びの体験談も発表していただく予定です。
――とても楽しみですね。本日は本当にありがとうございました。
おの・けいこ 放送大学教授・臨床心理士。1948年、愛媛県松山市生まれ。京都大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程単位修得満期退学後、チューリッヒ・カルフ箱庭療法研究所留学。その後、松山大学教授、東京国際大学教授を経て現職。編著に『心理臨床の基礎』ほか。
取材・文/まなナビ編集室 写真/五十嵐美弥(小学館)
初出:まなナビ