死ぬときは周囲に迷惑をかけていいと学ぶ「死」の講座
同講座はリピーターが多いことや、大槻先生と受講生たちの親交が深いことでも有名だ。社会人講座ながら、なぜそんなに親交が深くなるのか。受講生に聞いてみた。
「まず、講義後は、毎回『お茶会』という談話の時間が設けられています。大槻先生は必ず参加してくださいますね。毎回、1~2時間ほど、受講生たちと一緒にその日のテーマなどについて語り合ったりしています。この『お茶会』が、受講生同士の結束をかなり強めているようです。ほかの講座の先生にも『この講座を真似してお茶会をしましょう』と呼びかけたら、先生がお茶会を催してくれるようになり、結果、すごく受講生同士の仲が良くなりました」(70代女性)
受講生同士の結束を強めたいという場合には、お茶会は非常に良い影響を与えるようだ。しかし、それだけではない。
「月に1回、歴代の受講生の有志が集まり、先生を囲む会を行っています。それぞれが最近注目しているテーマを持ち寄った勉強会ですね。時には受講生同士で『深川歩く会』『博物館に行く会』など、イベントも行っています」(70代男性)
さらに毎年11月には歴代・現役の受講生を集めた研究発表会も実施されている。歴代の受講生が40~50人ほど集まり、個人的に続けている研究を発表する。さらには、毎年、歴代の受講生たちからの報告書として『わたしのDeath Education』という雑誌も発行しているのだ(第17号が最新刊)。
大学のゼミさながらの内容だが、なぜこうした活動を行うのか。その理由について、大槻先生は語る。
「社会人の方々はみなさん、なんらかのプロフェッショナルで、さまざまな体験をお持ちで、私自身よりも知識や経験が豊富な素晴らしい方が多いんです。でも、社会人教育の場合は、ただ学ぶだけに終わってしまうことも多い。だから、そうしたみなさんの知見を共有できるような発表の場を作りたいと考えています。
できれば普通の大学の学会のように、『エクステンション学会』のようなものを実施して、発表の場を作れればと思っています。多分、まだ世界中で社会人教育の学会は存在しないはずなので、ぜひこの活動を続けていきたいですね」
ただの「娯楽」や「趣味」に終わらせず、発表の場を設けることで、さらに学問を深めていく。そんな姿勢があるからこそ、この講座は数ある早稲田大学の講座のなかでも群を抜いた長寿を誇るのかもしれない。
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取材講座:「Death Education 〜死と向き合って生きる」(早稲田大学エクステンションセンター早稲田校)
文/藤村はるな 写真/まなナビ編集室
初出:まなナビ