【世界の介護】自分らしい暮らしを続けられる「オランダの認知症村」
『ホフヴェイ』は、ヴィヴィウム・ケアグループが1992年に設立。住人は152人。入居条件は「24時間ケアを必要とする認知症であること」。スタッフは精神科医、ソーシャルワーカーを含めて270人、ボランティアスタッフは140人、全員が認知症対応のトレーニングを受けている。1か月の利用料は、食費・光熱費込みで5,000ユーロ(日本円で約61万円)。このお金を、国の長期医療保険料と自己負担金で賄う。オランダ国内の24時間見守り付き介護施設の中では安い方だという。棟内には、リビングルーム+ベッド付き個室の他に、共用のリビングルームとキッチン。日中は1棟につき1人のケアワーカーを配属し、足りない部分をボランティアスタッフがフォローする。夜間はセンターに看護師が待機し、センサーやナースコールに対応する。
オートロックや監視カメラで厳重に管理された敷地内は、小さな街のようだ。噴水広場から延びる通りには名前が付いており、通り沿いにあるレクリエーションルームはさながら専門店の構え。そこには、カフェや映画館、美容院、スーパーマーケットなどが看板を掲げて軒を連ねる。入居者は一般の店と同じように利用することができる。
しっかりとした管理、スタッフのさりげないサポートで失敗なく暮らせる
「街の造りが、認知症の人の“どう振る舞えばいいの?”という疑問にヒントを与えます。それまで暮らしてきたのと同じようにしていればいいのです。ただ、認知症の患者さんは普通と違う行動をするので、専門家が常にサポートします。例えばここのスーパーマーケットでは、住人がレジでお金を支払うことを忘れても、登録されたナンバーで記録し、まとめて精算できるシステムを採用しています。普通のスーパーなら事件になりますが、みんな顔見知りですし、誰からも責められることはありません。スタッフがさりげなくサポートするので、失敗経験にならないのです。失敗経験から生まれる『できない』、『わからない』という不安感情は、積み重なると暴言や暴力など問題行動の原因となりますから」
設立当初に比べ、ホフヴェイの平均入居年数(寿命)は約2.5年から3.5年に伸びた。問題行動が減ったことで、薬の服用も15%減少したという。「認知症村」の成果は出ていると考えていいだろう。