【介護のお金】親が認知症になったら財産管理は成人後見人より「家族間信託」!?
認知症になると、法律行為ができなくなり、契約の締結や預貯金の引き出しの依頼などができなくなるという。親が認知症になったあとでは打つ手がなくなるが、発症前なら、これらを回避できる。
そのための財産管理方法が、「家族間信託」だという。手遅れになる前に、どんなものか知っておくべきだろう。
親が認知症になったら財産管理に支障が
医療技術が進歩した影響で、今や認知症になってからの平均寿命は10年近くにもなる。その間、施設へ入居させたり、在宅で介護をしたりするにはお金がかかる。
一方、認知症になると、法律行為ができなくなり、契約の締結や預貯金の引き出しの依頼などができなくなると、税理士の宮田房枝さんは言う。
「これまでは、これを補うため、認知症になってから成年後見制度を利用することがありました。しかし、この制度は家庭裁判所が介入するため、財産管理という点では不便が多いと指摘されてきました。例えば、空き家を売る、リフォームして貸すことも難しくなります」(宮田房枝さん)
親が認知症になったあとでは打つ手がなくなるが、発症前なら、これらを回避できる。そのための財産管理方法が、家族間信託だ。
「平成19年に新信託法が施行されてから、信頼できる家族に、財産の管理を任せるという家族間信託がやりやすくなりました。委託者(財産の管理を預ける人)側や、受託者(財産の管理を預かる人)が子供、受益者(財産の利益を得る人)という関係の信託契約を結ぶと、原則として登記・登録すべき財産は、受託者(子供)名義に変更する必要があります。その結果、一度信託契約を結んでおけば、認知症になった場合も、子供が財産を動かせるのです」(宮田房枝さん)
譲るのではなく託す 財産の権利は親のもの
家族間信託のポイントは、贈与のように、完全に子供(受託者)に、財産を“あげる”のではなく、あくまで、“管理を頼む(託す)”点だと言うのは司法書士の宮田浩志さん。
「例えば、自分の腕時計を子供に預けます。でも、その時計はあくまで自分のもの。あげた訳ではありません。これと一緒です。財産の名義は変わっても、その物の“価値”は預けた本人のもの。日本には昔から、家督を譲るという慣習があります。当主が隠居して子供に家督を譲っても、家や畑などの財産は、生きている限り自分のもの。それと似ています」(宮田浩志さん)
この関係性を法的に結ぶのが家族間信託なのだ。
財産の話をすると親に嫌がられがちだが、自分のもののままだとわかってもらえれば親を説得しやすい。親が元気なうちに話し合っておきたい。
※女性セブン2017年2月9日号