ショートステイを賢く利用するコツ<2>~プロが教える在宅介護のヒント~
ショートステイ契約前に準備しておきたいポイントとは
普段は家庭で介護を受けている人が社会に参加する機会になったり、家族を介護から一時的に解放し、休養や旅行・趣味などでリフレッシュするための一助になるサービス、「ショートステイ(短期入所生活介護)」。
専門家に在宅介護でのヒントを教えてもらうシリーズ、今回は、勤務する介護施設の生活相談員として、ショートステイの利用に関して専門的に要介護者や家族の相談にのっている岡田大輔さんに、ショートステイ利用の契約前に施設と話し合っておきたいことや、利用時の注意点を聞いた。
※ショートステイには医学的管理や機能訓練が必要な人を受け入れる「短期入所療養介護」もあるが、これは実施事業者が異なるため、今回の記事の内容は要支援1、2の人の介護予防も含めた「短期入所生活介護」に限る。
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ショートステイ中も普段と変わらない暮らしを
初めてショートステイの利用を希望する時には、まず、ケアマネジャーが短期入所施設の担当者と共に、ご本人やご家族と面談する機会を設けます。
他の介護サービスを利用する際にも開かれる「サービス担当者会議」が、ショートステイの場合も開かれるのです。
このときに以下のようなことが話し合われます。
・普段の生活:日課、一日のスケジュール
・体調:心身の健康状態など
・お食事:好み、要介助かどうか、形状、制限のあるもの
・薬:服薬のペース、種類
施設では、できる限りいつもと変わらず、生活リズムが狂わないように考えつつ、対応できない点についてどうするかなど話し合います。
例えば、施設には、夜間も介護職員がいるのでトイレへの付き添いが可能です。しかし、ご家庭で「夜は介護をする家族も寝たいからおむつを利用している」ことを習慣にしているなら、ショートステイ期間中もその習慣は変えないほうがいいと考えます。
普段のありのまま様子を伝える
一方、ご家族が普段している手厚い介護と同じことが施設ではできない場合もあります。できる範囲で、どうするか、皆が納得する着地点を見つけられるように相談しましょう。
私は事前の面談では、ご本人がこれまでどのような人生を歩んでこられたかなど、生活歴をうかがうようにしています。
数日間、施設で生活するだけでも、その方の人生観やしていた仕事、大事にしていることを理解しておくことは大切だと思うからです。とくに認知症の症状のある方など、コミュニケーションが困難な場合、生活歴を理解しておくことが施設で“利用者さんに心地よい対応”を見つけるヒントになります。
また、ショートステイは、介護をするご家族の健康や生活を支援するサービスでもあります。いつでも使いやすい状況を作っておくと良いので、利用される方の好みに合った、なじみの施設を見つけ、担当者との信頼関係を育てていくことをお勧めします。
私たち施設の側も、ショートステイ利用時には快適に過ごしていただき、「また利用したい」「利用してもいい」と思っていただけるよう、ご本人、ご家族と信頼関係を作ることを最も大切に考えています。
そのため入所、退所時には原則、ご家族の付き添いをお願いしています。お世話をさせていただくスタッフが直接ご挨拶をして、当日の体調をおうかがいしてから入所していただき、退所時には、どのように過ごされていたかお伝えしたいのです。
何度も利用されている方や、やむを得ないケースでは文書(利用記録等)のやりとりとなることもあります。その場合は、退所日に、お手紙などでご様子をお知らせし、次回のご利用までに感想などをうかがうようにしています。