「妻に邪魔者扱いされ、家に居場所がない」リタイア後の男性の悩みに毒蝮三太夫が喝を入れる|「マムちゃんの毒入り相談室」第82回
仕事をリタイアしたら楽しい日々が待っている……と夢をふくらませていても、現実はそうはいかない。家の中に居場所はなく、妻に邪魔者扱いされると嘆く68歳の男性。これからも我慢する生活が続くのかと思うと、ため息が出るという。マムシさんは、うつむいている相談者を「老いては妻に従えだよ!」と叱咤激励する。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「リタイアしたら家に居場所がなく妻に邪魔者扱いされる」
もう、すっかり初夏だね。出かけるには最適の季節だ。年寄りは出不精になりがちだけど、足が丈夫なうちは陽の光をたっぷり浴びて、たくさん歩くことが元気の秘訣だよ。
夫婦なり友達なりと出かけることは、オレがいつも言ってる「3つのベル」を鳴らすことにもなる。つまり「食べる」「しゃべる」「調べる」だ。行った先で名物を食ったり、おしゃべりして大いに笑ったり、訪れた名所やその土地の歴史について調べたり。ジジイもババアも「3つのベル」をにぎやかに鳴らしながら、毎日を楽しく過ごそうじゃないか。
今回は、リタイア後に家の中で居場所がないと嘆く68歳の男性からの相談だ。
「家にいると息が詰まります。半年ほど前に会社勤めから完全リタイアして、今は家で過ごす時間が長くなりました。
もともと仕事ばかりしていて、家のことを省みなかった自分も悪いのですが、家の中のことはワイフがなんでも決めます。先日も寝室のカーテンを新しくしたのですが、私の意見はまったく聞いてもらえませんでした。
私のことを邪魔者扱いする態度に腹が立ちますが、文句を言うと100倍になって返ってくることが目に見えているので、黙っています。これからもずっと我慢する生活が続くのかと思うと、溜息がでる毎日です。どうしたら仲良くできるのでしょうか。そして、少しは私のことを尊重してほしいです」
回答:「文句を言う前に、まずはあなたが奥さんを尊重して」
まずは、長いあいだお疲れさまでした。リタイアして新しい人生が始まったわけだ。もしかしたら、奥さんが「やっとふたりでゆっくり過ごせるわね」なんて言ってやさしく迎えてくれると思っていたかもしれない。ちょっとイメージが違ったわけだ。
もちろん奥さんだって、あなたが邪魔なわけじゃない。今までの生活のペースを変えなきゃいけなかったり食事を作る回数が増えたり、いろいろたいへんなんだよ。あなたと同じように変化に戸惑っていて、まだ新しいペースがつかめていないんじゃないかな。
あなたがそうだとは言わないけど、 リタイアした男性の中には、何の根拠もなく家庭内で奥さんより優位な立場でいられると思ってるヤツもいる。会社でまわりが自分を立ててくれていた感覚を引きずっちゃってるんだよな。夫婦のあいだに上も下もない。勝ちも負けもない。頭を切り替えて、奥さんに対して「お世話かけます」っていう謙虚な気持ちを持つことが大事だ。
「少しは私のことを尊重してほしい」なんて嘆いているけど、まずはあなたが奥さんを尊重しないとね。どんな小さなことでも、何かしてもらったら「ありがとう」と感謝を伝えて、いつも家を守ってくれていることをねぎらおう。あなたも頑張って来ただろうけど、奥さんだって頑張ってきた。今も頑張っている。そこに気づくことで、奥さんもあなたを尊重してくれるよ。
昔から「老いては子に従え」って言葉があるけど、今の時代のジジイに必要なのは「老いては妻に従え」という心がけだ。卑屈になれって意味じゃないぞ。奥さんを大事にしつつ、上手に転がすってことだ。我慢するわけじゃなくて、一枚上手になってしまえばいい。奥さんは奥さんで「自分がダンナを転がしてる」と思うかもしれないけど、それはそれでいいじゃないか。
カーテンのことにしたって、奥さんは今まで家のことは自分で全部決めてきたんだから、ダンナに相談するっていう発想はなかったんじゃないかな。イジけてないで「おっ、いい色だね。さすがのセンスだよ」なんて言えば、奥さんは「あら、この人、そんなことも言えるのね」と思って、今度なんか買うときには「相談してみようかしら」って気になってくれるよ。
あなたは「奥さんの当たりが強い」と思っているかもしれないけど、だからこそ自分は布団になってやわらかく受け止めないとね。相手が強く来るとこっちも強く返しがちだけど、硬い瀬戸物同士がぶつかり合ったら、粉々になって取り返しがつかなくなっちゃう。こっちがやわらかく受け止めていたら、相手も張り合いがなくなって強く当たろうとはしなくなるよ。
いつも言っていることだけど、年寄りが楽しく生きていくためには「3つのいじ」、つまり「イジ悪をしない」「イジけない」「イジを張らない」をなくすことが大切だ。今のあなたは、3つのうち「イジけない」と「イジを張らない」のふたつを実行しちゃってる。そりゃ、奥さんもやりづらいよ。あなたは自分だけ我慢しているつもりかもしれないけど、奥さんも我慢してるかもしれない。
こうやって相談してくれたってことは、変わりたい気持ちがあるってことだ。奥さんとも、もっと仲良くしたい、仲良くできると思ってるってことだ。二人の未来は明るいよ。まだまだ先は長いんだ。二人にとって心地いい関係を築いて、末永く楽しく過ごしてください。
毒蝮さんに、あなたの悩みや困ったこと、相談したいことをお寄せください。
※今後の記事中で、毒蝮さんがご相談にズバリ!アドバイスします。なお、ご相談内容、すべてにお答えすることはできませんことを、予めご了承ください。
※以下の画像をクリックすると、「お悩み相談のフォーム」に遷移します。
毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。90歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。最新刊は玉袋筋太郎と熱く語り合った対談集『愛し、愛され。』(KADOKAWA)。毒蝮の「毒」と玉袋の「粋」が熱く融合し、混迷の時代を生きる私たちに勇気と希望を与えてくれる。
「マムちゃんねる スペシャルトークLIVE 春」開催間近! ゲストに神谷明、赤坂泰彦など。日時は2026年4月25日(土)19時開演(18:30開場)。場所は深川江戸資料館・小劇場。入場料4000円(税込・全席指定)。チケットのお問い合わせは「カンフェティチケットセンター」http://confetti-web.com/@/mamuchannel TEL:050-3092-0051(平日10:00~17:00)。
YouTubeの「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXXも、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。

石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」「失礼な一言」など著書多数。新著『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)と『大人のための“名言ケア”』(創元社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。