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連載

兄がボケました~認知症と介護と老後と「第68回 3回目のてんかん発作」

 ライターのツガエマナミコさんの兄は、50代で若年性認知症を発症しました。認知症の症状が進む兄の、生活の一切をサポート、ケアしてきたマナミコさんでしたが、2年前ショートステイ先でてんかんの発作を起こし寝たきりになってしまったことがきかっけで、68歳の現在は特別養護老人ホームに入所中です。今年のお正月に再び発作を起こした兄。大事には至っていませんでしたが、その後また、発作が起きたと知らせがあり…。

 * * *

病院受診と施設のサポート

 施設から電話があり、兄が3回目のてんかん発作を起こしたことを知りました。といっても、30秒ぐらいで発作は収まり、施設の看護師さんも駆けつけ、バイタル(脈拍、血圧、酸素濃度など)に異常はなく、安定しているというご報告でした。

 ただ、「じつは、少し前にも夜中に短い発作があったようで、発作が頻繁になってきたことがちょっと心配です」というお話がありました。

 発作そのものは一時的なものなので、1月に「今後は様子を見て、いちいち救急車は呼ばない」というお約束をしたばかりですが、頻度が増えてくるとスタッフのみなさまも不安でございましょう。「食事中や入浴中に発作が起こると、やはりリスクが大きいので医師と相談して何か対策をしたい」ということでした。わたくしも共感しかございません。

 そして2~3日後、再び電話があり、「施設の医師と相談した結果、てんかん発作初回の約2年前から、脳波の様子が変わってないのか、あるいはどのくらい変わっているのかを調べて、薬の量や種類を考えたいので、お兄さんに病院で検査を受けてもらいたいのです」とご提案がありました。

 もちろんわたくしに異論はございません。しかしすぐに頭に浮かんだのは、病院を受診するまでの面倒な連絡や手続きでした。介護タクシーが必要ですし、病院の予約を取らなければならない……。奮闘していた過去が蘇って頭も心もザワザワしました。仕事の締め切りも差し迫っていたのでなおさらです。

 それでも自分がやるしかないのだと意を決し、2年ほど前に脳波検査を受けた病院がいいだろうと思い、検査を受けた日付やら検査結果などの書類を集めました。そして改めて「紹介状を書いてもらわなければいけないんですけど…」と施設にお電話をすると「それはこちらでやりますから大丈夫です。病院さえ決めていただければ、紹介状のことや病院の予約はこちらで取りますよ。介護タクシーの手配もこちらでしますから」と言っていただき、頭と心のザワザワがサ~ッと消えていきました。

「なんて親切な、ありがたいことなのでしょう!」

 ほどなく日程が決まり、およそ2週間後に病院へ行くことになりました。わたくしは朝から施設に向かい、施設から介護タクシーに同乗する予定でございます。わたくしは兄のてんかん発作を目の当たりにしたことがないので、行き帰りの道中で発作が起きたら…と思うと不安ですが、この不安を施設スタッフさまは日々感じていらっしゃると思うにつれ、感謝はより一層深まりました。
 
 数日後、面会にいくと、ちょうどお部屋でおやつを食べさせていただいているところでした。「今日はマンゴープリンです」とおっしゃるスタッフさまがスプーンを差し出すと、大きな口を開けて食べる兄。とても元気そうで安心しました。

 話がわかっているかわかりませんが、「今日はお天気で外もあったかいよ」というと「そうだね」と返してくれます。でも「おじさんも施設に入ることが決まったみたいよ。みんな大変だね」と報告すると何も返事をしないモードになります。その後、何か反応してほしく歌を歌うと、リズムに会わせて微妙に首を動かしてくれたので、やはりネガティブな話は苦手なのかもしれません。
 
 そう、認知症になって頑固モード全開の叔父は近々施設に入ることになったようです。今まで一歩下がって叔父を立てていた叔母が本気を出せば、こんな風に早く物事が動くのだとわかり、わたくしはビックリいたしました。ずっと計画は練っていたのでしょうが、それにしても鮮やかで、認知症家族介護の先輩だと思っていたこの若僧の出る幕はございませんでした。

 遺産分割協議書が見つかって、叔父も施設に入るとなるといよいよスタートでございます。兄の成年後見人候補を家庭裁判所に申請するための医師の診断書は、まだ時間がかかりそうですが、ついに大きな歯車がギシギシと音を立てて動き出したといった感覚でございます。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性63才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

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