倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.95「夫亡き後、共に暮らす姪っ子のこと」
漫画家の倉田真由美さんは映画プロデューサーで夫の叶井俊太郎さん(享年56)が旅立ってから間もなく、姪っ子(妹の娘)と同居を開始した。倉田さんと高校生の娘、20代の姪、女3人の暮らしの中で「想定外」のことがたびだび起こるという。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。最新著『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』ほか、著書多数。
一緒に暮らす姪っ子のこと
「おじちゃんがおらんくなって寂しかろうけん、一緒に住んじゃるよ」
夫がいなくなって1か月も経たないうちに、近所で一人暮らしをしていた姪が我が家に転がり込んできました。当時社会人一年生で、東京生活も一年生だった姪も、今ではすっかり東京に馴染み、都会生活を謳歌しているようです。
当初は私も、「夫がいなくなって家が静かになるより、元気で明るい姪がいてくれたほうがいいだろう」という思いと、「家事分担などしてくれて、少し楽になるかもしれない」という思いとがありました。しかし、残念ながら後者のほうの思惑はまったく外れてしまいました。
娘の食事は基本的に私が管理しているので、食材が勝手になくなったりすることはありません。でも、姪はランダムです。私が用意することもあるし、お腹が空いて好きな時間に自分で作って食べていることもあります。私が買っていた食材を自由気ままに使うので、
「あ!夕食に使おうと思っていた肉がない!」
といった、想定外のことが起きることもしばしば。そして大抵汚した皿はシンクにそのままにしていて、私が洗う羽目になります。
また、ごく稀にキッチンを掃除してくれるのはいいんだけど、「賞味期限が切れとったけん」と、まだ使う気でいた調味料などをごっそり捨てられてしまったりしたことも。姪よ、おばちゃんは少々賞味期限が切れているものでも使う主義なのよ…と伝えましたが、姪は1日でも切れていたら嫌なタイプみたいです。
そして最初の頃は、野菜の使い方もひどいものでした。葉物の、葉部分だけをダーンと包丁で切って使って、残りの部分の無惨な姿を野菜室で目撃して脱力したものです。最近やらなくなったのは、諭したおかげというより「おばちゃん、作って」が増えたせいかもしれません。
とはいえ、元気で明るい姪がいると家庭が明るくなるのは想像していた通りでした。特に娘にとって、母親の私には言いにくい、相談できないことでも、姪には話したりしているようです。
「こっちゃん(娘のこと)、こんなことがあったらしいよ」
姪の口は固くないので、姪から娘の情報を聞くこともあります。中高生らしい話や悩みを、姪が聞いてくれるのはありがたいです。9才という年齢差は、近すぎず遠すぎずちょうどいいのかもしれません。
私も10代の頃、悩みごとや自分の身に起きたことを親には話せませんでした。姪のような、同性で年上のお姉さん的な存在がいたらよかったなと、二人を見ていると思います。
