注目の「自筆証書遺言」とは?「公正証書遺言」との違いを弁護士が解説!遺言書を残すメリットとは?「老後のライフプランを見直すいい機会に」
ひとり暮らしの母の介護、そして最近は同年代の訃報も聞くようになった60代記者。終活のひとつとして相続や遺言という言葉も気になり始めた。「60代は老後の人生を考える節目として『遺言書』を作成するのがおすすめです」と、相続問題に詳しい弁護士の本田桂子さん。60代から始める「遺言書」の基本や準備について、本田さんに話を伺った。
教えてくれた人
弁護士・本田桂子さん
行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーを経て司法試験合格。2018年、弁護士登録。遺言・相続・民事信託を得意とする東京・大田区の法律事務所で、相続に悩む中高年の相談にのっている。自分で遺言書を書くための『誰でも簡単につくれる遺言書キット 法務局保管制度対応版』など、終活に関する著書多数。
法改正で作成しやすくなった「自筆証書遺言」とは
そもそも、遺言書とはどんなもので、どういう人に必要なのだろうか。
「遺言書とは、将来、自分の遺産をどのように分けたいかという希望を、法的な形式に沿って書いた文書です。法的に有効な遺言書があればスムーズに遺産の承継ができ、相続トラブルを防ぐことができます」
こう解説してくれたのは、遺言や相続などに関する相談を多く受けている弁護士・本田桂子さんだ。法的な効力をもつ遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がある。
「『自筆証書遺言』とは、原則として遺言書の全文・日付・氏名を自筆で書き、押印して作成する遺言書のこと。
一方、『公正証書遺言』は遺言者が口頭で伝えた遺言内容を元に公証人が書面を作成し、公証役場で原本を保管するものです。2人以上の証人の立ち会いや作成費用が必要と、手続きに手間がかかりますが、法律の専門家である公証人が作るので形式的な不備の恐れがなく安心です。
どちらの遺言書も正しく作成されれば法的な効力がありますが、特に自筆証書遺言は法改正によって手軽に作成できるようになり、近年注目されるようになりました。
これまでの自筆証書遺言は、全文を自筆で書く必要があり、修正の仕方も複雑なので、高齢者や身体の不自由なかたにとっては負担がありましたが、2018年7月6日、いわゆる相続法が約40年ぶりに改正され、自筆証書遺言が作成しやすくなりました。
具体的には、2019年1月13日以降に作成する自筆証書遺言の財産目録について、パソコンでの入力や、不動産の登記事項証明書・預貯金通帳のコピーの添付も可能になるなど、遺言書作成のハードルが下がりました。
さらに2020年7月10日からは、法務局での『自筆証書遺言書保管制度』も始まりました。これは、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)に預けて、安全に保管してもらう制度。自筆証書遺言の紛失や改ざんを防ぎ、相続手続きを円滑に進めることを目的としています。保管の申請手数料は、遺言書一通につき3900円となっています。
こうした法改正により、遺言書を作成することへのハードルが下がってきているといえます」
※法務局「自筆証書遺言書保管制度」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
遺言書を作成したほうがいいのはどんな人?
特に以下のような人は、遺言書を作成しておくといいとのこと。
家族関係に問題を抱えている人
・離婚・再婚して前婚の子どもがいる人
・子どもがいない人
・内縁関係のパートナーがいる人
・家族仲がよくない人
・家族が海外に住んでいる人、認知症や行方不明の家族がいる人
法定相続分以外の分け方をしたい人
・特定の家族に財産を多めに(少なめ)にあげたい人
・お世話になった人や団体に財産をあげたい人
分けにくい財産がある人
・不動産や同族会社の株式など分けにくい財産がある人
・自分に何かあっても、後継者が事業を継続できるようにしたい人