偉人たちの言葉があなたの心をケアしてくれる「介護に疲れているあなたへ」コラムニスが贈る名言5選
誰しも心が疲れてしまうことはあるもの。特に介護中で日々奮闘している人は、知らず知らずにうちに、無理をしていることが多いかもしれない。「そんな人にこそ伝えたい」とコラムニストの石原壮一郎さんが、偉人たちが残した言葉を紹介してくれた。
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介護は毎日が苦難の連続です。その悩みやつらさは、なかなか人には話せません。誰かに愚痴をこぼしても、わかってもらえなかったり的外れなアドバイスをされたりして、逆に傷ついてしまうことも……。
状況を変えるのは簡単ではありませんが、とりあえずは「名言」の力を借りて、自分の心をケアしてあげてください。心が少し元気になれば、打つ手が見えてくるかもしれません。あなたの心を元気にするのは、何より介護している大切な人のためでもあります。
つらい心を癒してくれる本『人生が好転する95の言葉 大人のための名言ケア』(創元社)から、「介護に疲れているあなたをケアしてくれる5つの名言」をピックアップしました。名言は人類の叡智の集大成。じっくり噛みしめてみてください。
あなたに伝えたい名言その1
「太陽に顔を向けろ。影はあなたの後ろにできるから」
マオリ族(ニュージーランドの先住民族)のことわざ
どうせ顔を向けるなら、暗いほうよりも明るいほうがいいと、頭ではわかっています。しかし、気持ちが沈んでいると、輝いているほうやにぎやかなほうから、目をそらしがち。暗いほうや活気がないほうに、むしろ心惹かれたりします。
大切な人の介護をする日々は、心身ともに楽ではありません。介護のほかにも、人生には「ままならないこと」がたくさんあります。少しのあいだ顔を伏せて静かに過ごすのもいいでしょう。しかし、いつまでもうつむいているわけにはいきません。
顔を向けたい「太陽」は、状況によって違います。日々のささやかな楽しみを見つけるのもいいでしょう。介護している人からの感謝の言葉やふと見せてくれた笑顔も、あなたをあたたかく照らしてくれます。相手を傷つけることを言ってしまった場合は、きちんと謝罪の言葉を伝えるのも、「太陽」に顔を向ける行為です。どうしていいか迷ったら、まぶしいほうを目指しましょう。そうすれば、心にできた暗い影は自分から見えなくなります。
結論
「目の前の厳しい状況も、あなたを成長させる太陽である」
あなたに伝えたい名言その2
「幸せを数えたら、あなたはすぐ幸せになれる」
アルトゥル・ショーペンハウアー(ドイツの哲学者/1788~1860年)
絶望のどん底にいる人だって、少なくとも「生きている」という幸せは手にしています。まして、平穏な日々だけど何となく物足りないという状況なら、寝る家がある、友だちがいる、ご飯が食べられる……など、たくさんの幸せを数え上げられます。
介護というつらい現実に直面しているときは、気持ちが後ろ向きになって、幸せより不幸をリストアップしがち。そこで、いったんふんばってみましょう。不幸を数え始めたら、人はすぐ不幸になることができます。一度しかない人生なのに、不幸な状況を嘆いたり恨んだりしている場合ではありません。
この言葉は、つらい状況や苦しい状況にあるときにこそ、真価を発揮してくれます。今ある幸せやこれから訪れる幸せなど、全力で幸せを数え上げましょう。探せばきっと見つかります。「自分のいいところ」も、数え上げれば数え上げるほど、自分を好きになれます。毎日がんばっているあなたは、こちらを見つけるのはきっと難しくないでしょう。
結論
「自分の『幸せ』は自分だけのもの。他人がどう“幸せ”かは関係ない」
あなたに伝えたい名言その3
「後悔はたくさんした方がいいのです。悲しみをもみ消さないで、むきあって、慈しみましょう」
ヘンリー・デヴィッド・ソロー(アメリカの作家・詩人・博物学者/1817~1862年)
人生に後悔はつきものです。介護の日々も同じ。後悔はけっして悪いものではありません。ソローのこの言葉は「それがいつか自分から距離のあるひとつの思い出になるまで。深く後悔することは、もう一度生き直すことにつながります」と続きます。
「後悔しない生き方」というと、望ましい生き方のように聞こえます。しかし、「後悔しないこと」を目的にすると、安全策ばかりの人生を送ることになりかねません。ソローが言うように、むしろたくさん後悔して、したたかに自分の糧として、また次の一歩を踏み出したいところ。そこにはきっと新しい世界が広がっています。
あなたが今、後悔を抱えているとしたら、しっかりむきあって慈しんで「思い出」にしてしまいましょう。それが、後悔という過去のしつこい呪縛を振り払う唯一の方法であり、本当の意味での「後悔しない生き方」です。
結論
「人間は『後悔』を栄養にすることで、さらに大きく成長することができる」
あなたに伝えたい名言その4
「一瞬だけ幸福になりたいなら、復讐しなさい。永遠に幸福になりたいなら、許しなさい」
アンリ・ラコルデール(フランスの聖職者・説教家/1802~1861年)
仕事や友だちづきあいなど人間関係がこじれたときにかみ締めたい言葉ですが、介護をしているあなたにも、もしかしたら当てはまる場面があるかもしれません。理不尽な目に遭ったり、悪意のある言葉をぶつけられたりしたら、誰しも相手に激しい怒りを覚えます。「絶対に復讐(仕返し)してやる」と思うこともあるでしょう。
感情に突き動かされて、何らかの復讐をしたとします。相手にダメージを与えられたら、その瞬間は「ざまあみろ」と溜飲が下がるでしょう。しかし、人間は自分に都合よく物事を考える生き物です。復讐された側が「自分が先にひどいことをしたんだから仕方ない」と考えることはありません。「なぜ自分がこんな目に」と、こっちに怒りと恨みを抱きます。
そのまま「復讐」の応酬になったら、幸せな状態は永遠に訪れません。しかし、「許す」という決断ができれば、そこで負の連鎖は終わります。「酷い目に遭わされた分、自分が損をした」と思うかもしれませんが、その損は「広い心で許してやった」と思う気持ちよさで、十分におつりがくるでしょう。
結論
「復讐して快感を覚える人間より、許す快感を知る人間になりたい」
あなたに伝えたい名言その5
「主人公」
禅語
今では物語で中心的な役割を果たす人の意味で使われていますが、じつは仏教から生まれた言葉です。もともとは「自分の中にいて、自分を見守っているもうひとりの自分」という意味。きれいで純粋な心を持ち、疲れて思いやりがなくなったり時に邪悪な感情を持ってしまったりしている自分を見て、もしかしたら眉をひそめているかもしれません。
あなたの主人公は、あなたの味方です。困ったときや迷ったときは、「ねえねえ、主人公」と話しかけてみましょう。きっと解決策やアドバイスを提示してくれます。壁にぶち当たったときや激しく落ち込んだときも、主人公はあなたを悪いようにはしないはず。
人生というのは、思いどおりにいかないときもあります。意に反して悪役や汚れ役をやることもあるでしょう。しかし、どんなときも自分の人生において、あなたは輝ける主人公です。自分の主人公と力を合わせて、楽しい舞台を作っています。つらいときこそ折に触れて、力いっぱいの拍手を贈ってあげましょう。
結論
「自分の中の『主人公』と対話すればするほど、人生という舞台は磨かれる」
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さまざまな偉人が残した言葉や、世界各地で大昔から伝わっている言葉には、強く生きるための知恵や自分を元気づける秘訣が詰まっています。介護という袋小路に入っているように思える状況にも、きっと希望の光を差し込んでくれるでしょう。
『人生が好転する95の言葉 大人のための“名言ケア”』(創元社)では、古今東西の名言から「人間関係がラクになる言葉」「自信がわいてくる言葉」「心が軽くなる言葉」「前向きになれる言葉」「自分を好きになる言葉」を厳選して集めました。
今のあなたに必要な名言がきっと見つかります。将来の指標となる名言やこれからの人生であなたを支えてくれる名言にきっと出合えます。名言という頼もしい味方と手を取り合いながら、あなたの人生をあなたらしく胸を張って歩いて行ってください。
『人生が好転する95の言葉 大人のための“名言ケア”』(創元社)
石原壮一郎
1963(昭和38)年三重県生まれ。コラムニスト。1993年『大人養成講座』(扶桑社)がデビュー作にしてベストセラーに。以来、「大人」をキーワードに理想のコミュニケーションのあり方を追求している。『大人力検定』(文藝春秋)、『父親力検定』(岩崎書店)、『夫婦力検定』(実業之日本社)、『大人の言葉の選び方』(日本文芸社)、『失礼な一言』(新潮社)、『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)など著書多数。故郷を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。