「孫娘の格好が乱れているのが気になります」心を痛める祖父に毒蝮三太夫が授けた不安を解消する方法|「マムちゃんの毒入り相談室」第65回
「老婆心」という言葉があるが、年齢を重ねると心配症になる傾向があるのは、女性も男性も同じである。高校生の孫娘の格好が「不良そのもの」で、将来どうなるのかと心を痛める77歳の男性。マムシさんは「心配ない。大丈夫だよ!」と背中を叩きつつ、孫娘が危険な状態になっていないかどうかを見分ける方法を伝授する。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:高校生の孫娘が不良みたいな派手な恰好をしていて心配だ
ちょっと前まで夏みたいだったけど、さすがにだんだん寒くなってきた。気が付いたら、もう師走だよ。今年も元気に師走を迎えられて、オレはしわすだなー、なんてね。
12月20日は19回目の「マムちゃん寄席」だ。今回もナイツや春風亭一之輔をはじめ個性豊かな豪華メンバーが集まってくれる。会場のお客さんは、大いに笑って今年一年の疲れや悩みを吹き飛ばしてほしいね。ありがたいことに今回のチケットはもう完売だけど、次もやるからよろしく頼むよ。年に2回として、あと30回ぐらいはやらないとな。ハハハ。
今回は77歳の男性からの相談だ。高校生の孫娘のことを心配してる。
「高校生の孫娘が心配でなりません。小さい頃は素直でかわいかったのに、いつの間にか短いスカートを履いて、高校生なのにお化粧までしています。このあいだ遊びに来たときは、爪に派手な飾りをつけていて驚きました。
今でも『おじいちゃん、元気ー?』とやさしく接してはくれるんですが、格好は不良そのものです。このあいだ『そんな派手な格好してると、悪い男に騙されるぞ』と言ったら、『アハハ、おじいちゃんウケるー』と笑われました。
息子と嫁に『注意したほうがいいんじゃないか』と言っても、『今の子はあんなもんだから』と聞く耳を持ちません。妻も『若いんだからオシャレだってしたいわよ』と言うだけです。『服装の乱れは心の乱れ』だというのに、このままだと将来が心配です。ひとつ間違えたら、闇バイトに手を出したりするかもしれません。どうすればいいのでしょうか?」
回答:「ぜんぜん大丈夫だと思うよ。でも心配だよな、確かめるいい方法を教えよう」
なるほどなあ。おとっつぁん(孫娘にとってはお爺ちゃん。オレに言わせりゃジジイだ)が孫娘を心配する気持ちはよくわかるよ。かわいくて仕方ないんだろう。ただ、はっきり言って心配しすぎだな。
おとっつぁんの感覚では、短いスカートを履いて化粧をしたり爪に飾りを付けたりすると、「不良になった」と思うのかもしれない。でもね、息子夫婦や奥さんが言うように、それが今の子のスタイルなんだよ。世間への反抗とか、そういうつもりはまったくない。今もやさしく接してくれるんだったら、ぜんぜん大丈夫だ。
オレも聖徳大学で女子学生に教えてるけど、ここ数年、髪の毛の色がカラフルになった。黒い毛の学生のほうが少ないぐらいだ。「ジーンズはダメ」って決まりがあるぐらいの固い大学で、マジメな学生ばっかりなんだけどね。髪を染めるのは今は単なるオシャレの一環で、不良のしるしでも「心の乱れ」でも何でもないってことだ。
もしかしたらおとっつぁんは、最近の若い子がどんな格好をしてるか、あんまり見たことがないんじゃないか。だから孫娘の今風の格好を見てビックリしちゃう。たまには休日の繁華街に行って、道行く女の子のファッションを観察してみるといいよ。あんまりジロジロ見てると、「ジジイ、何見てんだ!」って怒られそうだけどね。
オレたちが若い頃は「太陽族」ってのが流行ってた。おとっつぁんの若い頃は「みゆき族」が出てきた時期かな。いつの時代も大人たちは若者の目新しいファッションに眉をひそめがちだけど、みんなけっこう中身はしっかりしてた。それと同じことだよ。
「そうは言っても心配なんだ」って言うかもしれない。たしかに、本当に道を外れかけている可能性だって、ないとは言えないもんな。孫娘が大丈夫かどうか、確かめるいい方法がある。それは、手紙を書いてもらうことだ。ハガキだっていいよ。でも、スマホで打ったメールやLINEだと意味がない。手書きで書いた手紙を送ってもらおう。
文面もだけど文字の様子から、相手の様子がしっかり伝わってくる。字が上手とか下手とかは関係ない。女子高生っぽい文字だっていい。文字にちゃんと気持ちや力がこもっているか、言葉遣いはちゃんとしてるか、「心の乱れ」は、そういうところに表われてくる。どう見ても危険な状態なんじゃないかと思ったら、あらためて息子夫婦と話し合おう。
そもそも「手紙を書いてくれ」って言って、素直に書いてくれたら、心配する必要はまったくないよ。昔から「老婆心」って言って、ババアになると心配しすぎるって言われてたけど、ジジイも「老爺心」を持ちがちだよな。だけど、闇バイトのことを知ってるぐらい世の中の動きに敏感なのは、悪いことじゃない。情報に対するアンテナが鋭いってことだ。
これからも、しっかり孫娘のことを見守ってやってくれ。うるさい口出しは無用だけど、自分のことを心配してくれている人がいるっていう実感は、本人にとって大きな力になるはずだ。今だって、きっとありがたいと思ってるよ。ジイジ、がんばれ!
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。88歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた最新刊『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。
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石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」「失礼な一言」など著書多数。新著『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)と『大人のための“名言ケア”』(創元社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。