吐く力を鍛えて誤嚥性肺炎を予防!60代以降の男性は要注意「のど仏の位置を鏡でチェック!」【医師監修】
飲み込む力と共に鍛えたいのが、誤嚥しそうになった時に咳をする「吐き出す力」だ。西山医師が「特に効果が期待できる」という体操が次の2つ。
【1】ハフィング訓練(1セット×10回を好きな時に1日3セット以上)
<1>背筋を伸ばし胸に手を当て数回深呼吸後、ゆっくり息を吸い込む
<2>胸を押しながら、声を出さず勢いよく「ハッ」と息を吐き出す
【ポイント】
痰や異物を吐き出すための訓練のひとつ。
「意識的に息を強く吐き出すことで、誤嚥した異物を吐き出す力を鍛えます。毎日継続して行なうことで、体にそのやり方を覚えさせることが大切です」
【2】ペットボトル体操(1セット×10回を食事前などに1日3セット以上)
<1>手でつぶせる軟らかなペットボトルをくわえる
<2>息を思い切り吸い込み、一息でペットボトルをしぼませる
<3>息を強く吹き込んで一気にペットボトルを膨らませる
【ポイント】
肺活量を増やし、嚥下機能を維持、向上させることを目的とする。
「最初は、水やお茶で使われる比較的軟らかい300ml程度のペットボトルから始め、大きなサイズへとハードルを上げていくのが理想です。ただし、血圧が高い人は主治医に相談してから行なうようにしてください」
カラオケも効果的!『赤いスイートピー』や『Forever Love』を歌って飲み込む力を維持しよう
このほか「のどトレ」のひとつとして西山医師が推奨するのがカラオケによる「ハイトーンボイストレーニング」だ。
「嚥下と発声はほぼ同じ筋肉を使っており、カラオケは飲み込む力を維持するうえで非常に有効なトレーニングです。できるだけキーの高い曲を歌うのがポイントで、松田聖子さんの『赤いスイートピー』やX JAPANの『Forever Love』にチャレンジしてみましょう」
筋肉は一般的に約6週間かけて成長するため、毎日コツコツと行なえば、次第にのどの筋力がアップするという。
「脳卒中がきっかけで体が弱り嚥下機能が低下、食が細くなった70代の女性患者さんに自宅でのどトレを続けてもらうと、徐々に食べられるようになり体力が回復しました。入院先では『余命わずか』と思われていましたが、それから10年、80代の今もお元気です」
誤嚥を防ぐには、食生活や食習慣を見直すことも必要だ。
「ご飯やおかずを口の中いっぱいに頬張って食べる方、テレビなどを見ながら食事をする『ながら食い』の習慣がある方は要注意。嚥下処理が追い付かない、或いは不十分で誤嚥につながりやすくなります。
また、誤嚥を心配して上を向いて水分を喉に流し込むのは逆効果です。のど仏が開き、誤嚥を招きやすくなるので絶対にやめてください。水分補給時の誤嚥を防ぐなら、お猪口でちびちびお酒を飲むような『うなずき嚥下』が理想です」
食べ物では、「パサパサ」して飲み込みにくいカステラ、「ポロポロ」して器官に入りやすい鶏そぼろ、「ペタペタ」でのどに貼りつきやすい板のりやかまぼこにも気を付けたい。
「新米の美味しい季節ですが、ご飯(白米)でむせやすい人は、適度にとろみがある生卵や、とろろなどをかけて食べるのもよいでしょう」
嚥下力の低下は自覚症状がないまま進行することが少なくない。生涯、美味しくものを食べて、健康的な暮らしをするために、のどの筋力強化は不可欠だ。
※週刊ポスト2024年11月8・15日号
●命の危険にもつながる誤嚥性肺炎を防ぐ|予防法やトレーニング法【まとめ】