「お金がなくて生活が苦しいの息子にも援助してもらえない」絶望する68歳の女性を毒蝮三太夫が励ます「幸せだから笑うんじゃない、笑うから幸せなんだ」|「マムちゃんの毒入り相談室」第63回
毎日を心穏やかに暮らすために欠かせないのは、やはり「お金」である。金銭的に「ひじょうに苦しい状態が続いている」と訴える68歳の女性。息子に助けを求めたものの、つれなく断わられてショックを受けている。マムシさんはあたたかく寄り添いつつ「自分にやれる仕事を探してみよう。そして、笑顔が大事だ」と奮起を促す。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「金銭的に苦しくて何の楽しみもなく生きるのがつらい」
今、日本には100歳以上のジジイとババアが9万5000人以上いる。88%はババアらしい。平成10年に1万人を超えて、毎年どんどん増えている。全員を一堂に集めたら、東京ドーム2個分が満員になるわけだ。想像すると、かなり壮観な光景だね。
俺だって、こう見えても50歳を超えてそれなりの年月が経ったけど、バリバリ活躍している先輩たちを見るとこっちも元気になる。このあいだ「ミュージックプレゼント」で行った西荻窪の『須田時計メガネ店』のオヤジは、すごかったなあ。11月に98歳になるんだけど、活舌はいいし、まだまだ時計の修理だってできる。しかも、若いころから登山が趣味で、今でも毎週高尾山に登ってるっていうからたいしたもんだ。
先輩たちに元気の秘訣を聞くと、みんな口をそろえて「たくさん食べることだ」って言うよね。俺もバランスよく食べて、よくしゃべり、よく動いて、100歳と言わず200歳ぐらいまでがんばるとするか。
今回の相談は68歳の女性からだ。これはまた、ずいぶん元気がないな。
「自身の年金生活についてのご相談です。 老齢年金で1人暮らしております。 安価なアパートでつましく暮らしていますが、金銭的にひじょうに苦しい状態が続いています。
独身の息子は県外に就職して引越ししました。金銭的に助けて欲しいと話しましたが、自分の生活で精一杯、貸せない、面倒も見ないと言い切られました。
未来に絶望して、生きるのがつらくなりました。このまま何の張り合いも楽しみもなく生きていくしかないのでしょうか」
回答:「まず仕事を探してみるのはどうだ?そして、生活の中に笑いを。笑顔が幸せを呼ぶんだよ」
なるほどね。詳しいことはわからないけど、息子さんには息子さんの事情があるんだろう。親子のあいだで、これまでに何かあったのかもしれない。あなたは「自分が頼めば、きっと助けてくれる」と思っていた息子さんにつれなくされて、それがショックだったんだろうね。ただ、息子さんを責めることはできないと俺は思うな。
もし今のあなたが、身体の調子が悪くて働けないなら話は別だけど、健康で動けるんだったら、社会との接点を持つという意味でも、自分にやれる仕事を探してみよう。住んでいる地域のシルバー人材センターに登録すれば、あなたに合った仕事を紹介してくれる。話し相手もできるし、多少の収入も得られて、気持ちが楽になるんじゃないかな。
これは仮定を元にした俺の勝手な想像だけど、息子さんはあなたがまだまだ働ける状態なのに、最初から自分をアテにされたことにカチンときて、きつい言い方になったんじゃないかな。この先、もっと歳を取って、息子さんの助けがどうしても必要となったら、しっかり向き合って頼めば、さすがに知らん顔はしないと思う。今、すでに身体が言うことを聞かない状態なら、ヘンにカッコつけていないで、そのことをきちんと伝えよう。
生活保護などの公的なセーフティネットもあるけど、それを利用するにしたって、まずは息子さんと腹を割って話し合って、息子さんの気持ちや状況を聞いたほうがいい。いきなり役所に行って相談しても、「息子さんがいるじゃないですか」って言われそうだ。
あなたが苦しい気持ちで毎日を過ごしているのはよくわかる。弱音のひとつも吐きたくなるだろう。ただ、「未来に絶望して、生きていくのがつらい」とまで思い詰めているのは、ちょっと心配だな。もともと悲観的に物事を考えるタチなのかもしれないけど、張り合いも楽しみもなく生きるかどうかは、要は自分次第だ。周囲や環境が決めるわけじゃない。
今日、朝起きてから今までを思い出してみよう。あなたは、何回笑ったかな。テレビを見ながらでも人と話しながらでもいいんだけど、生活の中に笑いがないと、人は物事をどんどん悲観的に考えるようになる。誰かと話をすることも大きな意味がある。話の内容なんてどうだっていい。笑顔で言葉を交わすことで、心が呼吸を始めて息苦しさが薄れていくんだ。
未来に絶望して自分は不幸だと暗い顔をしてたら、ますます悪いことが引き寄せられてくる。困っている問題に対して何ができるかを具体的に考えるのは大事だけど、漠然と「困った、どうしよう」と悩んでいても気持ちが滅入るだけで意味はない。
昔から「笑う門には福来る」って言うけど、あれは真理だね。笑顔は笑顔を呼ぶし、幸せな気持ちにもなれる。フランスの偉い哲学者は「幸せだから笑うんじゃない、笑うから幸せなんだ」と言ったらしい。まずは笑顔が大事だ。とりあえず、漫才や落語を見まくってみよう。ここに相談を送ってくれたってことは、きっとスマホも使えるわけだよな。YouTubeの「マムちゃんねる【公式】」は、なかなか笑えるらしいぞ。ハハハ。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。88歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた最新刊『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中
石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」「失礼な一言」など著書多数。新著『押してはいけない 妻のスイッチ』(青春出版社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。
定価:1265円(税込)
青春新書プレイブックス