倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.46「亡き夫の誕生日に思うこと」
倉田真由美さんの夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さん(享年56)が、すい臓がんにより余命宣告を受けたのは2022年6月のことだった。闘病生活を続け今年2月に旅立ってから、初めて迎える夫の誕生日がやってきて――。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。
夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
夫の誕生日のこと
過日、9月18日は夫の誕生日でした。
生きていたら57才になっていた夫。イベント好き、記念日好きの夫、生前は自分も含め家族の誕生日には必ずケーキを買って皆で食べていましたし、プレゼントをねだることもありました。
我が家に残る高めの安眠枕や仕事用の椅子は、夫にねだられて私が買ったものです(逆に私がおねだりしたものは何もないですが…)。
でも、去年は家族でお祝いすることができませんでした。
夫の、生前最後の誕生日。56才になったその日、夫は入院していました。なかなか成功しなかった胆管のステント交換手術がやっと終わって様子見期間の終了間際、翌日19日には帰宅できるという日でした。
実は誕生日前日の17日夜、夫から「明日は誕生日だし、看護師に一時帰宅したいと申し出たらOKもらえた」と電話を受けていました。
だからてっきり帰宅してくると思っていたんですが、当日になって「コロナが流行っているから外出禁止」と言われそれが叶わなくなってしまいました。
18日の朝かかってきた電話の、「ダメだって」とがっかりした夫の声は今も私のスマホに残っています。
「早く出たい、早く帰りたいよ」
「うん、そうだよね。明日退院だからもう少しだよ。体調はどう?」
「夕方ちょっと熱出たけど、帰りたいから内緒にしてる。今はうんこがたくさん出て、気分よくなった」
1か月近い入院だったこともあり、夫の気持ちは限界でした。
私は「うんこがたくさん出るってことは、ちゃんと消化できてるってことだね」と、前向きに解釈して夫の帰宅を待ちわびていました。
入院生活を終えて帰宅した夫の言葉
誕生日が過ぎた19日朝、私は夫を迎えに行って一緒に帰宅しました。長い入院生活で一段と痩せてしまっていたけど、テンションも高く元気でした。外に出られたのがよほど嬉しかったんだと思います。
「俺がいないと散らかるなあ」
帰宅後一息つくと、床をフローリングワイパーで拭き出した夫。
文句を言っているようでむしろこっちをクスッと笑わせるような言い方、仕草に、この人のこういうところ好きだなあとその姿を眺めていたのを覚えています。
倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯
夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。
『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』
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