「すぐ大声で怒鳴る上司が苦手です…。どう付き合ったらいいでしょうか?」悩む女性に毒蝮三太夫がアドバイス「あなたは悪くない」|「マムちゃんの毒入り相談室」第61回
仕事をする上で、上司や同僚との相性は極めて重要である。「上司と気が合わない」と悩んでいる60歳の女性。「パワハラ」と言っていい仕打ちも受けているようだ。仕事は辞めたくないけど、その上司のことを考えると憂鬱だという苦しい状況から、どうすれば抜け出せるのか。マムシさんはその上司に憤りつつ、果敢に戦うことを勧める。(聞き手・石原壮一郎)
第61回 パート先のパワハラ上司にどういう態度を取ればいいのか
今年も8月15日がやってくる。日本が戦争に負けて79年目の「終戦の日」だ。俺は9歳のときに城南大空襲に遭って、おふくろと火の海の中を逃げ回った。そういう体験を話せる人間も、ずいぶん減ってしまった。元気に生かしてもらっているものの役目として、若い人に何度でも「戦争は二度としちゃいけないんだ」ってことを伝えていきたい。
今回の相談は、パート先での人間関係に悩んでいる60歳の女性からだ。おいおい、とんでもないパワハラ上司だな。
「現在、週3日、不動産会社で事務の仕事をパートでやっています。そこの上司と気が合わず悩んでいます。先日も、私の連絡不行き届きがあったと大声で怒鳴られました。実際は、その上司が連絡を確認していなかったことが原因で、私は悪くないのですが、一度怒り始めると聞く耳を持ちません。
この会社で働いてもう3年になりますし、ほかの仕事仲間はいい人が多いので、できれば辞めたくないのですが、その上司のこと考えると憂鬱でしかたがありません。こういう苦手な人に対して、どういう態度をとるのがいいのでしょうか? その人の前に出ると緊張して、自分もいつものように振舞えず、失敗することが多いのも事実です」
回答:そんなパワハラ上司、許されないよ。胸を張ってひと泡吹かせる戦い方を考えよう
これはねえ、気が合うとか合わないとかの話じゃない。自分の落ち度なのに部下のせいにして、大声で怒鳴りつけるなんて、今は許される時代じゃないよ。たとえ部下の落ち度だったとしても、大声で怒鳴ったりしたら部下を委縮させるだけだ。ただ威張ってるだけで、そんなのは指導でも何でもない。
いつ大声で怒鳴り出すかわからない上司を持ったら、部下は伸び伸びと働けないよ。あなたは、上司の前に出ると緊張して失敗が多いと書いてあるけど、そりゃしょうがない。悪いのはビビらせるような態度を取る上司だ。あなたが自分を責める必要はない。
パワハラやDV(ドメスティックバイオレンス)の被害者は、「自分に悪いところがあるから、相手が怒るんだ」と考える傾向があるらしい。自分がひどい目に遭わなきゃいけない理由を探そうとするわけだ。する側は「自分は正しいことをしてる」ぐらいに思ってるし、「お前が悪いからだ」なんて言って洗脳してくる。とんでもない話だ。
繰り返して言うけど、あなたは悪くない。まして、あなたが会社を辞める必要なんてない。そんなことをしたって、上司は反省なんかしないよ。ますます付け上がるだけだ。3年も勤めてるってことは、あなたは職場に必要な存在だってことだ。堂々と胸を張って、最低の野郎に、ひと泡吹かせる戦い方を考えよう。
ひどい目に遭わされているのは、あなただけじゃないはずだ。まわりの同僚に「あの上司の態度をどう思いますか」って聞いて、まずは仲間を作ろう。孤立しないための準備を整えた上で、せっせと記録を残す。ボイスレコーダーで上司の発言を録音したり、やり取りをメモしたりして、パワハラの証拠を集めるんだ。同僚と協力して集めてもいい。
ある程度そろったら、その上司のさらに上司に相談してみる。勤め先の規模がわかんないけど、小さい会社ならいきなり社長がいいかな。何も対応してくれないようなら、厚生労働省が設置しているパワハラの相談窓口に連絡してみる手もある。らちが明かなかったら、怪文書のひとつもまいてやれ。あることないことじゃなくて、あったことだけ書いて。
フランスのパリではオリンピックが終わって、8月28日からはパラリンピックが始まる。フランス国旗の三色が「自由・平等・博愛」を意味しているっていうのは、有名な話だ。会社や職場に必要なのは、その3つの精神だよ。これは家庭も同じだな。
自由にモノが言えて、上司と部下は役割の違いはあってもあくまで平等で、お互いがお互いを思いやる。そうじゃないと安心して働けないし、ひとりひとりが能力を発揮できない。昔の日本の会社はパワハラを大目に見る風潮があった。「鬼上司」が持てはやされたりしてね。そんなんだから、諸外国に比べて生産性が低いって話が出てくるんじゃないかな。
俺が言うのはヘンかもしれないけど、声がデカいヤツが大きな顔をしてるのは間違ってる。そんな組織に未来はないよ。声のデカさっていうのは、まわりを黙らせるために使うもんじゃない。みんなを明るく楽しい気持ちにして、お互いにデカい声を出し合うために使うもんだ。だから俺は、これからもデカい声を出し続ける。みんなでデカい声を出して元気になって、暑さをぶっ飛ばそうじゃないか。ハハハ。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。88歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた最新刊『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。
石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」「失礼な一言」など著書多数。新著『押してはいけない 妻のスイッチ』(青春出版社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。
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