【高齢者の爪切り】多くの介護現場で対応に苦慮している現状が明らかに「医療との連携や教育制度の充実が課題」
介護職の人を対象にした「巻き爪ケア」に関する調査によると、介護施設利用者の約9割の人が足や爪にトラブルを抱えていることが判明。原則、トラブルを発症した爪を切るのは医療行為のため、特定の資格がないと行うことができない。しかし、介護現場では爪のケアが求められている――。調査結果をもとに、高齢者の爪ケアの実態や現場の声を詳しくご紹介する。
介護福祉士や訪問ヘルパーでも要介護者の爪は切ることができる?
高齢者のニーズも多様化しており、介護福祉士や訪問ヘルパーの仕事の幅も広がりつつあるのが現状だ。今まで医師や看護師しかできなかった「爪切り」だが、2005年から「血圧・体温測定」などと並び、一部の医療行為が”医療的ケア”と解釈される形で、介護福祉士や訪問ヘルパーでもできるようになった。
現在、訪問先で爪切りを行うことは珍しくないが、医師法によって巻き爪、化膿や炎症、糖尿病といった異常や皮膚に病変がある場合は、医療行為となり、原則爪を切ることはできない。
では、実際の介護現場では利用者の爪切りに関してどのように処置しているのだろうか。実態を調べるために、巻き爪や陥入爪治療の専門サイトを運営する合同会社ひまわりコーポレーションが介護士、訪問ヘルパー、看護助手を対象に調査を実施。1004人が回答した調査結果をみてみよう。
「要介護者の足の爪ケア」介護従事者の9割以上が「必要」と回答
「足の爪のケアは、どのくらい必要だと思いますか?」という質問に対して、「とても重要だと思う(44.6%)」「ある程度は必要だと思う(48.1%)」「あまり必要ではないと思う(5.9%)」「不要だと思う(1.4%)」と、 必要があるという回答が9割を超えた。
重要だと思う理由を詳しく聞いたところ、
●「裸足で床を歩く際、爪がカーペットなどに引っかかって転倒するリスクがあり、爪切りはその防止策にもなると思うので重要だと考えています」(20代/男性/岐阜県)
●「痛みを伴うようだと利用者は歩行を嫌がるようになり、それがきっかけで歩行困難になることもあるためです」(40代/男性/埼玉県)
●「高齢者の場合は感覚が鈍っていることもあり、爪切りによって足に炎症が起きても本人は気付きにくく、全身性の症状に移行する可能性もあります」(50代/女性/栃木県)
●「自由に歩けなくなると認知症のリスクも高まるため」(50代/男性/宮城県)
と足の爪ケアは疎かにはできないと考えている様子がうかがえる。
「担当している利用者の中に足に関するトラブル(ヒザの痛みや爪の異常)を抱えている方はいますか?」という質問には、9割以上が「はい(92.8%)」と回答した。
「担当している利用者の中で、爪に関するトラブルで抱えているものを教えてください」という質問では、「爪の水虫にかかっている(39.4%)」が最も多く、「爪が巻いている(痛みはない)(37.0%)」「爪が二層に割れている(33.3%)」という回答が続いた。
具体的に介護・介助の現場ではどのように足の爪を切っているのだろうか。
●「手の簡単な爪は切っています。難しい足の爪は看護師や医師が切っています」(30代/男性/鳥取県)。
●「利用者の状態によって、爪、ヤスリ、ネイル用の物と何種類かの道具を使って切っています。例えば、一般的な爪切りは2種類ほど爪切りを使い分けて大まかに切り、小さな爪や逆剥けは別の爪切りで切る。それらが終わったら固めのヤスリで整えてから柔らかめのヤスリで仕上げます」(40代/女性/大阪府)
●「深爪にならないように気をつけています。また、厚くて切りづらい場合はヤスリで削ったり、爪白癬(つめはくせん)でボロボロになって痛みや炎症があったりする時は看護師の指示を仰ぐようにしています」(50代/女性/栃木県)
という回答であった。ケア難しい、治療が必要な足の爪に対しては医師や看護師の意見を仰いで対応しているようだ。
合同会社ひまわりコーポレーション代表であり、形成外科医の簗由一郎医師は今回のアンケート結果について、
「今回の調査で介護現場において、足の爪への対応に苦慮している現状が改めて認識されました。
2005年の厚生労働省の通知をきっかけに、非医療者による足の爪ケア実施の流れが進んでいます。私も医療現場だけで全てを対応するのは難しいと考えているため今の流れは賛成ですし、社会情勢を考えると少しずつ加速していくと思います。
高齢者の足には思わぬ疾患が隠れていることもあるため、より緊密な医療との連携やケアを支える人たちへの教育制度の充実が今後の課題だと考えています」
と高齢者の足の爪ケアの重要性と今後の課題を語った。
悩み多き高齢者の足の爪トラブル。つまづきや転倒を防ぎ、歩行が困難にならないようにするためにも若いうちからケアを怠らないようにしたい。
【データ】
専門医と学ぶ巻き爪・陥入爪治療の相談室
https://medical-media.jp
巻き爪セルフ矯正『ネイル・エイド』
https://medical-media.jp/nailaid
※ひまわりコーポレーションの発表したプレスリリース(2024年2月14日)を元に記事を作成。
図表/ひまわりコーポレーション提供 構成・文/松藤浩一
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