「娘が同棲している」と他人に話す友人に違和感…結婚前にお試しで同棲するのはイマドキ当たり前?毒蝮がズバリ回答|「マムちゃんの毒入り相談室」第56回
いつの時代も「世代間ギャップ」は存在する。友人から、「娘が同棲を始めた」という話を聞いた56歳の女性。娘さんの行動にも、それを隠さずペラペラ話す友人にも違和感を覚えたと訴える。マムシさんは「むしろ“お試し”の期間があったほうがいい」と断言。その上で「結婚相手にふさわしいかどうかを見分けるポイント」を伝授する。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「結婚前に“お試し”で同棲をするのは当たり前ですか?
やっぱり落語はいいね。落語はすごいよ。2月23日(金)の夜に外山恵理ちゃんといっしょに「昭和落語名演 秘蔵音源CDコレクション プレゼンツ ちょいといい噺を聴きたくなってきた 今、ふたたびの古今亭志ん朝」って特別番組をやった。大沢悠里ちゃんも出てくれて、志ん朝さんや盟友の立川談志の話をたっぷりできて楽しかったな。初めて公にした話もたくさんあった。
2月14日に発売が始まった「昭和落語名演 秘蔵音源CDコレクション」のシリーズには、民法ラジオ局5社が持ってた昭和の名人たちの貴重な音源がたっぷり詰まってる。俺も昔なじみの噺家たちと、あらためて話してみるか。積もる話もいっぱいあるしね。
今回のお悩みは、56歳の女性からだ。なるほど、いろいろ引っかかってるわけだな。
「私には子どもがいません。友人の多くは、そろそろお子さんが大学を卒業した、就職したという状況で、たまに会って話すとお子さんがらみの話題が多いです。それ自体は別にいいのですが、先日、久しぶりに会った友人から、娘さんが同棲を始めたという話を聞きました。
最近は、結婚前に一緒に住んで、いわゆる“お試し”をするのが当たり前らしいのですが、正直私は、そのことに違和感を覚えています。よそのお子さんのことなので、余計な口出しはしませんでした。同棲を何とも思わないこともですが、それほど親しくない人(私)に、自分の娘が結婚前に男性と一緒に住んでいるとペラペラ話す感覚にも、ちょっとついていけません。毒蝮さんはどう思われますか?」
回答:「俺は、お試し同棲はいいことだと思うよ。それより気になるのは…」
この質問をもらって、年頃の息子や娘がいる世代の知り合い何人かに聞いてみた。どうやら今は、結婚前に“お試し”の同棲をするのは珍しくもなんともないみたいだな。俺は、いいことだと思う。お互い、いっしょに住んでみないとわからないことはいっぱいある。
恋人として付き合っていても、相手には自分のいいところしか見せてないからね。いざ結婚して「こんなはずじゃなかった」と思うことは、男にも女にもあるんじゃないかな。みんながみんな結婚前に“お試し”をするようになったら、きっと離婚率も低下するよ。
あなたの友だちは、娘の同棲を恥ずかしいことだとはまったく思っていないわけだ。だから、さほど親しくないあなたにも話してくれた。もちろん、あんまり大っぴらにすることじゃないと思うあなたの感覚も、けっして「間違い」ってわけじゃない。どっちが正解でどっちが間違いって話じゃなくて、それぞれ感覚が違うってだけだからね。
口出しをしなかったっていうのは、賢明な判断だよ。大人の分別だ。ちょっと気になるのは、言ってみれば自分とは関係ない話なのに、あなたが自分の中の違和感をずっと引きずっているところだ。単に「ヒマだから」だったらいいんだけどね。
もしかしたら心の奥底で、その友だちに対抗意識みたいなものを抱いているのかもしれない。その友だちに限らず、子どもがいる人をうらやむ気持ちがあるのかもしれない。いや、勝手に気持ちを想像するのは失礼だな。的外れだったら聞き流してくれ。だけど、もし少しでも思い当たる節があるなら、そんなくだらない感情はさっさと捨て去るに限る。
こんなことを言えるのは、ウチの夫婦も子どもがいないからだ。若い頃は子どもを連れた夫婦を見ると、複雑な気持ちになったこともあった。今はもう何とも思ってない。それどころか、いないおかげで夫婦がお互いを大事にできて、仲良くやれてるぐらいに思ってる。それぞれの幸せがあるんだ。
結婚前の同棲に話を戻すと、せっかくの“お試し”のあいだに、相手のどこを見ればいいかを考えてみよう。男も女も大きな違いはない。清潔感があるとか裏表がないといった当たり前のこと以外だと、同棲相手であるこっちの親を大事にしてくれるかどうかはしっかり見たほうがいいな。会いたがらないとか、会っても無愛想なヤツは要注意だ。
同性に慕われているかどうかも、同棲しているあいだに見極めよう。ダジャレが言いたいわけじゃないぞ。同性の友だちが多かったり、同性の後輩に慕われていたりするヤツは、それだけで信用できる。将来性もあると言っていいんじゃないかな。
それと、長いあいだ仕事でたくさんの人を見てきて思うのは、そいつが「仕事を本気でやっているかどうか」は大きなポイントだ。どんな仕事でも、向上心を持って労を惜しまず取り組んでいるヤツもいれば、「金さえもらえりゃいい」って了見で手を抜くことしか考えてないヤツもいる。仕事に本気になれないヤツは、生きることにも本気になれない。俺たちの時代は、これは男の判断基準だったけど、今は女にも言えるだろうね。
80代の俺たち世代も、まだ50代のあなたも同じだけど、大人にとってのいちばん大切な役割は、若者を応援してやることだ。考え方や感覚の違いを感じることもあるけど、応援の気持ちを忘れないようにして、あたたかい目を向けてやろうじゃないか。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。87歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた最新刊『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。
石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」『失礼な一言』など著書多数。新著『押してはいけない 妻のスイッチ』(青春出版社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。