日1日と弱っていく父。食事も摂れなくなり家族の気持ちは焦ります【実家は 老々介護中 Vol.34】
81才になる父は、がん・認知症・統合失調症と診断され、母が在宅介護をしています。美容ライターの私と3歳上の兄は、実家に通って母を手伝っています。体調が不安定な父は、介護スケジュールどおりに過ごせないことも増えて、もう食べ物も喉を通らなくなってきました。無理に食べさせて疲れさせてしまうこともあり、誰のための介護なのか? 家族の自問自答が続きます。
訪問看護師さんが寝たきりの父にシャンプーしてくれました
訪問入浴の日に調子が悪く、入浴がとりやめになった父は、「頭がかゆい」と訪問看護師さんに訴えていました。
「頭洗いたいですよね、うんうん」と看護師さん。父の腰周りにペットシートを敷いているのを見つけると、「これまだありますか? 頭の下に敷いたら、寝たままシャンプーできますよ!」と言ってくださいました。
ペットのトイレに敷くペットシートを、介護に役立ている人は多いと思います。うちではオムツ替えでベッドを汚さないように使っていたのですが、こんなことにも役立つとは。看護師さんは、ペットシートを父の頭の下に敷き、肩には尿取りパッドを置いて水はねをガード。泡立てたシャンプーで頭皮をゴシゴシ洗ってくれて、100円ショップのドレッシング入れでぬるま湯をピューッとかけてすすぎ、あっという間に洗髪が終了!
→100円ショップの介護に役立つグッズ5選|失敗しない選び方を家事アドバイザーが指南
排泄グッズを顔まわりに使うことに抵抗がなくはないけど、父も私たちも、この際もう何でもいいです。
「ペットシートが無かったらオムツでも十分ですよ」と看護師さん。ペットシートもオムツも、うちで使っているのは1枚100円くらい。これなら惜しくないし、使い捨てできて便利です。
看護師さんの話では、「寝たきりだと髪が短くても頭の下でこすれてからまっちゃうんですよね。濡らすとキュッとかたい団子になって、切るしかなくなっちゃうんです。そこを無理にとかして頭皮がはがれちゃう人もいるんですよ。頭皮の血行がよくなりますし、汚れもかなり取れるので、髪はとかしたほうがいいかもしれません」とのこと。
そこで母は、今、髪を整えるのに手が回らないほど、父が弱ってきて手がかること、食事を摂りたがらず、介護ゼリーを食べさせるだけでかなり時間がかかり家族の負担になっていること、何をしていてもすぐ眠ってしまい、1日のスケジュールがうまく回らないことなどを伝えました。
看護師:「甘くない味のものがお好きでしたよね! スープ味、豆腐味とかでしたね」
母:「はい。でも、最近はあまり食べないですねえ」
私:「父が『いらない』っていうのに、『いや、がんばって食べなきゃダメだよ』って、強制みたいになってしまって」
母:「食べてくれたらっていうのは、こちらの勝手な希望でもありますしねえ」
看護師さんは、ご家族の皆さんはよく頑張っていらっしゃるので、食べられるだけで大丈夫ですよ、とにこやかに帰って行かれました。介護のプロに気持ちを話せるおかげで、私たちの気持ちが軽くなっていますが、最近は答えの出ない話ばかりです。
翌日、訪問診療のお医者さんと、点滴を始めるか、どうしましょう? という話になり、「お父さんは食べたくないんですもんねえ。じゃあ、点滴しないで、食べてもらえるよう頑張ってみてから考えましょうか。何でもいいですよ。ポテトチップでも、アイスでも」
いよいよこの段階が来たか、という感じではあります。
父は最近、入れ歯を外しっぱなしで、アゴがキュッと上がり口元がシワシワ。一気に老け込んだ感じです。入れ歯を長いこと外していると、口内のかたちが変わって合わなくなってしまうんですね。こんなに食べられなくなるなら、日中は入れ歯を入れて生活するように、もっと気をつければ良かった。後悔は数えればキリがないです。
また1日、どうにか過ごせた父が、明日も普通に過ごせるでしょうか。それはまた明日考えます…。
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(81才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛
●終末期の症状を知っておきましょう…看取りの時に何をしてあげればいいのか|700人看取った看護師がアドバイス
●「父にひと目会いたい」孫や来客に突然怒る父、家族もイライラ…。在宅介護の日々は続きます【実家は 老々介護中 Vol.33】