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「介護が必要になっても自立したい親」と「家族で介護したい子」 調査でわかった親世代子世代の意識のズレ「まずは会話が大切」と識者

 ダスキンが展開するヘルスレント事業(※1)が、「介護の日」(11月11日)を前に、60代〜80代の親世代1,000人、20代〜50代の子世代1,000人の計2,000人を対象に、『介護に対するアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)』に関する実態調査(※2)を行った。

※1:ヘルスレント事業:シニアライフの安心と快適な暮らしのサポートを目的に、主に介護保険制度が適用される介護用品・福祉用具のレンタルや販売を行う事業。
※2: ダスキンヘルスレント 「親子で向き合う介護レポート 2023」調査
●調査時期:2023年6月29日(木)〜6月30日(金)
●調査対象:合計2,000人対象
親世代=自身の年齢が60代〜80代で別居の子どもがいる男女1,000人(介護経験あり500人・なし500人)
子世代=自身の年齢が20代〜50代で60代〜80代の別居する親がいる男女1,000人(介護経験あり500人・なし500人)

 本調査は、ダスキン ヘルスレントが「#いま親のいまを知ろう」をコミュニケーションワードに、いつか直面する介護への備えとして、今から準備することの大切さをご紹介するプロジェクトの第二弾。昨年発表された第一弾では、親も子もお互いを気遣うばかりに親の「老い」に向き合えない親子関係が明らかになったが、今回は、お互いを思う気持ちのすれ違いだけでなく、その根底にあるアンコンシャス・バイアスが介護や介護にまつわるコミュニケーションの妨げになっているのでは、という仮説のもとに調査が行われたという。調査結果から浮かび上がった、親と子、また「介護経験者」と「介護経験がない人」では、それぞれが抱いている「介護像」にギャップがあることが浮かび上がった。

 調査結果をふまえて、昭和女子大学総長・坂東眞理子さんが「介護への思い込み」に捉われない親子のマインドリセットについてアドバイスを伺った。

教えてくれた人/坂東眞理子(ばんどう・まりこ)さん

昭和女子大学 総長。富山県生まれ。1969年東京大学卒業、総理府入府。
1995年埼玉県副知事、1998年在ブリスベン総領事、2001年内閣府男女共同参画局長。2004年昭和女子大学・女性文化研究所長、2007年同大学学長、2014年同大学理事長、2016年同大学総長。著書「女性の品格」「日本の女性政策」「70歳のたしなみ」「幸せな人生のつくり方」「女性の覚悟」など著書多数。

介護に対するイメージ

●介護経験者の方が介護をポジティブに捉える傾向

 一般的な「介護」のイメージ上位の10項目は以下の通り(n-2000 複数回答)。

・精神的な負担が大きい 70.8%
・肉体的な負担が大きい 64.3%
・金銭的な負担が大きい 47.0%
・重荷に感じる 46.1%
・つらい・苦しい 43.2%
・責任 37.9%
・親孝行 32.1%
・トラブルが多い 26.6%
・義務 25.3%
・面倒な 22.6%

 介護経験がある人とない人を比較すると、介護経験がある人はない人に比べて、「親孝行」というイメージを抱く人の割合が、「介護経験あり」では40.6%、「介護経験なし」23.5%、と17.1pt 差があり、「恩返し」というイメージも「介護経験あり」は30.1%、「介護経験なし」は14.1%と16.0pt 差があるなど、介護経験がある人の方が、ポジティブなイメージがより高くなっている。

親世代が介護状態になったときの気持ち

●親世代の答えと、親世代の気持ちを想定した子世代の回答にギャップ。親は「できるだけ自立したい」、子は「不安」

 親世代に自分自身が介護状態になったと想定し、そのときの気持ちを聞くと「できるだけ自立したい」が56.3%とが最も多くなってる一方、子世代に自身の親が介護状態になったと想定し気持ちを聞くと、「不安」が57.7%と最も高くなっている。

●親世代、実は望んでいない「家族・親族による介護」。子世代は「家族でなんとかしなきゃ」と思いがち

 親世代にはどのような方法で介護してもらいたいか、子世代にはどのような方法で介護したいかという問いには、親世代も子世代も8 割以上が「外部施設・行政サービスを利用した介護」(親世代84.5%、子世代82.2%)を望んでいる。

「家族・親族による介護」は、子世代は56.7%と半数以上が望むのに対し、親世代は26.0%。

 また、親と子の暮らし方について聞くと、「子どもは親の暮らしをサポートすべきだと思う」と答えた子世代は66.7%と、親世代(45.3%)に比べ21.4pt も多くなっている。

●介護することに対する意識は、男女間で違いがある

「家族が介護をすることは家族愛や親孝行の表れである」という考えについて、「そう思う」と答えたのは、男性59.7%、女性50.7%と、男女間に考え方の ズレが生じている。親世代では、男性が60.4% 、女性が47.4%と、より大きな差がある。

 介護が必要になった場合、「家族に介護してもらえる方がうれしい」という設問には、「そう思う」と回答した男性が57.9%だったのに対し女性は39.3%と18.6ptの差が生じている。こちらも親世代の男性(63.8%)が最も高く、親世代の女性(35.8%)が最も低くなっている。

家族のみでの介護は難しい

●親、子とも意見が一致したのは、「外部サービスに頼らず家族のみで介護するのは、専業でなければ難しい」という意見

「外部サービスに頼らず家族のみで介護をするのは、専業主婦/専業主夫でなければ難しい」という 意見についての問いには、男性も女性も、親世代も子世代も、8割以上が「そう思う」と答えている。

●介護の外部サービス 親も子も男性も女性も9割が「頼るべき」と意見が一致

 外部の介護サービスを積極的に頼るべきかと聞くと、全体の92.9%が「頼るべき」と答えている。 男女とも、親世代も子世代も、介護経験の有無も関わらず、誰もが外部の介護サービスを積極的に利用すべきと考えていることがわかった。

昭和女子大学総長・坂東眞理子さんからの提言

●介護保険前夜、親の介護は「家族がするべきだ」というアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)

 この調査では、親と子の間に意識の違いがあることが浮き彫りになった。結果を踏まえて昭和女子大学総長の坂東眞理子さんは以下のように語る。

「介護が必要になった高齢者を社会全体で支えるのが、現在の「介護保険制度」です。創設されたのは2000年のことで、それ以前は、介護は家族が担うのが当たり前の時代でした。ですから、制度化された後も、高齢者の中には『家族以外の人に世話になるなんて恥ずかしい』という意識が強い方も少なくなかったようです」

●従来の「べき論」から、「新しい介護」へ移行する過渡期に

「それから20年、介護への意識も変わって きましたが、それでも未だにアンコンシャス・バイアスは残存しています。アンコンシャス・バイアスは、時代や社会とともに変化します。気づくことが変化のきっかけになりますが、無意識の偏見に気づくのは難しいもの。しかし、多様性が重視される現代は、個人も社会も介護に関する考え方を新たにする過渡期にあるのではないでしょうか。かつての「こうあるべき」という考えが薄れるとともに、介護保険や外部サービスを活用した成功事例が伝わっていくことで、新しい介護や老後の在り方が確立されていくはずです」

●介護の成功事例やうれしい体験談が、介護の不安を払拭し自分を縛る思い込みから開放してくれる

「介護について、今はまだ『大変』『つらい』というネガティブな情報が先行しています。

 しかし調査結果からもわかる通り、介護を経験した人は『やっと恩返しできた』というポジティブな感情も大きいようです。『施設に親を入れるなんて親不孝』と思い込んでいた方から、『お試しで施設を利用したら、親御さんに笑顔が戻り、親子関係が円満になった』という、うれしい話も聞きます。そのような希望が持てる事例がさらに広まっていくと、ネガティブなアンコンシャス・バイアスから解放されるきっかけになりそうです。

 介護に限らず、うれしくない未来には目を背けたくなるし、不安に思うものです。介護の外部サービスの活用が、親世代に とっても子世代にとってもみじめなことではなく、「お互いに最適な選択」という認識が定着するとよいですね』

●今、できることから始めてみましょう 「喜寿」や「米寿」の節目に外部サービスを贈るのも、その一歩に

「アンコンシャス・バイアスが改善される目安は、私の肌感覚でおよそ10年ぐらいでしょうか。日本では、いろんな情報に接し、多くの人がバイアスを自覚するまでに7〜8年ほど時間がかかりますが、その後2〜3年で一気に変化するケースが多いです。

 意識を切り替えることは難しいものですが、まずはできることから始めましょう。親世代の方は、貯蓄の一部を自分が老後を快適に過ごす費用として使ってみては?お金を残すことも大切ですが、外部サービスなどを利用することで子どもの負担が 減り、自分の自立にもつながります。

 また、子世代の方は、ネガティブな報道や罪悪感のみにとらわれず、新しい家族関係を作る気持ちを持ちましょう。外部サービスを利用しながら、まめに連絡したり、会いに行ったりすることも立派な親孝行です。 例えば、『77歳の喜寿、88歳の米寿に外部サービスをプレゼント』など、親御さんの誕生日にプレゼントとして外部サービスを利用するきっかけを作るのも、よいアイデアかもしれませんね。

 親世代は子どものためを思い「自立したい」、子世代は「育ててくれた親に恩返ししたい」と思っています。相手のことを大切に思うゆえのギャップを改善するためには、まずは会話をすることです。世間話をする中で将来どうしたいのか、自然な流れで話し合えるようになるとよいですね。

※ダスキンの発表したプレスリリース(2023年11月9日)を元に記事を作成

構成/介護ポストセブン

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