「故人にまつわるデータを保管、呼び出して墓参り」「仮想空間にアクセスし、バーチャル霊園で悼む」… 進化する最新【お墓】事情と注意点、その是非
墓参りという儀式そのものをデジタル化したサービスもある。パソコンやスマートフォンからメタバース(仮想空間)にアクセスし、そこに設置されたバーチャル霊園をお参りする「メタバース霊園」だ。
たとえば四十九日や一周忌といった法事のタイミングで、家族や親戚がそれぞれの居場所からメタバース上で集まり、思い出話などをしながら故人を悼むことができる。設定次第では、故人がキャラクターとして登場し墓参者を歓迎するサービスもある。
このように、墓がデジタル化されることで、継承や墓参りの負担は大きく軽減される一方、デジタルならではの注意点も指摘される。
「やはり個人情報管理についての不安はあると思います。他人に閲覧されてしまわないか、データが書き換えられてしまうことはないかという心配な気持ちになるのはごく自然なことです。
また、サービスを提供している会社がなんらかの理由でなくなってしまったら、そのデータはどうなってしまうのか。消えるにしても、別会社に引き継がれるにしても、どんな形になるか確証がありません。その逆で、200年も300年も仮想空間上に故人や自分のデータが残り続けてしまう怖さもあります」(古田さん・以下同)
墓参りはデリケートな行為
そもそも古来、墓は有限なものだった。土葬しかできない時代には、みながやがては土に還るという観点から、墓という概念は極めて希薄なものだという分析もある。
「フランスでは、10年、30年、50年管理と有期限のお墓を選ぶ人が多い。日本でも明治時代から○○家のお墓という形態が大きく普及したけれど、いま樹木葬など自然に還るイメージに回帰している。いざデジタル上で墓じまいをしたいと思ったときにどうすればいいのか、検討すべき点は多々あります」
技術についてだけではなく、儀式としてどのように受け止めればいいか困惑する人も多いのではないかと古田さんは続ける。
「やはり実際のお墓の前に立つのと、スマホ越しにデジタル画面を見るのでは、緊張感の違いがあります。故人を供養する、偲ぶというのは非常にデリケートな行為です。その際に、たとえば故人の顔をデジタル加工で修正できますとか、お焼香や線香をあげると煙がぶわっとエフェクト(画像や音声の加工)で出るというようなオプションがあった場合に、それを是としない人はいるでしょう。技術が前面に出すぎることのデメリットは大いにあると思います」
この墓には故人が眠っている――墓の前に立つほとんどの人がそう考えているからこそ、墓参りは成り立っている。すなわち、その実感がなければ偲ぶ気持ちもどこか形骸化してしまうかもしれない。
便利で簡単といった側面だけでなく、どのような形で故人とつながっていたいか、どのくらいの期間で墓を残していきたいか、ということをよく考え、先祖の墓、自分の墓の行く末を考えたい。
※女性セブン2023年11月16日号
https://josei7.com/
●おひとりさまのお墓、最新事情|海洋散骨、女性専用の合同墓も!主な墓の形式【方法や相場】をレポート