健康

梅毒の感染者数が過去最多、帯状疱疹も急増中!50代以降に注意すべき「感染症」症状と予防法【専門家監修】

 過ごしやすい季節が終わり、厳しい寒さがとうとう顔を出し始めた。気温、湿度が低いとウイルスの活動が活発になり、感染症が流行しやすくなるので注意したい。普段からの感染症対策を心がけるためにも感染経路、病気の特徴や予防法を一挙に紹介する。

教えてくれた人

生田和良さん/医学博士・大阪大学名誉教授。長年ウイルス学の研究に従事し、診断法やワクチン開発にも携わる。主な著書に『たいせつな家族を感染症から守る本』(講談社)など。

大人の感染症が急増中!特徴を学び予防しよう!

 国立感染症研究所によると、今年の梅毒感染者数は1万1260人(10月10日現在)。過去最多だった昨年より早いペースで増えており、新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)同様、第5類感染症(※)に指定されている

 このように、水面下で広がりを見せている感染症は常にある。しかし、むやみに怖がることはないという。

「感染症は忘れた頃に大流行します。だからこそ備えが重要。原因や予防法、年齢に応じてどんな感染症に気をつけないといけないのかなど正しい知識を身につけておけば、冷静に対応できるはずです」

 コロナ禍のときのようにいたずらに恐怖し、差別などを生まないためにも、“知る”ということが大切なのだ。

 50代以上の女性が罹患しやすい感染症や、いま猛威を振るう感染症をピックアップ。

特に帯状疱疹はコロナ禍以降、感染者が増えています。治療が遅れると長引き、後遺症が残る可能性もあるので、症状が出たら早めに受診しましょう」(生田さん)。

※季節性インフルエンザなどと同様の一般的な感染症の類型。外出自粛などの規制はない。

→コロナだけじゃない!覚えておくべき「感染症」のキホン「かかる人・かからない人の違いは?」ウイルス研究に従事する医師が解説

50代以上の女性が気をつけるべき感染症11選

※病名/感染経路/特徴・症状/予防法

【1】帯状疱疹

<感染経路>

水痘(水ぼうそう)・帯状疱疹ウイルスに感染すると、治った後も神経節に潜在。加齢やストレスなどにより免疫力が弱ったのをきっかけにウイルスが再活性し発症。

<特徴・症状>

頭・顔・体の片側の神経に沿った部分に、痛みを伴う赤い発疹や水ぶくれが現れる。重症化すると痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」になることも。

<予防法>

50才以上を対象としたワクチンがあるので、接種がおすすめ。睡眠や休息を充分にとり、ストレスや疲労をため込まないことも大切。

【2】レジオネラ症

<感染経路>

給湯設備や加湿器、循環式浴槽などのぬめりに生息するレジオネラ属菌(細菌)に汚染された湯気などを吸い込むことで感染(エアロゾル感染)。

<特徴・症状>

軽症の場合、発熱しても自然治癒するポンティアック熱に。重症化すると高熱や呼吸困難などが見られるレジオネラ肺炎に。感染者の9割以上が50代以上

<予防法>

温泉施設などで感染しやすいが、家庭でも浴槽水や加湿器などで菌が発生した事例があるので、こまめに換水や洗浄をして清潔を保つようにする

【3】梅毒

<感染経路>

梅毒トレポネーマというスピロヘータ(らせん状の細菌)により引き起こされる性感染症。セックスなどの性的接触で、口や性器などの粘膜から感染。

<特徴・症状>

3~6週間ほどの潜伏期間を経て、感染場所に赤い発疹が発症。3か月以上たつと手や足、体にも広がる。無症状のまま気づかぬうちに進行することも

<予防法>

梅毒に自然完治はないので、必ず抗生剤による治療を受けること。早期なら注射1回で済む新たな治療薬も。無症状の場合もあるので、気になる人は検査を。

【4】性器ヘルペスウイルス感染症

<感染経路>

多くの場合、性行為で感染するが、唾液や精液にウイルスが含まれていることも。その場合、キスや性器に触れた手やタオルを介して感染する可能性も。

<特徴・症状>

性器やその周り、お尻に痛みやかゆみが生じたり、水ぶくれができる。人によっては、頭痛や38℃を超える発熱を伴うこともある。

<予防法>

抗ウイルス薬による治療で症状を抑えられるが、ウイルスが完全に消え去ることはない。免疫力が低下したりすると再発の可能性があるので注意したい。

【5】性器クラミジア感染症

<感染経路>

日本で最も多い性感染症。性器やのど、肛門などの粘膜や粘液、体液などを通じてクラミジア・トラコマチスという細菌がうつり、増殖することで発症。

<特徴・症状>

おりものの量が増える、下腹部が張る、不正出血、排尿時に軽い痛み、外陰部のかゆみなどの症状が出ることがあるが、無症状で気づかない人が多い。

<予防法>

コンドームを使用する。放置すると症状の悪化や、粘膜の炎症によりHIVなどほかの性感染症への感染リスクも高まるので、早めに検査を受ける必要がある。

【6】淋病

<感染経路>

淋菌という細菌が原因の性感染症。感染している人との性行為により、粘膜と粘膜の接触や分泌物との接触により感染する。

<特徴・症状>

1回の性行為での感染率はおよそ20~50%といわれている。女性は症状が出にくいが、感染すると緑黄色のおりものや、尿道から膿が出たりする。

<予防法>

性行為だけでなく性交類似行為も含む性的接触時にはコンドームを必ず使用すること。複数の性的なパートナーがいる場合には定期的な検査が必要

【7】尖圭(せんけん)コンジローマ

<感染経路>

性行為などにより、皮膚や粘膜の小さな傷から、ヒトパピローマウイルスが侵入して感染。粘膜だけではなく皮膚に傷があればそこから感染することも。

<特徴・症状>

性器や肛門周辺、口やのどなどにいぼができる。痛みやかゆみはないが、放っておくと大きくなり、数も増えて不妊の原因に

<予防法>

コンドームを使用するか、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)を接種することにより発症を予防できる。性感染症の中で唯一ワクチンがある

【8】重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

<感染経路>

ウイルスを保有するマダニにかまれることにより感染。近年は、SFTSウイルスに感染した犬や猫を介して感染するなどの事例もあがっている。

<特徴・症状>

原因不明の発熱、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛など。マダニにかまれた際、自力で取ろうとしても取り切れないケースが多いので、必ず皮膚科で受診を。

<予防法>

森林や草地など、マダニの生息地に入る場合は、肌の露出を控え、長袖、長ズボンを着用。ズボンの裾は隙間ができないよう靴下や長靴の中に入れる。

【9】ノロウイルス感染症

<感染経路>

ノロウイルスが付着した手指や食品を食べたりするなどして感染。さらに感染者の吐瀉物や便から舞い上がったウイルスを吸い込むことでも感染する。

<特徴・症状>

例年11~3月に感染者が増える。主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱など。持病のある人や高齢者は、重症化しやすいので要注意。

<予防法>

家庭用塩素系漂白剤を水で薄めた消毒液でドアノブ、トイレの壁、床などを拭く。空気中にウイルスが舞い上がらないよう、トイレの蓋は閉めて流す

【10】RSウイルス感染症

<感染経路>

主に飛沫感染と接触感染。日本では子供の感染者が多い印象があるが、アメリカでは毎年6000~1万人の高齢者がRSウイルスで死亡している

<特徴・症状>

発熱、鼻汁、咳など軽い風邪のような症状が出る。軽症で済むことが多いが、高齢者の場合は、肺炎の原因にもなり、重症化しやすいので甘く見ないこと。

<予防法>

手洗い・うがいを徹底する。今年9月、60才以上を対象とした日本初のRSウイルスワクチンの製造販売が承認されたため、今後はワクチンでの予防も期待できる。

【11】アデノウイルス感染症

<感染経路>

感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染や、病原体が付いた手で口や鼻、目などの粘膜に触れることで感染(接触感染)する。

<特徴・症状>

一般的な風邪の原因となるウイルスのひとつ。全部で51の型があり、型により咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎(はやり目)などが起こる。

<予防法>

流水と石けんを使った手洗いと消毒が有効。熱に弱いので、感染者が使ったタオルや衣類は熱水で洗濯すれば消毒できる(85℃で1分間以上)。

取材・文/鳥居優美 写真/写真AC

※女性セブン2023年11月2日号
https://josei7.com/

●ウイルスから家族を守る健康掃除術|5つのNG!病院清掃のプロが伝授

●50才以降は要注意「帯状疱疹」は早期治療が肝心!症状や予防法を医師が解説

●コロナだけじゃない!覚えておくべき「感染症」のキホン「かかる人・かからない人の違いは?」ウイルス研究に従事する医師が解説

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