健康

50才以降は要注意「帯状疱疹」は早期治療が肝心!症状や予防法を医師が解説

 ここ数年、帯状疱疹の患者数が増え続けている。特に“50才以上”で発症率が上がり、80才までに3人に1人が発症する。痛みが出てから“72時間以内”に投薬治療をしないと後遺症が残りやすい。ちょっと疲れると誰もがなりうる病、帯状疱疹について専門医に解説いただいた。

【目次】

帯状疱疹になる原因やしくみを医師が解説

 帯状疱疹の発症の要因には、ストレスや免疫力の低下がある。そのせいか、新型コロナウイルス感染症の流行とともに患者数が増えたという。

 帯状疱疹の専門医・漆畑修さんが、原因から治療法、予防法までを解説。ちょっと疲れると誰もがなりうる病気。治療は時間との勝負なので正しい知識を持っておこう。

■帯状疱疹になるしくみ

1.水ぼうそうのウイルスに感染…水ぼうそうウイルスは非常に感染力が強い。ほとんどの人が子供の頃、ほかの子のせきやくしゃみなどを通じて一度は感染し、水ぼうそうウイルスを体内に入れている。

2.水ぼうそうを発症…感染後、免疫力が弱いと体の中でウイルスが増殖し、2週間ほどで発熱やのどの痛み、だるさなどが現れて水ぼうそうを発症する。全身に赤い発疹が出る。

3.治ってもウイルスは神経節に残る…子供の水ぼうそうは安静にしていれば1週間程度で治る。ただし、治ってもウイルスが死滅したわけではない。神経節に残って潜み続けている。

4.免疫力が働いて、症状は出ない…人間の体は、潜伏ウイルスが暴れ出さないよう、絶えず監視する免疫システムが働いている。一度水ぼうそうにかかれば、免疫力が働いている限り、症状は出ない。

5.免疫力が低下すると、ウイルスが再び活性化…疲労やストレス、加齢などで免疫力が低下したとき、神経節に潜んでいた水ぼうそうウイルスが再び活性化。ウイルスは数を急増させながら神経を傷つける。→帯状疱疹を発症!

★子供の頃に水痘ワクチンを接種していたら発症しにくい

水痘ワクチンは、1986年に1才以上の任意接種が認可された。子供の頃にこれを接種した場合、95%以上の確率で帯状疱疹は発症しない。

帯状疱疹が発症するしくみとチェックリスト

 帯状疱疹は50才以上の誰もがかかる可能性の高い病気。そもそもなぜ、発症するのだろうか。

「帯状疱疹は子供の頃に水ぼうそうにかかったことがある人に起こる病気です。水ぼうそうウイルスは感染力がとても強く、ほとんどの人が生涯に一度は感染しています。水ぼうそうが治ってもウイルスは体内に潜み続け、何十年も経って、免疫力が落ちたときに現れるのが帯状疱疹なのです」(漆畑さん・以下同)

 大人になってからも、何度か子供や孫などから水ぼうそうウイルスをうつされると、免疫力が上がっていき、帯状疱疹にかかりにくくなる。

 ところがいま日本では、水ぼうそうを発症する子供が減っている。というのも、2014年から幼児に対する水痘(すいとう)ワクチンの定期接種が義務化されたからだ。これにより水ぼうそうの発症者数は減少したものの、“ウイルスをうつしてくれる子供”がいなくなったせいで、大人が水痘・帯状疱疹ウイルスを再び体内に取り込むチャンスが減少。免疫力を再強化できなくなった。その結果、帯状疱疹患者が増えてしまったのだという。皮肉なことだ。

帯状疱疹は何才でも発症しますが、50才以降、発症率が急に上がります。これは高齢になるにつれ免疫力が低下するためで、70~79才で発症率はピークを迎えます」

■こんな症状があったら帯状疱疹かも!

帯状疱疹の症状チェックリスト

□ ピリピリ、チクチクとした痛みがある

□ 重苦しい、ズーンと響くような痛みがある

□ 痛いというよりかゆい、皮膚にモゾモゾ、ビリビリするような違和感がある

□ 体の左右どちらか片側だけに赤い発疹が出る

□ 皮膚の赤み、ブツブツができる前に痛みがあった

※痛みの感じ方には個人差があります。特に50代以上のかたは痛みや違和感がある場合はすぐに受診を。

帯状疱疹の症状「痛み→発疹→水疱→かさぶたを経て完治へ」

 帯状疱疹は皮膚に水疱ができる病気だが、主な自覚症状は痛み、いや“激痛”だ。

「いきなり発疹が現れるわけではありません。前駆痛といって発疹が出る前に、体の左右どちらかにピリピリするような痛みが出ます。これは、皮膚の下で増殖したウイルスによって神経の破壊が始まっているため。この前駆痛から数日~7日くらいで、痛みのあるところに発疹が現れます」

 この段階で、帯状疱疹だと判断するのはなかなか難しい。

「発疹が出て3~4日目ぐらいから、水ぶくれが生じて水疱に変わります。そして水疱に膿(うみ)が含まれるようになり、膿疱(のうほう)に変化。6~8日目ぐらいから膿疱が破れて皮膚がただれたり潰瘍になったりします。その直後から痛みがピークに達することが多いですね」

 2週間目ぐらいになると、乾いてかさぶたができ、痛みも和らぐという。

「3週間目ぐらいにはかさぶたがはがれ、皮膚がきれいになります。痛みも消えることが多く、早期に治療を始めれば、約1か月で快方に向かうのが一般的です。ただし、大きさの違う水疱がくっついていたり、赤紫色の発疹が出ていたり、発疹が広範囲の場合や高齢者は、皮膚の症状が消えても後遺症として、帯状疱疹後神経痛になる可能性が高くなります」

帯状疱疹の治療方法「早期治療なら重症化しにくい」

 では、どう治療するのか。

「痛みの症状が出た直後から、抗ウイルス薬と、感染症の炎症や痛みを緩和する消炎鎮痛剤を服用します。痛みがなくなってもウイルスは潜んでいるので、途中で投薬をやめないことが大切です。重症の場合はステロイド剤や麻薬のひとつである弱オピオイド鎮痛薬を処方することもあります」

 神経の修復を行うビタミンB12の注射や内服薬を用いることもあるという。

「とにかく早期治療が肝心です。抗ウイルス薬は、痛みの症状が出てから72時間以内に服用すれば、重症化しにくくなります

 とはいえ、何の病気だろう、と思っているうちに72時間などあっという間に過ぎてしまう。特徴的な水疱が現れるまで時間がかかるため、初期に診察する科が皮膚科でなければ、医師でも見落としやすいようだ。

50才を過ぎたらワクチンが有効

 後遺症として最も起こりやすいのは、帯状疱疹後神経痛だ。50才以上で帯状疱疹にかかった人の約2割がこの神経痛に悩まされるという。炎症がおさまって皮膚症状は治っても、神経そのものにダメージが残り、それが痛みのもとになる。なかには神経が破壊され、感覚がなくなる人もいるという。

「炎症は治りやすいですが、損傷した神経は簡単に治りません。帯状疱疹後神経痛が長引くのはそのためです」
帯状疱疹に限らず、神経障害性疼痛は治療に時間がかかることが多い。痛みが続く期間は人によって違う。根気強く治療を続ければ、症状は徐々に軽減されるという。予防する有効な手段はワクチンの接種だ。現在は表の2種類がある。

「帯状疱疹発症の予防効果はシングリックスが高いですが2回の接種が必要で、費用も高い。一方のビケンは1回の接種で費用も安め。ただし、免疫不全を招く病気のある人には接種できません」

 どちらのワクチンがよいかは、効果の高さや健康状態、経済的なことなど、総合的に考え、主治医と相談して選ぶのがいい。

■帯状疱疹予防ワクチンには2種類ある!

《水痘ワクチン / 帯状疱疹ワクチン》

種類:生ワクチン 不活化ワクチン
発売名:ビケン(阪大微研)/ シングリックス(GSK)
接種回数:1回(皮下注射)/ 2回(筋肉注射、2回目接種は2~6か月後)
費用(自由診療):1万円程度 / 2回で5万円程度
予防効果持続期間 :5年前後 / 10年前後
接種可能年齡:50才以上 / 50才以上
接種不可患者:免疫異常患者 免疫抑制剤使用患者 悪性腫瘍患者妊婦 / 特に制限なし
主な副反応:注射部位の発赤 / 注射部位の疼痛筋肉痛・疲労・頭痛

※自治体の一部助成あり。詳細は住まいの自治体で確認を。

帯状疱疹Q&A「うつる?」「後遺症は?」医師が回答

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